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💞元気の出る「アンの青春」

「人生には、もっとがっかりするようなことが何度もあるよ」
マリラはアンを慰めるつもりで言った。
「あんたはひとたびこうと思い込んで、それが思い通りにならないと、がっかりしてしゅんとなる、こんなとこはちっとも成長しないね」
「そうね、そうなりがちね」アンも悲しそうに認めた。
「すてきなことがおきそうだと思うと、わくわくして期待の翼にのって高く舞い上がって、はっと気づくと、どしんと地面に落ちているの。
でもね、舞い上がっているときは本当にすばらしい心地よ…
夕焼け空をすうっと翼を広げて飛んでいくような気持ち。
後でどしんと墜落しても価値はあるくらい」
「そうだね。そうかもしれないね」マリラも認めた。
「私なら淡々と地べたを歩くほうがいいがね、舞いあがったり落ち込んだりしないで。でも、人それぞれ生き方があるからね…」
(引用 文春文庫『アンの青春』 松本侑子新訳より)








2009年と2014年、
私はプリンス・エドワード島を訪れました。
私にとっての「聖地」です。
村岡花子先生の翻訳が有名ですが、
今、現在、「赤毛のアン」シリーズの完全訳に取り組まれている
松本侑子さんとご一緒の、すてきな旅でした。

             グリーンゲイブルズ   photo by Toshimi



アンの部屋                   photo by Toshimi





ご存知「赤毛のアン」
原題“Anne of Green Gables”は
孤児だったアンがマシューとマリラの兄妹の
家族として愛を知り、
腹心の友ダイアナと共に成長していく物語で、
最悪のマシューを亡くしても、
希望を持って教師として前進していく
というところで終わります。


その続編が「アンの青春」原題“Anne of Avonlea”です。

photo by Toshimi






マシュー亡き後、気弱になったマリラを助け、
グリーンゲーブルス農場も維持し、
地元アヴォンリーの学校で子どもたちの教育をしつつ、
盟友ギルバートと共にアヴォンリー村を
良くする改善運動にも着手し、
いくつもに失敗にも屈しない元気いっぱいのアンの
16 歳から18歳までが描かれています。


天真爛漫に見えるアンですが、
心の奥には人生の悲しみを
十分に知っている深い湖があります。
そしてそれ以上に人生を美しくする光を放っています。

アンを産み育てた
作家ルーシー・モード・モンゴメリその人が
両親の愛を知らず、祖父母に育てられ、
本を読むことで魂の成長をしていた人だからでしょう。



感染拡大に歯止めがかからず、
保育園、幼稚園は休園、
学校は学級閉鎖という現状となり、
2月5日、6日に開催予定の「春呼ぶコンサート」を
開催するか、延期するか、中止するかを
ずいぶん考えました。

そして
会場となる大倉山記念館は横浜市の施設で、
感染防止対策のガイドラインもきちんとしていますから、
開催する決断をしました。

とはいえ、こういう時ですから、
急なキャンセルがでることは想定内です。

ピアニストの久元祐子さんも
バイオリニスト古館由佳子さんも
人数が少ないなら、
いつもよりアットホームな
温かいコンサートにしましょうと言ってくださいます。

その時、その場でしか
感じる事のできないことを
大切にしようと思います。

まん延防止等重点措置が適用された今、
どう行動するか、
いろいろな考えがあると思います。

自分の頭で考えて、
行動できる自由があるのですから、
ありがたいと思います。

そして、同じ思い持っている
友人がいることを
ほんとに嬉しく思います。

kindred spirit “同志、心の友、
心の同類 という意味で、
アンは心のあり方で
親しくなれるかどうかを
本能的に見極めていました。


富、地位、名誉、職業、知識、
などは関係なく、
心持ちが一番大事!


アンと教え子のポール・アービングは
まさに心の同類でした。
再び「アンの青春」から引用します。

「その王国のなんと美しいこと 
 想像が、風景の扉を開きゆく」
この幸せな王国へむかう道すじを二人は知っていた。
その国では、歓びの薔薇が谷間や小川のほとりに永遠に咲き、陽の輝く空は雲に翳ることなく、甘さ調べの鐘も調子をはずすことがない。そこには、夢みる心の同類たちがつどっているのだ。
王国のありかーそれが「太陽の東、月の西」であることーこれは大金をはらっても教わることのない貴重な言い伝えであり、どんな市場へ行こうと買えない知識だった。
それはきっと、生まれたときに良い妖精たちがさずけてくれる贈り物なのだ。
いくつになろうと、そこなわれることも奪われることもない贈り物。
この贈り物をさずけられた人は、たとえ屋根裏に住もうと、それを知らずに宮殿に暮らす人より、はるかに心が満たされるのだ。
引用   文春文庫『アンの青春』松本侑子新訳より


「心の同類」と一緒に過ごすとき、
それが束の間でも
輝く王国にいるのだと思います。



2022年、

みんなが不安にかられているから、
つまらないデマに惑わされてしまいがちです。

こういう時だからこそ、心を落ち着けて、
「心の同類」の皆さんと、
未来を切り拓くために
どう立ちあがるかを考えたいと思います。

アンはマリラに言います。
「一番幸せで心楽しい暮らしとは、華やかなこと、驚くようなこと、胸ときめくようなことが起きる日々ではなく、さりげない小さな喜びをもたらす毎日が、今日、明日としずかに続いていくことなのね、まるで真珠が一つ、また一つと、糸からすべり出ていくように」
文春文庫 『アンの青春』松本侑子新訳より



…I believe the nicest and sweetest days are not those on which anything very splendid or wonderful or exciting happens but just those that bring simple little pleasures,
following one another softly,like pearls slipping off a string.…



どうか、今日という日が真珠のような一日になりますように。

グリーンゲイブルズ  のお庭 photo by Toshimi


#アンの青春
#赤毛のアン
#モンゴメリ
#松本侑子








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