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文学フリマがライターの原動力になった話

ライターの仕事は文章を書くことではなく、文章を通して人の心を動かすことだと思っている。疑問点を解決して安心させる、商品やサービスを解説して購入したいという気持ちを刺激する…人の心を動かせば数字が動く。PVやお金に結果があらわれる。
しかし数字は見られても、文章を読んだ人の心自体を見ることはできない。結果は大事だが、数字でしかない。実際に読んだ相手が自分の文章を通して何を思っているのか。そもそも文章が本当に届いているのか。普段はWebで文章を書いているので、本当に自分の文章が人に届いている実感を持てなかった。公開されているのだから誰かが読んでいるのは頭で理解できるのだが、もしかしたらこの文章は虚空に向けて書かれているのではないかと時々不安に駆られた。
届いている実感がないまま文章を書くのは、地に足がつかないような心地がした。

昨年、初めて文学フリマに参加した。仕事というより趣味の延長で、本を好きだから自分でも作ってみようという思い付きだった。一般参加もしたことがなく雰囲気もわからなかったので、とりあえず30冊ほど印刷して出展に臨んだ。誰も来なかったらどうしようかと不安だった。
イベントのいいところは、直接読者と会える点だ。Web媒体では、もし自分の文章を読んでもらえたとしても読者と直接会う機会はない。イベントでは実際に読者と会い、自分の作品を手に会話できる。
自分の書いた文章が人に届く。そして受け取った相手がそれぞれに思いを巡らせる。相手の存在を認識してから、やっと虚空ではなく人に向けて文章を書いている実感がわいた。
趣味として参加した文学フリマだったが、結果として作品だけではなく文章を書く行為全てに対して変化をもたらしてくれた。
ブログやWebコンテンツを書く際、ターゲットを考えてはいたものの、その像にはもやがかかっていた。文学フリマに出てから読者との関わりを通して、ターゲットを具体的に浮かべながら書けるようになった。本や画面の向こうには、生きた人が必ずいるのだ。
漫然と書くのではなく、誰かに届ける。コンピューターではなく、実体を持った人に対してメッセージを伝える。書きながら意識が変わったのを実感するようになった。
普段在宅で働いていると、いくら気を付けていても他者の存在をイメージしづらくなってしまう。文学フリマを通して書き手、読み手との接点ができるのはありがたいと思っている。

今回もより多くの人に作品が届けたい。そして前回来てくれた方にも、続巻を手に取ってもらえたら嬉しい。
当日、読者に会えるのを今から楽しみにしている。


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