誰も知らない東欧文学

日本で知られていない東欧文学の魅力を発見し、伝えたい。バルカン・コーカサス大好き。アル…

誰も知らない東欧文学

日本で知られていない東欧文学の魅力を発見し、伝えたい。バルカン・コーカサス大好き。アルバニア語・マケドニア語・アルメニア語を学習中。ヘッダー・プロフィール画像はウズベキスタンの画家Konstantin Kacev(1967-)による作品。

最近の記事

【プログレ】カザフ/アルメニア/アルバニア/北マケドニア

普段このブログでは東欧文学を紹介している私だが、実はワールドミュージックも大好きである。ワールドミュージックでよく聴くのは、1960~70年代にかけてのラテンアメリカの音楽、とりわけトロピカリア(1960年代後半のブラジルで興った芸術運動)全盛期のサイケなブラジル音楽とか、アルゼンチンのプログレ(とくにAlmendraが好きすぎる)などだが、最近「そういえば東欧の音楽ってどんな曲があるんだろう?」とふとした疑問を持ったことから調べ始めた。 東欧の音楽、ロック・・・東欧のプロ

    • #ヤバいブルガリア文学 1―ブルガリアの麻薬文学―

      「ヤバい」なんて俗っぽい言い方になってしまったが、ちょっとでも多くの人にブルガリア文学のヤバさを、いや面白さを知ってもらいたいから、敢えてこういう言い方を採った。 今回紹介するMomchil Nikolov モムチル・ニコロフの"Hash Oil"『ハッシュ・オイル』 は、ブルガリア現代文学の作家についてまとめられたサイトCONTEMPORARY BULGARIAN WRITERSにて知った。マイナー海外文学に渇望している人は特に、ぜひ覗いてみて欲しい。 作家の経歴や作品

      • 続編・現代東欧文学ガイドを作りたいという遥かな野望に向かって

        2023年の最後の日に、途方もない野望を叫んでみたくなった。 このブログで私は5か月前から、日本でまったく知られていない東欧の現代文学の紹介をしている。 きっかけや経緯は自己紹介の記事で書いているので詳細は省くが、済東鉄腸さんの『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』に背中を押されたのと、常に未知なるものの紹介者であった澁澤龍彦の姿勢を継承したいとの思いでこのブログは始まったのだった。 だがこれらの思いの

        • リトアニア文学:イエヴァ・トレイキーテ

          今回紹介するのは、"Best European Fiction 2013"に収録されている短篇である。出版はドーキー・アーカイブ社、現代マケドニア短編小説コレクションを出した出版社としておなじみである。2010年から2019年まで続いたこのアンソロジーは、その年のヨーロッパ各国から生み出された選りすぐりの短編が英訳されて集められている。ヨーロッパ文学の今を知ることができ、外国文学好きには垂涎ものである。文字通りヨーロッパ各国、アルバニアやマケドニア、クロアチア、ボスニアなどバ

        【プログレ】カザフ/アルメニア/アルバニア/北マケドニア

          現代マケドニア短編小説:ジャルコ・クユンジスキ

          マケドニアの面白い作家を見つけてしまった。ジャルコ・クユンジスキ (Жарко Кујунџиски) .”Contemporary Macedonian Fiction”『現代マケドニア短編小説コレクション』に収録されている”Story Addict”は、物語中毒に侵された男の狂気の独白が、疾走するような文章とともに展開されている。外国語での読書で、初めて笑ってしまった。たった7㌻の超短編なのだが秀逸な文章ばかりで、ページが下線だらけになってしまった。 この小説は手紙の形

          現代マケドニア短編小説:ジャルコ・クユンジスキ

          現代マケドニア短編小説 : ルメナ・ブジャロフスカ

          バルカンの小村を舞台にした小説には、荒涼として黒い靄のかかったような、いわく言い難い不気味な薄暗さがあると私は感じているのだが、この作品もまたそうした印象を抱いたものの一つである。 ルメナ・ブジャロフスカの”Lilly”は、リリーという小さな女の子が不慮の事故によって亡くなり、その隠された死因によって徐々に家庭が崩壊していくさまを描いた物語である。 リリーは風変わりな外見をしていた。眉毛が眉間でほとんどつながり、肌は浅黒く、虚弱だった。お世辞にも可愛いと言えるような風貌で

          現代マケドニア短編小説 : ルメナ・ブジャロフスカ

          現代マケドニア短編小説:スネジャナ・ムラデノフスカ・アンギェルコフ

          今回取り上げる"Contemporary Macedonian Fiction"『現代マケドニア短編小説コレクション』は、ネットで現代マケドニア文学について調べていたら偶然見つけることができた作品集だ。アメリカに本社を置くDalkey Archive Press ドーキー・アーカイブ社から2020年に出版された、最近のマケドニア文学を英訳で楽しめる貴重なアンソロジーである。編者はPaul Filev ポール・フィレフ、知られざるマケドニア文学やスペイン語圏の文学を英訳して紹介

          現代マケドニア短編小説:スネジャナ・ムラデノフスカ・アンギェルコフ

          自己紹介―東欧よこんにちは、澁澤龍彦へのオマージュをこめてー

          ついに、東欧の現代文学を紹介するブログを始めた。 きっかけは済東鉄腸さんの『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』を読んで背中を押されたことだ。アカデミアじゃなくてもここまでできるのかと、その情熱と探求心、破竹の勢いの実行力に感動した。 私も今のところアカデミアではないが、もうそろそろ、ただ消費するだけではなくて未開拓のまま眠っている作品を発掘して、紹介したいと思っていた。 大学ではフランス語を専攻し、2

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          アルバニア人ディアスポラによる、フィンランド語で書かれたアルバニアBL文学

          My Cat Yugoslavia Pajtim Statovci  My Cat Yugoslavia(原題:Kissani Jugoslavia)は、コソヴォ出身のアルバニア人作家、パイティム・スタトヴツィ(Pajtim Statovci)による処女作である(2014年刊行)。アルバニア人の両親のもと1990年に生まれた著者は、2歳のときにボスニア紛争が勃発したおり一家でフィンランドに逃れた。スタトヴツィの作品はこれまでに3作を数え、どれもフィンランド語で執筆されている

          アルバニア人ディアスポラによる、フィンランド語で書かれたアルバニアBL文学