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ハンサムじゃないとダメですか? ──かたすみの女性史

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歴史ドラマの主人公が女性なのは、もちろんうれしいけれど、 エンターティメントの悲しさ、ドラマの女主人公は、みな有能で勇ましく、美人で自信満々の“勝者”です。 来年のNHK大河ドラ… もっと読む
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#日本文学

かたすみの女性史【第2話】壺井栄をナメるなよ !(その6)

かたすみの女性史【第2話】壺井栄をナメるなよ !(その6)

壺井栄をナメるなよ !(その6) 栗林佐知
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■ 主婦を大事にせよ! というフェミニズム

 当時の女性読者からも指摘があるように、「ミネ」=栄の結婚観は、やはり、今日の私たちの目からも、いかがなものかと思われる。

 小説「妻の座」は、まごうかたなきフェミニズムの叫びだが、壺井栄じしんは、「家族制度は女を不幸にする」といった思想を持っているのではないのだ。

 娘時代、郵

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かたすみの女性史【第2話】壺井栄をナメるなよ !(その5)

かたすみの女性史【第2話】壺井栄をナメるなよ !(その5)

壺井栄をナメるなよ !(その5) 栗林佐知
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■「妻の座」への評価

 それにしても、このモデルになった出来事は、いろんな点で「変ちくりん」である。

 「妻の座」については、のちに(後述)、さまざまな論評が登場したが、その多くは、モデルとなった人々の行動への批判のようだ。

 そして、当時の男性評論家でさえ(いや、1970年代以降の男性より、1950年代の男性のほうが進歩

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かたすみの女性史【第2話】壺井栄をナメるなよ !(その4)

かたすみの女性史【第2話】壺井栄をナメるなよ !(その4)

壺井栄をナメるなよ !(その4) 栗林佐知
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■「妻の座」のあらすじ
 
 「妻の座」は、そんな栄の戦後の停滞期の中で書かれた、特別な作品だ。
 まず、内容、あらすじを追ってみよう。

 ……4人の子どもをかかえ、愛妻を亡くして困っていた「野村」(モデル:徳永直)は、「裁縫ができて優しい人」を紹介してほしいと、同じく進歩的な作家仲間である「ミネ」(モデル:壺井栄)に頼む。

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