傲慢と善良

読みました。
辻村深月さん作、話題の小説。

まず、読み始めてからずっと、心臓に悪いなあって思っていた。なのに、読むのをやめることができなかった。

実は、感情移入しすぎてしまったからか、この小説を読み始めてから動悸が止まらない。
今も。

マッチングアプリに日々勤しむ私にとって、身近すぎて、共感すぎて、ここまで言語化されると胸が痛かった。ひとつひとつの言葉がいちいち突き刺さる。

アプリ経験者なら誰もが感じること。
私も、
「ピンとこない」って何度思ってきたことか。
そして、それと同じだけ、相手に値踏みされてるのも体感してきた。
そして、うまくいかない度に、「また一からか」と思う。それでも、アプリはやめない。もう、「アプリをやってる自分」の恥ずかしさより、「出会いの足を止める自分」に恐ろしさを感じるようにすらなっていくのだ。

私は、この本を読みながら、友達のある言葉を思い出した。

私の職場に、出会った時から佇まいが気持ち悪いと思っている男性がいる。(とても失礼)
その彼が、ある日の朝礼で結婚報告をした。
私は、こんな人も結婚できるの?なのになぜ私には彼氏さえいないの?と少し、本気でショックを受けた。
たまらなくなって、大学時代からの友人で今でも独身の彼女にその話をすると、

「どうせ、相応の人だよ」
「私達だって選ばなければ今すぐ結婚できるよ」

と、ひとこと。
すごいこと言うなあと思ったが、実は、同時にたしかに、とも思った。

だって、私はその彼とは絶対に結婚なんかしたくない。
だけど、そんな彼もその奥さんからすると1番素敵な男性なのだ。

一体、どうやったら自分が素敵だなと思う男性から、「ピンとくる」女性と思ってもらえるのだろうか。

「アプリ使えばすぐ付き合えるよ」
本当?

つけられる「いいね」は、写真だけでも自分のタイプでないと分かる男性からばかり。

勇気を出してつけた、こちらからの「いいね」は知らぬ間になかったことにされている。

マッチングしたはいいが、一向にメッセージを送ってはこないあの男たちと、こちらからは連絡をしたいと思えない私。

メッセージ交換を始めてから、実際に会う約束を取り付けるまでのあの時間。

アプリの出会いにも限界を感じる。

こんなことをいつまでも言って、不満を垂れている傲慢な私。
結婚して家庭を持つ幸せを感じてみたいって思うのは、悪いことではないはずなのに。
高望みはしない。贅沢も言わない。

ただ、私にとって、ちょうどいい、ピンとくる相手を探しているだけ。


今日も気付けば、マッチングアプリを開いている。

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