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つくりながら考えていること

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エッセイ集。つくるためにつづけていることや、考えていることを書いています。現在 原稿用紙129枚分。
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記事一覧

ミツバチと桜 / color field #14

ミツバチと桜 / color field #14

植物の染料を使って絵を描いている中で、度々に感じることがある。

それは、こちらが信じて愛を注いであげられたとき、いつも植物はその愛情に応えてくれるかのように美しい姿や色を見せてくれるということだ。

そしてその美しい姿や色は、植物が自分自身が生き抜くために身に付けたもの。

美しい色をした花は、ここに栄養があるよと昆虫や鳥に教えるためであったりする。

なにも僕を感動させたくって、そんな色をして

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自然の命のリズムを聴く / color field #12

自然の命のリズムを聴く / color field #12

絵を描くとき、その対象を観察するのではなく、大きな全体の一部としてそこに参与してみたいなと思う。

だけどそんなとき、僕の中の格好つけたいという欲がジャマをしてくる。

ついつい、目でしっかりと見ようとしてしまう。

なるべく手をかけて描き込もうとしてしまう。

見栄っ張りとは、とても厄介なものだなあ。

そんなことしなくてもいいのにと頭で言ってあげたとしても、体が勝手に反応してしまって、格好つけ

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雨の水の功績

雨の水の功績

最近、雨続きですね。

今日のお昼にふとお庭を眺めていたら、さくらんぼの木が花をつけているのに気付きました。

春に向けてパワーを溜め込んでいく植物たちは、瑞々しい雨に喜んでいるのかも。

最近知ったのだけど、水道からあげる水と雨の水では、植物にとって成長に寄与する度合いが全然に違うらしい。面白いですね。

岡山に移り住んで来て、植物と関わりながら暮らすようになってから、雨がもっと好きになったよう

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みえるものは、みえないものにさわっている。

みえるものは、みえないものにさわっている。

染色家の志村ふくみさんの本の中で、ドイツの詩人ノヴァーリスの引用があった。

“すべてのみえるものは、みえないものにさわっている。
きこえるものは、きこえないものにさわっている。
感じられるものは感じられないものにさわっている。
おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。”

大切なものは、目にみえないところにいつもある。

最近だと例えば、植物をみることを通して、自分の中

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あなたのすてきなところはね

あなたのすてきなところはね

静かにしてみると、初めて聴こえてくる音がある。

映像を撮り始めて、そんなことに初めて気が付いた。

風が葉を揺らす音、服の掠れる音、自分の呼吸の音。

そしてふと、自分の心の声だって、そうなのかもしれないと思った。

何かに不安になっているとき。周りの人たちを見て焦っているとき。仕事や人間関係のプレッシャーに打ち負けそうだけど必死に耐えているとき。

そんなときにはいつも、「もっと自分なら頑張れ

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植物的生活ー僕のボタニカル・ライフー

植物的生活ー僕のボタニカル・ライフー

アトリエやお庭の植物の写真・映像を撮り始めてからしばらく経ったけど、自然の命の美しさと、尽きない不思議にむしろどんどんのめり込んでいる…。

なんでみんなこんなにも違っていながらとても一部では似ていて、美しいくらいにシンプルな構造のようで実はすっごく複雑で、毎日少しずつ変わりながらも季節を巡って変わらないリズムを続けているんだろう。

植物は動かない。

いや本当は毎日動いていて、それに気付いてい

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昨日と今日の隙間に / ホトケノザ

昨日と今日の隙間に / ホトケノザ

朝のスタートが遅い人生なので、人から度々「夜型なんですね」なんて言われてきているわけなのですが、決して夜に集中力が上がるわけでもなく人並みかむしろそれよりも早く酒を飲み始めて気持ちよく眠くなって早々に布団に入っています。

朝型でもなく夜型でもない。これは何型なのでしょうか。僕のアクティブな時間はどこにいったんでしょうか。

日中型と言ってみると何も言っていないただの人間ですということに聞こえてく

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絵とデザイン

絵とデザイン

 ここのところ、絵を書くことが僕の活動の中心に据えられつつあるように感じている。

 実際に一日のうちの、絵を描く時間の割合が増えてきている。そして何よりも、それが今一番、僕の精神を癒やしてくれる行為になってくれている。

 だが実際には絵だけで食べているというわけではなく、収入の中心は今もデザインの仕事になっている。

 僕のデザインの仕事では、ロゴをつくることが多い。

 ロゴをつくることは、

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才能と、種の起源

才能と、種の起源

 数年前から、ひとりひとりが持っている個性のようなもののことを「才能」と呼ぶようになった。

 才能という言葉は、ときにとても暴力的だ。「あの人は才能がある」「あの人には才能がない」そうやって才能という言葉が、相対的な基準として人を比べるものさしのように使われることをよく見かける。自分がそんな冷たい「才能のものさし」を頬に押し当てられることを想像すると、それはものすごく無慈悲なことだと感じて、そし

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受け取ることと、与えること。

受け取ることと、与えること。

 もう殆ど、お金がなくなってしまった。積み立てている緊急用のお金はまだ残ってはいるが、それにまで手を付けるわけにはいかない。本当の本当の緊急用なのだ。緊急という言葉の意味は、自分の意思を越えた範囲にまできたときに、ということだ。

 固定で受けていたデザインの仕事を辞めて五ヶ月間ほど経ち、この期間は知人の数件のアイデンティティデザインの仕事を除けば、驚くほどに働いていなかった。よって収入も殆どない

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住み移り

住み移り

 久しぶりに実家に帰っている。岡山への引っ越しに向けて、実家に帰ることも想定してみて、半分生活をするような気持ちで滞在している。

土のにおいとスマートフォン

土のにおいとスマートフォン

 11月にiPhoneが故障してから、三ヶ月間ほどスマホのない生活をしている。一ヶ月経った頃に電話がないとガスや電気などの生活インフラさえ保てないという事実に直面し、電話機能だけの携帯を購入した。緊急の連絡が必要であれば電話をしてもらっている。メッセージやLINEはパソコンから返すことができるし、最近は緊急の連絡が必要になる性質の仕事は極力受けないようにしているので、連絡に関しても殆ど困ることはな

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何をつくっているのか知りたくて何かをつくっている

何をつくっているのか知りたくて何かをつくっている

 最近、絵を描くことが自分とつながり始めているような感触があった。ある日にある一枚の絵を描き終えて数時間経ったあと、急にそのことをじわっと感じた。絵を描いているときに初めて感じる感触だった。

 絵を描くとはどういうことなのだろう。自分にとって、物語を書くことと、絵を描くことは、何となく僕の身体の構造内において綿密につながっているような気がしている。

 これまでも絵やグラフィックの制作は、何かの

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