虎丸娯丸

エッセイ時々小説|優しい世界で生きていたい。 ブログ:https://toragoma.com/
固定されたノート

幸せを一緒に

私は猫と一緒に暮らしている。一緒に暮らし始めて、15年が経とうとしている。

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 肌寒い雨の日のことだった。仕事から帰ってきた父を玄関まで迎えに行くと、そこには「成猫」と言うには少し小さい一匹の猫がいた。白と黒に少しだけ薄茶色の毛が混じっていて、黄色いくりっとした目をしている。痩せ細っているが、野良猫にしては毛並みは綺麗で、大人しく父の後をついて回っている。

 父は「猫は薄情だから嫌い

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笑わせるより笑いたい

おもしろいことを言って人を笑わせる能力が、私にはまるでない。誰かが放った一言が、爆笑の渦を巻き起こしているのを目の当たりにすると、まるで全世界が認めるほどの偉業を成し遂げた人でも見るかのような尊敬の眼差しを向けずにはいられない。

 それと同時に、「自分はなんてつまらない人間なのだろう」と、自分を責めてしまう。ユーモアの一つでも言うことができればいいのだが、真面目な返ししかできずに、場の雰囲気を静

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心が温かくなりました(*^^*)ありがとうございます!
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何もかも面倒くさすぎる

無性に眠い夜、できることなら何もせずに眠りたい。瞼が思うように上がらず、鉛でも引きずっているのではないかと錯覚してしまうくらい体は重い。疲れとだるさが絶え間なく押し寄せてきて、一刻も早くベッドに潜りたくなる。

 だけど、そんな意思とは裏腹に、寝るまでにやらなければならないことは山ほど残っている。その中でも、一番の課題はお風呂だ。何かと工程が多い。服を脱がなければ入ることができないし、化粧を落とさ

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女友達が服を脱ぎだすと逃げたくなる

「ねえ、服脱いでいい?」

 この人は、一体何を言っているのだろうか。意味がわからなかった。言っておくが、これから情事が行われるわけではない。彼女とは、別に付き合っているわけでもなければ、お互い恋愛対象として意識しているような関係でもない。もちろん、セフレでもない。

 女二人旅の最中、ホテルの部屋でくつろいでいるときに、女友達がこの一言を放った。旅先で開放的になり、脱ぎたがるタイプの人間がいる。

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好きなものを見つめる

私は、女性が好きだ。この「好き」というのは、恋愛対象として見ているということなのだが、もっとわかりやすく言えば、レズビアンだ。「レズビアン」という言葉に少し抵抗があるので、あえて回りくどい言い方をしてみる。

 「レズビアン」と言うと、なんだか妖艶な響きがするように感じる。少し性的な感じが見え隠れしているようで、その言葉を使うのにためらってしまう。「女性が好き」と言ったほうが、マイルドな感じがして

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真顔の理由

頭が押しつぶされる。いっその一思いに殺してくれ――。

 朝から激しい頭痛に見舞われている。頭の一部が強く締め上げられているような、そんな感覚がする。本当に、誰かが私の頭にいたずらでもしているのではないかと思い、何度も自分の頭をさすってみる。だけど、そこには自分の髪以外の物は一切存在しない。

 「痛みに表情を歪める」なんて言葉があるが、私は真顔だ。笑いもしなければ、歪めもしない。ひたすら真顔で過

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