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「手紙屋」 喜多川泰著

就職活動中に「手紙屋」という存在を知った主人公と、その手紙屋との手紙のやり取りで物語が綴られる。世の中がすっかりデジタル化し、手紙のやり取りはほとんど機会がなくなった現代において、手紙という古典的でありながら斬新な方法を視点として取り入れて描かれた物語。

個人的に印象的な手紙屋からの言葉は「出会う相手に称号を与える」というもの。この手紙屋、報酬は相手次第。相手がこの手紙屋に価値を見出して、お礼がしたい、と思ったら、そのお礼の品をいただくというスタイル。そんなことで商売が成り立つのか、主人公である西山諒太はいぶかる。しかしそんな疑念を手紙屋は、相手になってほしい姿としての称号をつけることによって、相手の持っている性格の中から、そのなってほしい姿になる部分が引き出される、という。「このように称号を与えてあげることで、その性質を引き出すことができるのです」と諒太に訴える。だから手紙屋のお客さんはみんな報酬をくれるのだという。

手紙屋とのやり取りで進むこの物語は全体的には、話の流れとしては悪くない。最終的には手紙屋の正体が明かされることになるのだが、その正体については少し疑問符。その可能性はあるなと感じながら物語は読み進めていたけれど、ちょっと無理があるのじゃないかな、というのが正直なところ。それ以外の点はいい作品だと思った。

主人公の境遇から、就職活動に関する話題が手紙の主なやり取りであり、その結果として主人公は就職先を決める。就職活動をしている方やこれから活動が始まるという学生にとって参考になるかもしれない。

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