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もうすぐ三回忌 

元夫は2年前のお正月が終わってすぐ、亡くなった。

だから年末になり、世間はそろそろお正月というムードになってくると身体が無意識に緊張してくる。テレビやニュースなどは見ない。できるだけ人の多いところへは外出しない。親戚などにも会わない。一生懸命、お正月ムードを家の中に持ち込まないようにして平穏を保っているつもりだけれど、やはり年の瀬独特の空気感が私の五感を刺激する。どうしたって思い出す。自然と気持ちは不安定になり、食欲は制御を欠き、甘いものやアルコールが増え、睡眠のリズムは乱れ夜遅くまで起きている日が続き、身体も自然と緊張して左肩が強張って痺れてくる。

あぁ、あの日が近づいて来る。私が一瞬で絶望の底に堕ちた日。怖い。怖いよ。怖いよ怖いよ怖いよ。あの時の絶望、苦しみ、恐怖を思い出したくない。もうあそこに戻りたくない。逃げたい。命日も三回忌もない世界へ逃亡したい。

でもどこにも逃げ場なんてないんだ。私はここから動けない。また思い出すことが必要なら思い出すしかない。当時味わえなかった苦しみを味わい直すことが今必要だというなら甘んじてそれを受け入れるしかない。最初から私には選択肢なんてないんだ。ただ起こることを受け入れるだけ。2年前はあまりの衝撃と混乱にシャットダウンしてしまった身体の感覚を、これから少しづつ解凍していくのだろう。当時危険すぎて味わうことができなかった苦しみをこれから何段階にも分けて何層も深く深く再体験していくのだろう。分かってる。この身体にまだ残ってる。怖いけれど今の私にはできる。できるから訪れる。どんなに怖くてもしんどくても私がやるべきことならばやるしかない。その覚悟だけはあるから。

身体が強張ったり緊張したり過食したり睡眠が狂ったりするのは、そうやって私を守ってくれてるから。だから私はそんな身体に感謝こそすれ、正そうとか、揉みほぐそうとかしない。私たちは寄り添ってこの試練を一緒に乗り越えていくんだ。

私はこの身体を味方につけて、守ってもらいながら、この現実を淡々と粛々と受け入れていくよ。

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