マガジンのカバー画像

ニュージーランドからの手紙

5
20歳のとき、ニュージーランドで過ごした1年のうちに書いた文章の寄せ集め。
運営しているクリエイター

記事一覧

ニュージーランドからの手紙 第5回

第5回 雨の街角に揺れる煙

 容赦なく地表に降りつける雨を恨めども何かが変わるということはありません。2016年の初め、僕はタウポというリゾート地にいて、キャンプ場でテントを張って一人で寝ていました。やがて降り出した雨は安物のテントを侵食し内部に水たまりをつくるようになっていました。おい、まったくついてないな。誰にも聞かれずため息をつきました。
 

 ニュージーランドでの生活も、いつの間にかも

もっとみる

ニュージーランドからの手紙 第4回

第4回 夏の訪れ、旅は楽し

 10月の下旬に「イギリス女王にふさわしい街」クイーンズタウンを離れ、僕は根無し草の旅人になりました。世界広しと言えどもクイーンズタウンほど美しく人を魅了する街はそうないでしょう。この街の魅力を説明しようと試みるとき、毎回僕は潔く言葉を放棄します。それはいかなる言語でも伝えることのできない種類の感動だからです。ただ「すごく綺麗なところだよ」と、力を込めて言います。それ

もっとみる

ニュージーランドからの手紙 第3回

第3回風に吹かれて

 前回の記事からもう3カ月も経ちました。仕事探しの結果、7月に無事ここクイーンズタウンのお土産屋で職を得ることができました。日本人のお客には日本語で、外国のお客には当然英語を使って接客します。世界各国から訪れてくる人たちと接することができるのはリゾート地で働く特権です。働いていて感じたのは、やはり海外で働く以上、ある程度の英語力がないと話にならないという事実です。しかし、日本

もっとみる

ニュージーランドからの手紙 第2回

第2回 別れを乗り越え次の一歩を

 ニュージーランド(NZ)にやってきて3か月半になります。語学学校を卒業した僕は、かねてからの計画により、滞在していた街を出ました。愛すべき友達とも再会の約束を交わし別れました。正直に言うと、大切な人との別れが辛く孤独に打ちひしがれた夜もあります。それでも人生は心なく続きます。僕は募る寂しさを振り切れないまま次の地へ向かいました。
 

 その後は、田舎町で宿泊

もっとみる

ニュージーランドからの手紙

2年前、僕は大学を休学しニュージーランドに渡った。ワーキングホリデーでニュージーランドを満喫し、人間的にも一回り大きくなってやろうと思ったのだった。あまり面白くもない大学生活に、一旦小休止を打ちたかったのもある。

結果的に、ニュージーランドで過ごしたおよそ一年という期間は自分にとってかけがえのない財産となった。それまで出会ったことのないタイプの人、自分とは無縁だと思っていたタイプの人、全く異なる

もっとみる