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【心を揺さぶる名言3】それが愛よ、違うかい?(映画「男はつらいよ16 葛飾立志篇」より)

本当は「男はつらいよ」を一作品ずつ、好きな部分を紹介したいのだけど、それはなかなか大変で、さらに一作品全てを書いても、なじみのない人には伝わりにくいかもしれないので、車寅次郎の大好きなセリフを通じて、それぞれの作品を好き勝手に語っていきたい。

「いいかい? あーいい女だなあと思う。その次には話してみたいと思う。その人のそばにいるだけで、何かこう気持ちがやわらかくなって、あーこの人を幸せにしてあげたいなーと思う。この人の幸せのためなら俺はどうなってもいい、死んだっていい、とそんなふうに思うようになる。それが愛よ、違うかい?」

このセリフが生まれた第16作「葛飾立志編」は、1975年の年末に封切りされた作品。
マドンナは大学で考古学の助手をしている礼子(樫山文枝)。とらやに下宿しており、寅は礼子から家庭教師をしてもらうことになるのだが、いつものごとく、恋心を抱いていく。
あるとき、礼子の大学で教授をしている田所(小林桂樹)がとらやを訪れる。考古学の発掘現場から来たような格好だったため、寅は物乞いかと勘違いしてしまう。そこに礼子が戻ってきて、ようやく田所が大学教授だと認識し、みんなでとらやの座敷へ。
そこで、問題のシーンへとつながる。

テキ屋をしている寅が口上を披露すると、田所が「見上げたもんだよ 屋根屋のふんどしってなもんだろ」と返す。寅が「知ってるねえ」と上機嫌。

大学教授の田所が独り者であることを、寅が「しかしよお、こんな物知りの先生がいい年して嫁さんもいねえんだろうなあ」とぽつり。
礼子に「先生は独身主義なのよ」と言われ、田所は否定する。
田所はドギマギしながら、こう弁解する。
「つまり、なんですよ。愛の問題。男と女の愛情の問題は、実に難しくて、まだ研究し尽くしておらんのですよ」

これに対し、寅は「研究しちゃうのかい?もっと簡単なことだろう」とあっさり。

田所が「簡単?じゃあ、君、説明してみろ」と寅に発言を促す。

ここで、冒頭の
「いいかい? あーいい女だなあと思う。その次には話してみたいと思う。その人のそばにいるだけで、何かこう気持ちがやわらかくなって、あーこの人を幸せにしてあげたいなーと思う。この人の幸せのためなら俺はどうなってもいい、死んだっていい、とそんなふうに思うようになる。それが愛よ、違うかい?」
この名言。

田所は完全に感じ入り「なるほどねえ」と言った後、「君は僕の師だよ」と大声を張り上げ、その後、涙ぐむ。

田所がなぜ、涙ぐんだのか、これは映画を見てもらいたい。


それは置いておいて、寅のこの愛への見解。

「これが愛よ、違うかい?」
って、恋愛に失敗ばかりしている寅が言っているのだけど、この本質は寅自身が体現していることばかりだ。
かっこいいねえ。ただ、この言葉を聞いて、ジーンとするのはどうも男の側だけかも。日々の現実的な生活を担わされている女性はこの名言を聞いても「浮世離れした男のざれ事」ぐらいに笑い飛ばすのかしら。(ジェンダーの時代に、男女で切り分けるのもどうかとは思いますが・・・)

この名言は、男はつらいよ全作に敷き詰められたテーマそのものとも言える。これを延々50作続けても、みんながとりこになるのだから、やはり「愛」とはとてつもなく大きなテーマなのだろうね。

16作だけ見ても、十分に楽しめるはず。オススメしたい。

2022年8月7日 トラジロウ

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