ビジネスマンに勧める資産形成(株式投資)④~キャリア戦略に資産形成が有効な理由~

今回は「株式投資から得られるその他の効用」について考えてみます。

(↑は当日のPPTスライド)

株式投資から得られる効用は金銭的なリターンに留まりません。
まずもって、企業や社会を見る目が養成されます。例えば、マクロ経済・金融市場・労働市場などの、我々の生活を取り巻く環境因子に対する興味が湧いてきます。企業の業績や株価はこうしたマクロ要因の影響を受けるからです。

そしてインデックスへの投資、例えば株式市場の一部または全体をカバーする指数(S&P500, QQQ, VTI、日経平均、TOPIX、半導体銘柄など)だけに投資をする場合は、このマクロ環境に興味を持つだけで十分です。後は思考停止でひたすらHoldするのみ。

次に個別株へ投資するケースを考えてみましょう。
この場合はマクロ環境だけでは不十分です。その企業の競争優位性や事業リスクを見極めて判断しなければなりません。ビジネスモデルの類型を学び、参入障壁の型を知り、財務分析を習得する必要があります。

これらのスキルに加えて、長期的に業績が伸び続ける会社をモニターし、投資することで、次のセンス(≠スキル)も養われます。
■人間社会に対する理解
■人間に対する洞察力
■意思決定力

なぜなら、持続的な競争優位性を持つ会社は「人間の本性」を鷲掴みにしており、人間と人間社会をよく理解しているからです。また、株式に投資することはそれ自体が重大な意思決定でもあります。デイトレードやスイングトレードといった「投機的取引」では売買を頻繁に重ねますので、一度の購入に対する意思決定の重さは比較的軽いと言えます。

しかし、一度購入したら10年保有する覚悟で投資する「長期ファンダメンタルズ投資」においては、一度買ったら原則売らないわけですから、意思決定の重みが自ずと全く異なります。そして、こうした意思決定を積み重ねていくことで、判断力や胆力が養われます。

またこうしたセンスというのは、資産形成のみならず、自身の事業や転職活動においても有用な要素であります(企業や事業を見極める力が養成されたり、意思決定力が磨き込まれるため)。

もう1つ見逃せないのが、会社に対して依存しない精神(精神的な独立自尊)が育まれることです。意外かもしれませんが、自らの実体験からしてもこの効用は非常に大きいと感じています。

社外取締役の例で説明すると分かり易いかもしれません。会社法上で期待される社外取締役の最も大きな役割というのは、一言で言えば、経営トップをクビにすることです。これがコーポレートガバナンスに圧倒的な規律をもたらします。しかし、社外取締役が委任元企業から得られる報酬で生計を立てている場合、経営トップを忖度して会社にとって本当に重要な発言ができず、牽制機能を果たすことが出来ません。しかし、報酬を委任元企業に依存していない社外取締役は、一切の忖度抜きで本質的な提言が出来ます。

会社員の本質もこれと似ており、セーフティネットがあれば「嫌になったらいつでも辞めてやる」というスタンスを取ることができます。この精神的余裕こそが社畜からの解放の第一歩であり、精神的な独立自尊と言えます

次回は「人生のリスクマネジメント」について考えてみます。

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