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Vol.3 人間関係の変化が組織を変え、業績を好転させた。伴走型のコンサルと共に、2年で受け身体質から脱却

 株式会社U-NEXUS(ユーネクサス)代表取締役社長の上野敏良と、長野市の老舗の看板制作会社「株式会社アドイシグロ」代表取締役社長・石黒ちとせに聞くインタビューシリーズの第3回。経営者との対談記事を3回に分けてお届けし、4回目に営業部へのインタビュー記事を紹介していきます。

■グッドサイクルを回すことで、見える量が変わり、自分が楽になった

―コンサルを受けたことで社員は変わりましたか?

石黒:
 みんなよりも私自身が変わったかもしれません。私もそうでしたが、多くの経営者は成功の循環モデルを逆回ししています。「成績を出せよ!」「もっと考えろ!」と社員を追い詰めても、関係の質は下がるばかりで、バッドサイクルに陥ります。

 上野さんから「大学の研究で、このサイクルを回して成功している事例がこれだけあります」と論理立てて説明されたことで、「褒め合うなんてできません」と言っていた人も、「そういう説があるならやります」と、前向きに取り組むようになりました。もしこれを私が「こうするといいからやるんだよ」と強引に言ったところで誰もやらないでしょう。

 ただしコンサルティングをスタートしてから、はっきりと営業利益の黒字化という結果が生まれるまでには2年近くかかりました。

 たまたま獲得できた仕事についても、実はその裏にはみんなの行動や考え方が変わったから獲れたのだと思うのです。だから、たまたま獲れて良かったね、で終わりではなく、できたことに対しても自分たちで要因を考えます。

 自分たちが自ら仕掛けて結果が出たからこそ、さらに大きなモチベーションへとつながっていっています。それも、全員がそれぞれ上野さんからヒントをたくさんもらって、伴走してもらっているからこそです。

株式会社アドイシグロ・代表取締役 石黒ちとせ

―具体的な成果はありましたか?

石黒:
 コロナ禍でも売上をキープできたのは、ヒットしたコロナ飛沫防止パーテーション「マウンテンマウンテン」のおかげもありますが、そういう成功事例を経て、自分たちが動けば変わるんだという感覚を味わいました。おかげで他のことにもチャレンジする習慣ができた上に、失敗してもそれを続けることができたから。世間の経済活動は低迷している中で、自分たちが諦めずやり続けたことが、数字として表れ始めたのが1年目です。

 その後、ある自動車メーカーが統廃合し、看板の入れ替えの仕事が入って来ました。運が良かったともいえますが、それをしっかりと仕事にすることができました。営業部と制作サイドが協力しあって乗り切ってくれて、社内の一体感がだんだん出てきたと感じています。

 ただし、この時は、特需だから次の年が大変になるのでは、とみんなが心配しました。ところがその翌年、わずかながら前年の売上を上回ることができたので、みんなで喜び合いました。

―経営全体が少しずつうまく回り始めましたか?

石黒:
 まだ非常に良い状態とは言えませんが、やればできるし、自分たちがやるしかないという雰囲気ができてきました。以前は私だけが危機感を抱いていのに、今ではみんなの方が危機感が強いくらい。グッドサイクルを回すことで社員が変わり、私自身にも変化が生まれたのです。

 提案の一つとして、「いいねボックス」というものをやり始めました。人の良いところを見つけて書いて箱に入れておく、「サンクスカード」みたいなものです。他の会社でも取り入れているのは聞いたことがありましたが、取って付けたようで最初はみんな懐疑的でした。でも社内の提案でスタートしたのでなんとか協力しようと、自分自身の「筋トレ」のつもりで私も書くようにしました。

 すると、いつも問題(Problem)ばかりを注視ていたのですが、だんだん良いところを先にピックアップするようになり、すると物の見え方が全然違ってくるものです。

 そもそも会社では、悪いことをしようと思ってする人はいません。良いことを一所懸命する中でミスをしてしまうわけです。その人の仕事を見ると9割9分は良いところであり、いくらでもその良いところを挙げられます。今まで何を見ていたのかと思うくらい自分の見える量が変わってきて、すごく楽になりましたね。

株式会社U-NEXUS・代表取締役 上野敏良

■伴走型のコンサルが、フラットで持続可能な組織の土台作りに

―今後、上野さんからどんな力を借りて、どんな未来にしていきたいですか?

石黒:
 もうワンランクアップしたいですね。上野さんから新たに、「心理的安全」な環境をつくることの大切さを教わっています。例えば、仕事に対してネガティブな気持ちを言葉に出しても大丈夫、という安心感のある職場環境作りです。

 言ったらいけないと悩むようなことでも、一旦は聞いてもらえる関係ができていると、より仕事がしやすくなります。本当の意味での心理的安全性の高い会社を作れれば、安心してより自由に自分の気持ちを出すことで力を発揮できるようになるでしょう。

 それぞれの人が持つアート感覚を惜しみなく出して、それを仕事として回していくようなことができれば、会社に来るのが楽しくなるのではないでしょうか。そうなれば、まさに私が感じていた課題解決が自然に実現できるのです。

 私は、上からの命令に従うだけのピラミッド型の組織は意味がないと思っています。フラットな組織にするには、プロセスを大切にし、グッドサイクルを回す上野さんのやり方は理にかなっています。

上野:
 僕は伴走型のコンサルティングを心がけています。つまりやっていることはコーチング的なことで、場を作ることと、働くみんなを元気にするのが自分の役割で、主役は社員のみなさんです。

 一過性でなく持続性のある会社づくりが今後の目標ですが、そこは根底となる組織の風土づくりが必要で、時間はかかりますから、コンサルタント側も根気がいります。

 アドイシグロさんは今、良い土台が作れています。ですから、今後は社長の目指す高付加価値経営、つまり付加価値が企業価値を高める企業体質へと、さらに引き上げるための支援ができたらと思っています。

取材日/2023年8月25日
場所/株式会社アドイシグロ 
写真/清水隆史(ナノグラフィカ)
執筆/松井明子
編集/寺澤順子(ソーシャルデザインセンター)

>>営業社員の声はVol.4へ(最終回)

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