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Netflix映画 シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

 そういえば、あの映画、Netflixにないかな……。と探したけどない。じゃああの映画は……。見たいと思っていた映画に限ってない。じゃあ、今日は何を見よう……。『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』……ちょっと聞いたことあるな。見てみようか。
 そんなノリで見始めて、思わぬ秀作を発見してしまった。
 現代のニュージーランドで、ヴァンパイアがどんな暮らしをしているのか? という物語を、ウソドキュメンタリーで描いていく、という作品。もちろん、大予算を使った映画でもないので、あちこち粗い。チープな特撮がシュールだ。でも変な話だけど、今まで見たヴァンパイア映画の中で、一番リアリティも感じた。
 リアリティを感じたのは、ヴァンパイアに変な理想を託してないから。現代という時代にヴァンパイアがどんな暮らしをしているのか、わりときちんとシミュレーションしている。
 ヴァンパイアたちはみんな年寄りで、一番の古株は800歳。すると、当然ながら、現代の文化と大きなギャップが生まれる。そうしたギャップもきちんと描いている。
 ドキュメンタリーだから、「撮っている人がいる」という想定の手ぶれカメラ。記録映画風に映像が流れていくし、それらしいインタビュー風映像が間に差し挟まれたり。そこに時々挟まる特撮……ヴァンパイアが空を飛んだりするわけだが、この瞬間がシュールで笑える。ヴァンパイアが能力を使う場面、普通の映画ならもっと神秘的に描いたりするのだけど、その状況そのものを含めて笑いにしてしまっている。技術がないから、というのがそもそもにあるのだと思うのだけど、特撮を笑える場面にしてしまったところが面白いし、判断としても正しい。
 冒頭20分ほどは、「現代におけるヴァンパイア」の設定説明的な場面が流れ、これは物語のない作品だろうか……と思ったらきちんと物語がある。新しく若者ヴァンパイアが仲間に加わり、騒動が、変化が起きようとする。4人の「シェアハウス・ヴァンパイア」の関係が崩れ、新たな局面へ。かつてのマンネリから、新しいマンネリへと移ろうとする過程が描かれていく。
 この映画Netflixでは「ホラー」のカテゴリー。一見すると、どう見てもコメディなのだが。しかし映像を見ていると、頻繁に流血が起きるし、人が何人も死ぬし、凄惨な場面は多い。ニックがヴァンパイアにされるシーン、ヴァンパイア達に追いかけ回されながら、館の中を逃げ惑い、背景にはなんともいえない間抜けな音楽が流れている。コメディタッチだが、じわじわと怖さが底の方から滲み出てくる。コメディからホラーへのバランスがなんとも絶妙。どの惨劇シーンも、コメディチックに見えて、その裏面にホラーが見えてくる。惨劇とその場に起きる空気にクローズアップしすぎてないんだ。この距離感が良い。
 この映画で一番の感心はヴァンパイアに新しい視点を与えたこと。今の時代に対して、古くさいモンスターであるヴァンパイアをきちんとアップデートさせている。ヴァンパイアの暮らしをドキュメンタリー風に撮る……とすぐに思い付きそうなのに、「その手があったか!」とちょっと悔しくもなる。見ている間に、「そういえばヴァンパイアものは描いてなかったぞ」と思わせてくれるものもあった。
 まあ、あと、こういう題材をこういうふうに撮る……ということで、ピーター・ジャクソンを生んだニュージーランド映画らしいかな。とか思ったり。(ニュージーランド監督がみんなあんなホラーを作っていたら怖いけど……)

2/19

こちらの記事は私のブログからの転載です。元記事はこちら→http://blog.livedoor.jp/toratugumitwitter/archives/51617094.html

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