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「店長がバカすぎて」 早見和真著

出版業界の厳しいビジネス環境を表現しつつ、書店を舞台として、精一杯生きる人たちの様子がコミカルかつ愛情たっぷりに描き出されている素晴らしい作品。かつ、推理小説のような要素を持ち合わせて最後までその展開に引き込まれた。

小説を読んでいて、声を出して笑うまで面白かった作品はそうそう多くはないだろう。通勤途中で読むこともあったため、周りから見ると怪しく写ったかもしれない。。「〜がバカすぎて」というタイトルで各章が成り立っていて、それぞれの章で繰り広げられる、笑あり、怒りあり、涙あり、そんな物語が繰り広げられ、最後は予想もしなかったクライマックスで、すっかり物語にのめり込んだ。

エンタメ要素としての本作品を面白くしている大きな要素としては、やはり店長の存在であろう。ここまで個性的な店長を表現した作者に脱帽しかない。更に、ただ面白いだけでなく、謎めいた要素も随所に散らばらせていい伏線が張り巡らされている。謎解き要素もある本作品はかなり奥深い。

そんな笑い涙のエンターテイメントたっぷりな本作品だが、出版業界の厳しい状況も表現できていて興味深い。文芸作品をこよなく愛する主人公の谷原京子は新卒から武蔵野書店に契約社員として働いているが、かなりの薄給だ。でも、文芸に対する熱い想いは誰にも負けない。そんな熱い想いを持ちながら経済的に独立しきれないジレンマに、なんとも現代日本で生きる若者たちの苦しい状況も描き出されていると感じた。

「新!店長がバカすぎて」という続編も出たようなので、手に取ってみたい。

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