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敢えて悪いところに目を向けるという趣向について

全国47都道府県の中で、北海道ほど「ブランド」が確立されているところはない。
旅行で行きたい都道府県ナンバーワン、魅力度ナンバーワン、「北の国から」に代表される牧歌的な風景、美味しい食べ物と心豊かな人々…

明治時代まで「日本」の一部ではなかったという歴史的事実、日本国内で唯一亜寒帯に属するという気候的特異性、そしてロシアに近いという異国情緒も相まって、北海道という3文字が与えるイメージは今や筆舌に尽くしがたい規模になっている。

北海道は魅力的な地域である。これを否定することは難しい
旅行業界やメディア、そして北海道や各地方自治体によって訴求される「THE北海道」的イメージに惹かれるだけでなく、実際訪れてみても、道外とは似ても似つかない自然や、スケールの広さ、整然とした街並みなど、旅行者の印象に残る風景は枚挙に暇がない。

だからこそ、北海道には毎年日本国内外からたくさんの観光客が訪れているわけだし、都道府県魅力度ナンバーワンという地位は不動のものになっているのである。

しかしながら、道外から北海道に移住して約2年が経ち、北海道という地域は本当に魅力的なのか?という漠然とした疑問が湧き上がってくるのが避けられない状況となった。

魅力的どころか、むしろ全国でも珍しいほどに「ヤバい」地域なのでは?
このような疑問を背景として考案されたのが、「本当は怖い北海道」企画である。

北海道の暗部というと、一般的には「冬の厳しい気候」(所謂「試される大地」や、「田舎特有の排他性」(北海道以外の地域にも当てはまることだが)といった要素を思い浮かべる人が多いと思う。

インターネット上などで、北海道民(人口比からして札幌周辺の住民が多いだろうが)が、寒々とした冬の気候を引き合いに出し、「試される大地!」と表現している場面は頻繁に目につく。

北海道移住者の場合にしても、北海道のデメリットは何か?と訊かれると、開口一番に「冬の気候の厳しさ」と答える人が多い。

だけれど、私の考えはちょっと、というかかなり違っていて、冬の気候なんてものは実際はそれほど厳しいものではないし、屋内は却って道外のそれよりも暖かいから、不快になることはそれほどないのだ。

北海道にはそれ以上に「問題」となるべきことが多くあると思っていて、冬の気候なんてものは「開拓」初期はともかく、現代にあってはほとんど問題にならなくなった。(特に都市化が進んだ札幌圏は冬の平均気温もかなり高くなっている。)

では、北海道の本当の暗部とは何なのか?これこそ、私が「本当は怖い北海道」企画で取り上げたい事柄である。

  • 日本人(和人)が、蝦夷地に住むアイヌ民族を圧迫し、侵略した(負の歴史

  • 北海道の鉄路や道路建設のため、囚人が動員され、人権を無視した強制労働を課し、多数の犠牲者を出した(負の歴史

  • ロシア(旧ソビエト)に狙われていた北海道、ソ連は北方領土や樺太だけでなく、北海道北部まで手に入れることを画策していた(負の歴史

  • 全国ワーストレベルの貧困率経済の弱さ:生活保護受給率では、札幌市は政令市2番目、釧路市、函館市は中核市の中で抜きんでて受給率が高い)

  • 魅力的な素材があるのにもかかわらず、道内企業がそれを最大限活用できず、結局道外の企業にばかり利用され、北海道に与えられる経済的恩恵が少ない(経済の弱さ

  • 基幹産業の少なさ、北海道最大都市の札幌でさえこれといった産業がなく、平均所得が低い(経済の弱さ

  • 札幌圏独り勝ちの北海道経済、財政破綻の夕張、毎年のように消えていくローカル線、札幌市の人口減少も始まった(経済の弱さ

  • 北海道民の交通マナーの悪さ、交通事故死亡者数全国ワースト5の常連北海道のガラパゴス文化

  • 全国の主要な政令市の中では唯一新幹線のない札幌市、道外との結びつきが弱く、北海道のガラパゴス化が促進(北海道のガラパゴス文化

  • 全国トップの喫煙率の高さ、分煙・禁煙志向、喫煙マナーの遅れ(北海道のガラパゴス文化

  • 道民女性の特殊性、喫煙率は全国トップ、離婚率も高い、男勝りの性格、一方で男女格差は未だ深刻(北海道のガラパゴス文化

  • ジェンダーギャップ指数が47都道府県でも特に低い、上智大教授らの分析によれば、2024年は行政・経済・教育の3分野で全国最下位北海道のガラパゴス文化

ざっとまとめてみるとこんな感じだ。
カテゴリー別に見ると、「負の歴史」「経済の弱さ」「北海道(道民)のガラパゴス文化(特殊性)」の3つに大別される。
北海道の暗部というのは、だいたい以上の3つのカテゴリーに入ってくるのではないだろうか。
「負の歴史」については、既に起きたことだからどうしようもないだろうと思う人もいるかもしれない。
確かにその通りだが、歴史を正しく伝え、北海道(蝦夷地)でかつてどのようなことがあったのかを、道民だけでなく道外の国民にも広く知ってもらう機会を増やしていくことが必要だろう。
ソ連による太平洋戦争末期の千島、樺太、北方領土への侵略についても、戦争の悲惨さを伝えるために、後世に渡って伝えていかなければならない。

これらの他にも、旭川市の女子生徒に対するいじめ事件、札幌すすきのの首切り殺人など、センセーショナルな事件が比較的多いという点も入れようかと思ったが、北海道は人口は一応そこそこある(約500万人)ため、これくらい人がいたら少しは凄惨な事件があっても仕方がない部分があるため、今回は盛り込まなかった。
あとは、道民の「モラル」、具体的に言えば「法やルールを破る抵抗が少ない」点も指摘したいと思ってはいるのだが、そんな側面を持つ道民が多数派を占めているのかどうかは未だ判然としないため、ここには入れなかった。

また、右寄りの人たちは北海道のことを、「赤い大地」と揶揄することがある。北海道には左翼が多いかららしいが、北海道で革新系政党が強かったのは昔のことで、今はそれほど強くはない。
その証拠に、現在の北海道知事自民党が推薦した人だし、国政選挙の結果を見ても、野党系政党の議席数だけが圧倒しているわけではない。
排外主義的な人が引き合いに出す、「中国に侵略される北海道」イメージについても、確かに中国系企業が進出している地域があることは否定できないが、これだけを以て「侵略」と見なすのは難しいだろう。

「冬の厳しい気候」、「中国に支配される北海道」というイメージは、どちらも分かりやすいストーリーが構築されていて、内実を知らない人でも理解した「気になって」しまえるから、ここまで浸透してしまったのだろう。

実際は全然違うのだが、これは北海道と道外両方に住んだことのある人にしか分かるまい。
前述の北海道の暗部についても、北海道と道外両方で生活したことのある人であれば、だいたいピンとくるのではないかと思う。

北海道の良いところは色んなところでいくらでも紹介されているので、私のような人間が敢えて悪い部分をさらけ出すことによって、北海道の内実を示すとともに、北海道という地域をより魅力的なところにするために貢献できればと思う。

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