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親なのに怒らんの?

 自分のアカウント名に偉そうに"教育家"とつけている僕は、オンラインで小さな学習教室を運営している。授業スタイルは個別指導。難しいテキストの内容をどんどん詰め込む進学塾ではなく、自分の力で丁寧にじっくりと問題と向き合える子どもたちを育てるための教室だ。1つ1つゆっくりと、できなくても失敗しても、絶対に子どもを咎めることはない。
 オンラインというスタイルなので、子どもたちは日本だけでなく世界の各地から授業に参加してくれている。オーストラリア、グアム、マレーシア、香港など…文化も家族構成も生活習慣もバラバラなので毎週の授業がとても楽しい。
 今日はそんな中の1人「Lちゃん」という小学1年生の女の子とのエピソードを紹介したい。

 生まれて間もないときにお父さんの仕事の都合で上海へと引っ越しし、それ以来上海と東京を行ったり来たりする生活をしているLちゃん。普段は上海のインターナショナルスクールに通っているそうで、英語は堪能。だけど日本語の理解度は年長さんくらい。ご両親はとっても教育熱心な方で、小さい頃からピアノ教室やピグマリオン幼児教室(算数教室)に通い、お家でも公文の教材をたくさん解いてきたようだ。
 そんな彼女はいつもニコニコしているけど、ちょっと恥ずかしがりな性格。入会当初は自分からお話ししてくれることは少なかったが、3ヶ月が経った今ではお家での出来事や習い事、お友だちとのことをお話してくれたり、僕にもたくさん質問してくれるようになった。素直で可愛らしい普通の女の子だ。

 ある日彼女は、僕がしている左手薬指の指輪に気づいたようだ。

L「コーチ、結婚してるん?」
僕「うん、してるよ〜」
L「そうなん。子どもいる?」
僕「ううん、いないね〜」
L「なんで結婚してるのに子どもおらんの?」
僕「うーんなんでだろうね〜……でも、トレス(僕の教室)の子たちみんなのことを子どもだと思ってるよ。みんなかわいいよ」
L「じゃあ親ってこと?」
僕「そうだね、気持ちではLちゃんも僕の子どもの一人だね。」

L「…親なのに怒らんの?」


 この言葉にハッとした。この子の中では「親 = 怒る」というイメージがついてしまっているんだろう。どれくらい怒られれば、こんなに結びついてしまうんだろう。わざといたずらをしたり、意地悪をしたりする子では決してない。じゃあこの子は普段どんなことで怒られているんだろう。

 新型コロナの影響で、彼女が通うインターナショナルスクールも休校になり、兄弟姉妹のいない彼女は家で数ヶ月間お母さんと二人きりだったそうだ。教育に熱心なお母さんは「学校の勉強に遅れないように、今のうちに予習復習を徹底する!」と意気込んで、かなりの量の勉強(という名の単純作業)をさせてしまったと後から聞いた。
 もしかするとその中で、Lちゃんはたくさん怒られたのかもしれない。

 「どうしてこんなのもわからないの!」
 「はやく○○しなさい!」
 「これが終わるまで○○はしちゃダメだからね!」

 

 教育の専門家という立場から言わせてもらうと、特に小学校低学年までの子どもにはできるだけ怒らないでいただきたい。なぜなら怒る行為の理由のほとんどは自分(親)の都合によるものであり、子どもの中には"怒られた理由"ではなく"怒られた体験"だけが強く残るからだ。
 小学生は悪意をもって何か行為をすることは基本的にはない。だから怒るのではなく、どうしてダメだったのか、何がよくなかったのかを、感情を抑えて丁寧に伝える"指導"をしていただきたい。

 先週読んだ「ピクサー流 創造するちから〜小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法〜」という本の中に

失敗をするのは、何かに挑戦をしたから。だから早めに失敗し、それを乗り越えて成長につなげられることを学ぶことが、創造するちからを伸ばす上でも大切だ。

ということが書いてあった。

 ただ「怒っちゃいけないということ、分かってはいるけれど…それでも怒ってしまう」という保護者様も多いと思う。そんなときには『アンガーマネジメントの6秒ルール』という言葉を覚えておいてほしい。なんでも怒りのピークは6秒間らしく、それをすぎると幾分か落ち着くことができるそうだ。
 子どもに対して怒りそうになったら、ゆっくり心の中で6秒を数えて対応する。これだけでも"怒り"から"指導"に変えられるかもしれない。

 最後になりますが、僕の夢である「全ての子どもたちを高度な思考力をもつ天才にする」を叶えるために未来の学習教室トレスというYouTubeチャンネルを始めました。
 子どもたちは生まれながらに天才です。あとはその豊かな力を削ぎ落とさずに伸ばすだけで良いんです。そのためのヒントになるような教育バラエティ動画を今後もアップしていきますので、お時間あるときにのぞいていただけると幸いです。


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考えることが好きになれば、算数も国語もぜんぶ好きになる。すべての子どもたちに学ぶ楽しさを感じてもらうべく奮闘中。TRES代表。