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災害時の要支援者対策と住民自治

≪おごおりトーク13≫

さて、住民自治シリーズの3回目。今回は住民自治の視点から「災害時の要支援者対策」について考えてみます。

小郡市では地域の防災力の強化と自治会における防災体制の確立を目指して、自主防災組織を中心にした共助の体制づくりを推進しています。
平成24年度から自治会での自主防災組織の設置に取り組み、現在までに61区の自治会(1区を除く全て)に自主防災組織が設置され、それぞれ地域の災害特性に合った自主防災活動が開始されています。
平常時や災害時の自主防災組織の活動内容は多岐にわたりますが、その中でも最も重要な役割として位置付けられているのが、避難行動要支援者(災害時の避難にあたり自力で行動することが困難なため何らかの支援を要する人)に対する安否確認や避難支援等です。

自治会での自主防災組織の活動において、実際に災害が発生した際は自主防災本部の設置・運営や地域の被災状況の把握、住民への情報伝達、行政との連絡・調整などに忙殺されることになり、それぞれに多くの人手が必要になることから、要支援者の安否確認や避難支援を自治会役員や民生委員だけで行うことは困難になります。
しかし、自治会役員や民生委員以外の住民からあらかじめ災害時の避難支援に限定した協力者を確保するとしても、要支援者との間で平常時の関係性が全くなく、要支援者の状況も把握していない第三者が災害時の緊迫した状況の中で避難支援を行うことは現実的ではありません。

そこで考えなければならないのは、自治会のふれあいネットワーク活動を活用して平常時の見守り活動と災害時の安否確認や避難支援を一体化して取り組むことです。
自治会のふれあいネットワーク活動における平常時の見守り活動と連携して取り組むことができれば、自治会の隣組長・班長による広報配布体制を活用した迅速な安否確認が可能になるだけでなく、要支援者に対する日頃から顔の見える関係性によりスムーズな避難支援につながることが期待できます。

これは、これまで述べてきたことと同様の考え方になりますが、小郡市における災害時の要支援者対策は、住民自治=「住民の積極的な参加と協働による自治」の観点から取り組まなければならない課題であり、その際に重要なのは、すでに小郡市に地域資源として存在している「地域住民の相互扶助による支え合いのシステム」を最大限に活用していくことで、その一つがふれあいネットワーク活動であるということになります。

では、平常時のふれあいネットワーク活動における地域の見守り活動と災害時の要支援者対策は具体的にどのようなスキームを目指せばよいのでしょうか?
まずは、自治会のふれあいネットワーク活動において「見守り支援台帳」を作成しますが、平常時の見守り活動の対象者としてだけでなく、災害時には安否確認を行う対象者として台帳に登録することできれば、平常時の見守り活動の延長線上で災害時の安否確認につなげることができます。
そのためには、「見守り支援台帳」はふれあいネットワーク推進委員会(平常時)だけでなく自主防災組織(災害時)においても自治会内の必要な範囲において共有されなければなりません。(※個人情報の共有は個人情報保護法の一定の手続きが必要)
平常時の自治会の広報配布と見守り活動の体制を災害時の安否確認に活用することによって、迅速な負傷者の発見や人的被害の把握を行うことができ、民生委員が全ての要支援者を訪問して安否を確認するという労力(負担)や時間的ロスを軽減することができます。
さらに、自主防災組織において要支援者の避難支援の方法を事前に検討しておけば、要支援者の速やかな避難所への避難と安全確保につなげることができます。

要支援者対策においては、「個別支援プラン」による避難支援がクローズアップされますが、災害発生時に緊急性が高いのはむしろ安否確認のほうです。1995年の阪神淡路大震災の死亡者で最も多かったのは窒息・圧迫死(死亡者の約77%)で木造家屋の倒壊により家屋や家具の下敷きになって死亡に至ったケースが数多く報告されています。
地震発生時に一人暮らしの高齢者が負傷している状況を一刻も早く発見するためには、迅速な安否確認の体制づくりが最も優先的な課題だといえます。
また、災害時の要支援者対策を考える際に、災害時だけに特化した体制づくりを行っても決して災害時には機能しないと断言できます。それは全ての防災活動に共通して言えることですが、災害時の緊迫した状況の中で適切な判断と迅速な行動を行うためには平常時の基本的な訓練が必須です。しかし、自主防災組織の構成員である自治会役員や地域住民はボランティアであって防災のスペシャリストではありません。
だからこそ、平常時の自治会活動の延長線上で災害時であっても当たり前に要支援者対策が実践できる仕組みを構築する必要があるのです。平常時の見守り活動が日常的な訓練として繰り返し行われることによって、災害時の要支援者に対する安否確認や避難支援の可能性が高まります。

これが基本的なふれあいネットワーク活動と災害時要支援者対策との連携のスキーム・考え方になると思いますが、小郡市内には62の自治会があり、それぞれの地域の状況によりふれあいネットワーク活動のあり方や見守り活動の状況はさまざまです。
今後、各自治会で災害時の要支援者対策を推進していくためには、それぞれの自治会の実情や特性に合った仕組みづくりを検討することが必要だと思います。
(2021.4.7)

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