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D2Cブランドの99%はプロダクトで決まる

こんにちは、ファクトリエ代表の山田(tocio_yama)です。

ファクトリエは、「語れるもので、日々を豊かに」をミッションとしています。日本各地のこだわりを持った工場と一緒に、語れる(=ストーリーのある)洋服を作り、心の温度を高めるブランドです。

長く使って頂くために・・・

①トレンドではなく普遍的なベーシックなデザイン

②ずっと愛用できる高い品質

③誰かに話したくなる、ユニークな技術による機能性

④作り手の温度を感じられる安心感

を大切にしています。

前回の「D2C創業、最初の壁を超えるための5つの基本」を多くの方に読んでいただいた際、「プロダクトについて詳しく教えて欲しい」と要望をいただきました。今回は、”プロダクト”をテーマに書こうと思います。

マーケティングも重要ですが、何より、プロダクトが最も大事だと思いますので、ぜひご一読ください。

※今回はプロダクト開発、ものづくりを実際にやろうとしている方向けの内容です(長文)

1.コンセプト

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コンセプトは、クラフトマンシップの宿る、品のあるスタイルです。

きちんと感があり、誠実さを感じられるデザインを心がけています。

・トレンドではなく、長く愛用できるベーシックアイテム

・一流ブランドの工場の技術を引き出した品質

・日本のものづくりを応援し、継続する環境づくり

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30代になり、私自身がそんな服を欲していました。ファストファッションでもなく、セレクトショップのトレンドでもない、長く安心して着られる上質な洋服を探していました

2012年当時、起業するにあたって、再度、ファッションとは何なのかを考えました。そもそも私はなぜ洋服が好きになったのか?家業が洋品店だったというはそうなのですが、私は洋服自体というよりも、その背後にあるストーリー(父親からもらった傘、友人の店で購入した時計など)が好きなのだと気づきました。そこから、ミッションを「語れるもので、日々を豊かに」としました。

正直、事業を始めた時のエネルギーは無知と本能だけでした。例えマーケットがなくても、またマーケットが小さかったとしても、行動することが大事だと考えていました。初めは手探りでしたが、必死にやっていく内にある時点から状況が打開されていきました。

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便利さを優先するための都市化が進み、人間関係が希薄化していく中で、各地の自然やものづくりの魅力が薄れ、日本から「風土」が失われている。風土は、外から吹き込む風と、その土地に古来から続く土によって成り立っています。ファクトリエは、その土地に外から吹き込む風として貢献していきたい。

そして、現代の孤独や不安を感じる人々に、「語れるもの」によって、心の温度を1℃でも高めたい。そこで最初に決めたのは、「自分が欲しいと思うもの以外は売らない」ということでした。

2.商品開発

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シンプルに、価値(機能的な価値と情緒的な価値)が、価格を超えていると商品は売れます。当たり前ですが、価格を価値が超えていないと判断されると、売れません。

例えばワークマンさんは機能性に特化しています。作業者の求める機能である耐久性、防寒性、防風性、遮熱性、通気性、吸汗性、透湿性、速乾性、ストレッチ性、耐水性、抗菌性などを盛り込み、タグにも「機能」を強く打ち出されてます。

逆に、20歳の頃に私が下働きしたパリのグッチでは、香りから装飾、販売員の服装まで情緒への投資を惜しみませんでした。商品そのものの価値以上に、そのブランドを持つことで得られるステータス(自己承認欲求)を満たすことが価値でした。

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(グッチ・パリ時代)

商品開発において、圧倒的に突き抜けた価値(機能性もしくは情緒性)を持つ商品であるかはとても重要です。自分たちも、いち消費者であることを大切にし、自分なら買うか?プレゼントしたいか?を最重要視しています。そうしてできた商品の価値(機能性や情緒性)を通し、お客様はファンになってくれます。

自分たちが好き、という罠

当たり前ですが、「お客様視点」は普遍です。最終的にお金を払うのは誰か、その方がどのようなニーズを持つかを考える必要があり、そのニーズに対して、ファクトリエではどのような価値を提供していくかを考え続けます。

主語を「自分たち」にすることによる弊害は、やりたいことが先立ってしまい、自社優先の硬直した目線になってしまいます(「これは必要なはず」「買ってくれるはず」と考えてしまう)。

ですので、自分たちがユーザー視点を持ったとしても、「自分たちが作る服は良い」と無条件に思わないようにしています。自分たちの服が良いと考えてしまうと、売れないのはお客様が悪い、景気が悪い、と考えるしかなくなってしまいます。お客様に喜ばれることが重要にも関わらず、自分たちの視点のみで考えてしまうと客観性を失い、何も改善を進められたくなってしまうからです。

別の言い方をすると、良いものは売れるという考え方は、自分たちにとって都合よく世界を見ようとしており、「良い服だから売れるのではなく、売れているのが良い服」と、目の前の現実を謙虚に受け入れ、本当にお客様が満足されることは何かを見極めなければと思っています。

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(工場文化祭で、お客様の声を聞く工場さん)

そのためファクトリエでは、「傾聴」として様々なお客様に月10名ほど、直接ヒアリングの機会を作り、「どのような職業で、なぜ、この商品を購入されたのか、ファクトリエに感じてくださっている価値は何か」を細かく伺います。 お客様になりきり、商品をどのように購入しているのかを調査し、購買行動の全体像と詳細を把握します。

期待値を超える

どんなブランドであれ、成長する過程において顧客の期待値を超える価値ある商品を作っているはずです。そんな機能性、情緒性に感動した顧客が口コミで友人に紹介し、ブランド力がさらに高まります。このサイクルができなければブランドは作れないと考えています。ユーザー視点で商品を作り、そこから「世の中になかったが、欲しかった」「長く愛用できる品質」という感動を体感していただき、口コミでファクトリエへの思いを広げていただくサイクルを大切にしています。

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(期待値を超えた商品には、多数の声が集まります)

厳しい時期だからこそ、飛躍した発想をせず、地道に自社の強みや風土を分析し、地に足のついた着実なアクションをする。例えば、 元来、日本の工場には固有の存在意義や強みがあります。自社が誰に、どのような価値を提供してきたか。 誰が、どのような価値に対してお金を払ってくれたのか。それを確認し、強みを強化していく必要があると思っています。

【製品力が強い会社の取るべき戦略】
① 製品力を強化:お客様自身が探して買うような圧倒的な製品をつくる。そうすれば販促も不要になる
② 顧客関係力を強化:製品力の強い会社がこれまでの顧客のニーズに特化した製品をつくる
③ 運営力を強化:製品力の強い会社が運営力を強化し、コストダウンを図る。よい製品でコスト競争力もあれば、シェア拡大を狙える

—「ナンバーワン企業の法則―勝者が選んだポジショニング 」
M.トレーシー (著), F.ウィアセーマ (著), 大原 進 (翻訳)

新商品のPDCA

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1年目は最小ロットで作っています。かなり少ないので、お客様からは「すぐに完売した」とお叱りをいただくことも多々あります。余ってしまうとセールをしない分、大変になりますので、ご理解いただきながら進めています。

2年目は一年目の初速からMDが生産数を決定。 あまり売れ行きが良くなかったものは生産されませんし、売れ行きが良かったとしても需要100に対して、100は作りません(90ほど)。カラーは増やしても一品番で4色ほどで(前年と入れ替えあり)、お客様が迷わない色数にしています。

新カテゴリーへの挑戦

自分自身がユーザーの一人として「こういう服が欲しいが、世の中にない」と気づくことで、世の中に無いカテゴリーを見つけることができます。私たち自身が、ファストファッションでもなく、ファッションブランドのトレンドでもない、長く安心して着られる上質な洋服を探しているからこそ、新しいカテゴリー探しに素直に向き合えていると思います。大切なのは、「好き」「楽しい」という感覚ではないでしょうか。

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汚れをはじく白いコットンパンツは、岡山児島で生まれました)

リスクはありますが、他社に先駆けて特定カテゴリーへチャレンジすると先行者の利益を得られます。例えば、「Life Wear(日常着)ならユニクロ」「ジーンズならリーバイス」「環境問題ならパタゴニア」のように、イメージが定着するからです。後発ブランドが同じカテゴリーでポジションを獲得しようとしたら、大きな投資が必要になります。

将棋の羽生善治さんも著書で「後発の不利」について書かれてます。

おもしろいのは 、将棋には 、後でミスをしたほうが不利になるという法則があることです 。相手がミスをする 。自分もミスをする 。ミスとミスで帳消しになってもよさそうなものですが 、実際は 、先のミスのマイナス分も後のミスが背負わなくてはならなくなるのです 。当然 、後のミスのほうが罪が重いというか傷が大きくなります 。
—『勝負哲学』岡田 武史, 羽生 善治著

3.品質基準

ありがたいことに、お客様アンケートでは、商品購入の理由に「品質が良いから」がダントツで一番です。日本製は品質が良いはず、とハードルが期待値は高いため、それを超える品質作りに努めています。

700工場から選び抜いた55工場

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創業当初、工場との取引がうまくいかない時も、「提携する工場のレベルを下げることはしない」と決め、今も提携する全ての工場は自分の足で回り、確認しています。

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情熱だけでお金のない私を信頼してくれたのは地元、熊本に本社を置くシャツ工場「HITOYOSHI」の吉國社長と竹長工場長でした。世界74ブランドのシャツを手がけ、最高品質を維持するお二人は、私にとってまさに恩人でした。志と想いに共感いただけたチャレンジ精神旺盛な二人には感謝しかありません。インターネット直販というリスクを恐れず明るく突き進んだ当時のことは、9年経った今も鮮明に覚えています。 

「工場選定基準」を一部、ご紹介します(初公開)

技術や5S(整理/整頓/清掃/清潔/しつけ)を軸に、マインド・定性的な部分も見ています。

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ちなみに、「ここまで見るの?」と言われるのが、トイレです。

「ちょっとトイレに行っていいですか?」と話し、トイレを隅々まで確認します。おそらく工場の皆さんは、「山田は長いトイレだなあ」と思われてるだろうなと覚悟してます。(笑)

(緊急事態宣言中は、オンラインで工場訪問を続けました)

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商品開発フロー

ファクトリエのメンバーは、元々お客さんだった人や理念に共感して入社したメンバーがほとんどです。そのため、お客様が何に喜んでいただけるのか、感動するのかを自分の感覚として持っています。

さらに私がレビューし、商品開発チームも自分たちのほしい製品を作ります。開発過程では、最初に企画段階で私がユーザー視点でフィードバックし、サンプル段階ではお店のコンシェルジュ、顧客も加わって、販売すべきか、より良くするには?を話し合う機会を作っています。

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商品を作っていく上で生地試験など客観性のあるデータは大切ですが、その基準をクリアしているからOKという話ではありません。実際にサンプルを作ったら、自社で洗濯耐久性をチェックし、形が崩れないか、色落ちしないか、糸が切れないか、を確認していきます。ユーザー目線に立って「長く愛用できる」ことが重要ですので、運用体制を整え、基準を作っています。

毎週、全メンバーでお客様のトラブル、クレームを確認しています。自社の品質基準を超えているなら、「不良品ではない」ということは簡単です。ただ、お客様はわざわざクレームの声を言いたいはずはありません(むしろ労力をかけて声を届けてくださってます)。

前述の、「良い服だから売れるのではなく、売れているのが良い服」という考え方に則して考えれば、商品が「顧客にとって不満(商品に値段分の価値がない)」は明らか。そのため、クレームのあった商品は改善することにしています。

常にアップデートし続ける

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毎週のように、「自分アップデート」という言葉をメンバーに伝えています。身近に学べる人がいないと感じたなら、自分の眼が曇っている可能性があります。誰かをすごいと思えるのは、自分に何が足りないかをわかっていて、学びたい意欲や、謙虚な気持ちがあるから。自分の成長が頭打ちになっていると感じたら、自分の中の固定観念や思考停止に気づき、壊さないとそこから先には進めません。

同様に、これが最高品質と自信を持って送り出しても、すぐに陳腐化してしまいます。価格以上の価値を生むための品質基準のアップデートを、繰り返していかなければと考えています。

生産性向上は生存率を高める

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恥ずかしながら、私は一時期、生産性という言葉を悪印象で捉えていました。生産性を高めた先に、独自の技術は残るのか?途上国と同じような品質にならないか?と短絡的に考えていたのです。

しかし、この厳しいタイミングに生産性の重要性を痛感しました。

売上が増えなくても無駄をなくし、経費を削れば利益は増えます。企業は日ごろから売上が減っても利益が増える状態を目指すべきで、売上が減って利益が出ないのは無駄なことをしているのかもしれないと考えるようになりました。

つまり生産性は生存対策であり、ムダをなくすこと。10人でやっていた作業も、5人でやってみる。この作業は5人でできないから、その作業自体をやめることを検討する。このように経費を全部ゼロから見直し、減量すると同時に、商品を絞って磨きをかけていく。

こうして生産性が上がれば上がるほど、時間的にも精神的にもゆとりができて幸せになります。仕事の生産性を上げるためには、幸せであることが一番です。「生産性」⇄「幸せ」という、好循環を実現させていかなければと思っています。

4.マーケティングの是非

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(昨年、大ヒットしたエアーブルゾン

インターネット広告などを小額で行っていますが、近い将来、広告宣伝しなくても自然に売れる商品を目指しています。それには、顧客の期待値を超える、突き抜けた価値ある商品が必要で、正直、まだまだその商品開発が十分できているとは言えません。

ただ、一般的な市場調査や、同業他社の取り組みを研究して「競合ブランドに対してどうするか」といったマーケティングはしません。

コンセプトやターゲットがそもそも違う他社ブランドをベンチマークして研究したところで、突き抜けた商品は生まれないからです。「語れるもので、日々を豊かに」というミッションから、あるべき戦略を描きたいと思います。

結果的に売上はついてくる

正しいことをしていれば、それが事業として成立すると思っています。つまり、顧客の期待値を超える商品をつくることによって、笑顔の数に見合った売上を生み出すことが可能という考え方です。

特にこれまでになかったカテゴリーの場合は、価値をベースに自由に価格を決められるため、コスト算出からではなく、ポジティブに進められます。

特に、ユーザー視点で「困ってる人を助けること」の大切さを感じています。熱エネルギーは熱い方から冷たい方に行くので、エネルギーの流れる方向は決まっています。結果がうまくいかない時は、必ず自分が間違ってます。自分が間違っているとわかれば、自分を変えることができるため、その繰り返しで、成長していくのではと考えています。

5.アフターコロナのプロダクト開発

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(山梨のファクトリエ・オーガニックコットンファーム)

人と人が直接会えなくなり、心の温度が下がり、孤独や不安が蔓延した悲しい一年だったと思います。ポジティブに捉えると、人間が本来持っていた普遍的な価値観の大切さを実感し、自然の一部であることを認識できました。

私が一番大切にしている「品」はここから生まれます。品を持って行動する習慣は、伝統的に、日本人には備わっているものだと思います。

過剰に生産されては消費されていく中で、ファッション業界は大きな転換点を迎えます。今後は一層、サスティナブルを軸とした3点が求められるのでは、と考えています。

1.「長く使える品質」

ベーシックで洗練されたデザイン、生地が丈夫でへたらない、縫製が丁寧で縫った糸が切れない

2.「繰り返し、生まれ変わらせる」

リサイクルやシェアすることで、その資源を何度でも使うことができる。資源の回転率を高める、という意味でも重要視してます

3.「自然の一部となる、天然素材(土に還る)」

生産過程で水をあまり使わない和紙やリネン、オーガニックコットンには力を入れてます。ウールは羊の毛を刈ることで毎年得ることができ、肌にも優しいというデータも出ています(アレルギー性皮膚炎の方には特に)

長くなりましたが、プロダクト開発には、コンセプト、商品開発(ユーザー視点)、品質基準の運用、マーケティングなど、様々なことが関係してきます。気が遠くなる話ですが、少しでもお役に立てれば幸いです。

特に、顧客視点は今回のパンデミックを受けて大きく変化しており、昨年売れたものを売ればいいという感じでもなくなってしまいました。

地球における人間と自然の共生は大きなテーマになると思いますし、その上でどのようにサスティナブルとビジネスを両立させるか、も重要な観点になってきそうです。

最後に、

ファクトリエが大切にしているバリューをご紹介します。

「誠実」
人生には”謙虚”と”素直”が必要です。
“謙虚”であればどんな人の意見にも耳を傾けることができ、
“素直”であれば、まっすぐに受け止めることができます。
初心を忘れず、基本に忠実にできていますか?

「挑戦」
明日があると思っていたら、あっという間に何年も経っています。
迷いや苦しみを経験するからこそ人は成長します。
一番大切なのは、上手でも下手でも、一生懸命、挑戦していますか?

「楽しむ」
人のためが、自分のためになります。
呼吸のように、優しい言葉をかけるから、優しい言葉が返ってきます。
仲間の長所を見て、自ら仲間に働きかけることができていますか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

それでは、またお会いしましょう。

お互い、良い旅路になりますように。

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