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ホームレスにHave a nice day

2022の夏、1人でアメリカを横断した。
50日かけてニューヨークからロサンゼルスまでを旅した。
アメリカでは店員さんなどが別れ際にHave a nice dayと言ってくれる。
これがうれしかった。当時アメリカに全然知り合いがおらず、英語も下手くそで寂しい思いをしていたから、見知らぬ人に僕の一日が良くなることを想ってもらえてうれしかった。本気で思っているわけじゃなくて挨拶の一つなんだろうけど。
僕もそれをマネして出会った人に言うようになった。
因みにHave a nice day と言われたらYou too!と返すのが普通だ。

アメリカ横断15日目、僕はピッツバーグという町にいた。
ピッツバーグは綺麗なキャンパスを持つピッツバーグ大学が有名だ。


アメリカは9月入学だから大学では新入生歓迎のパーティーが行われていた。僕は1人寂しく旅をしていたからワイワイしたパーティーが羨ましかった。物価も高く、毎日ケチケチしながら飯を食っていた。散歩していると新歓パーティーが終わった会場を見つけた。大学のスタッフが食べ残しを片づけていて、通りかかりの僕にピザやポテトをたくさんくれた。



そのもらった食べ残しはめちゃくちゃ量が多かったので、食べ残しをまた食べ残してしまった。


ふと駅の周辺に座り込んでいるホームレスを思い出した。
駅に向かい、ピザを彼女にあげてみた。

ホームレスの女性は不思議そうにピザを見つめ
「これ大丈夫なの?腐ってない?」

僕は「大丈夫だよ。僕も今日食べた。でももうお腹いっぱいなんだ」
と答えた。

そして別れ際に僕は
「Have a nice day」と癖で言ってしまった。
ホームレスは「You too…」と小さな声で答えた。

そして僕は次の街へ向かう列車に乗った。

アメリカ横断中、色んなことがあったがこのホームレスとの会話はなんとも忘れられない。
そもそもホームレスにとってのnice dayってどんな日なんだろう、と後から考えた。
これから彼女の人生はどうなるんだろう。仕事を得たり家に住んだり家族を持ったりできるんだろうか。望みはかなり薄いんじゃないか。そんな人にHave a nice dayって言うのは皮肉みたいなもんじゃないか。なんて考えたりした。

アメリカは格差社会で、ホームレス大国だ。
どの町に行ってもホームレスがいる。白人、黒人にかかわらずだ。
彼らはどんな人生を送っているのだろう。

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