そのオーナメントはルールを知らない。恋人たちにとっての。

夜空に無数のドローンが舞い上がった。
そのイルミネーションは高速で集結、飛散を繰り返し、星、クリスマスツリー、トナカイに夜空を飾った。
恋人たちはその光のショーに呆れた。もうクリスマスは終わったのだから。

ビルの屋上で、二人のカップルが寄り添っていた。
ドローンがサンタクロースの姿を描いていく。
「クリスマス、もう終わってるんですけど」
「これ作んのに、間に合わなかったんだ」
「ちゃんとルール守れよ、大イベントなのよ。クリスマスに会えないなんて…」
その時、一機のドローンが彼女の前に舞い降りた。アームが小さい箱をつかんでいる。
「それ、クリスマスプレゼント。受け取って」
「へぇ、それはもらっとくわ」
彼女が箱を開けると、リングが煌めいた。
「……これって」
「待たせたな。結婚しよう」

彼女が頷くと、全てのドローンが二人を真っ赤なハートで包み込んだ。

たらはかにさん企画
毎週ショートショートnote
お題「ルールを知らないオーナメント」より