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当事者が思うryuchell(りゅうちぇる)さんとpeco(ぺこ)さんの離婚と反響

ryuchellさんとpecoさんの離婚問題が話題になっている。
その中身をみてみると、ryuchellさんへの批判、pecoさんへの応援が多いようだ。

このニュースを目の当たりにし、当事者として世間の目はこうなのかと、改めて感じた。

何を隠そう、自分自身もトランスジェンダーであると、子を授かってから確信したからだ。

子どもと一緒に過ごす毎日は、反体性の役割を果たす日々となる。
それは当事者にとって、本当に自分を消すことであり、つらい時間場面が多々訪れる。

まだ若いryuchellさんが、この現実に直面し、自分の性で生きていきたい。
そう決意したのは、分からなくもないし、若かったからそうしていたのかもしれない。

また今回、批判の中に、男性と恋愛がしたいから離婚をしたのでは、という意見が多いことに驚かされた。

SNSを確認したが、どこをどう切り取ってもそんなことは書かれていない。

感じたのは、パートナーや世間に性自認のことを理解してもらい、自分らしく生きたい。

しかし子どもの父である以上、父としての役目は変わらず果たす、という決意表明のように思う。

本当は母として接したいだろう部分を、パパとして幸せを守る、と綴っている部分にもっと焦点を当ててほしい。
パパとしてみられることすらも、本来はつらいのだから。

しかし、子どもにはそれだけの力がある。
自分がryuchellさんのようにカミングアウトをしないのも、反体性の役割を完璧にこなしているのも、愛する子どもたちが幸せでいてほしいからだ。

もし告白してしまえば、その瞬間子どもたちは片親を失うことになる。

ある日母親、もしくは父親がそうではないと知ったら?
その日から、普段通りに甘える時間は持てなくなる。
そんな残酷なことは、自分には到底できそうにない。

ましてや自分のパートナーは、ryuchellさんくらい年代のころ、
「もしかしたら性自認が違うかもしれない」
と相談した時に、
「気持ち悪っ」
で片付けた相手である。

ずいぶんひどい対応だと当時は感じたが、今回の批判っぷりを思えば、パートナーの言動は普通であったのだろう。

長い間一緒に過ごしてきた人間が、よもやトランスジェンダーであったとは、認めたくない気持ちも良く分かる。

この件は、パートナーの一言により終了し、今でも反対性を演じ続けていることから、本気の発言だったとは思われていないだろう。

女子中学生が自分のことを僕と言いたがる謎の時期と同じ、その程度の感覚だと思うし、それで良かったのだと思う。

自分はpecoさんの言葉にもあった、墓場まで持っていくことをすでに決意した人間だ。

また今回のあまりにも理解のないコメントの数々を見て、より一層”墓まで”の決意が固まった。

時代はこれからさらに開かれ、性的マイノリティへの理解が進むと思う。

しかし、すでに子どもがいる自分のような立場の場合は、母親と父親がいる家庭を提供してあげるべきだと強く感じる。

それでも、ある程度年齢を重ねても、自分の性自認が違う事実は変わらない。今日も、明日も、つらさは胸に刻まれる。家族というそれ以上の幸せを与えてくれる人間がいなければ、どうなっていただろう。

とはいえ、
「もし、子どもを授かる前に気付いていれば……」
そんなことを考えたところで、時間を戻すことはできない。

だからこそ、見た目では分からなくても、告白するつもりがなくても、自分という人間がいたことは残したい。
そんな思いで今、文章を綴っている。

強く願うのは、ryuchellさんの子どもが大きくなった時にニュース記事を目にして、ちゃんとした父親が欲しかった、そんな想いを抱かないことだ。

親同士で離婚という道を決めたことは、子どもには関係がない。

しかし有名である以上、いろいろなルートで話を耳にするだろう。

パパの役割を果たすと決めているのであれば、公表しない選択肢が最善であったことは、理解しているはずだ。

それができなかったのは、2人が著名であり、人前に出ることで収入を得ているからだと推察する。

「あの時言わなければ……」

という想いを一生抱くことなく、ryuchellさんが思う道を歩むことを祈る。

そしてすべてを理解し、それでもパートナーとしての道をえらんだpecoさんに最大限の拍手を。この方の懐の広さがなければ、家族は成立しない。ryuchellさんも、彼女だから告白できたのだろう。

さいごに、もう一度。
夫であることはつらいけれど、父親という立場は誇り。
ただ離婚するのではなく、”一生かけてパパを続ける”というryuchellさんの決意にも、どうかもう少しスポットを当ててほしい。

自分が反対性を頑張っているから、そう感じてしまうのかもしれないが……。


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