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スタートアップネイション・イスラエル人の考えていること…計画を立てる

こんにちは、イスラエル在住のアザルです。
イスラエル人と日本人と一緒にビジネスを進めているときに、「計画」に対する価値観の違いを感じることが多々あります。もっと言うとビジネスだけでなく、日常の生活の中でも「どうしてイスラエル人はもっと計画を立てて進めないのだろう…」と思うことがあるので、これはもう、ビジネス慣習というよりも、文化的な価値観の違いなのでしょう。
しかも、個人的な感覚ですけれど、イスラエル人って割とどうでもいいことには結構綿密な計画を立てるのに、重要なこと対してはしっかりした計画を立てない…そんな気がします。
正直言って、計画がしっかり立っていない中で重要な物事を進めるのは、日本人の私にとっては、チャレンジの度合いが大きいのです。
「イスラエル人ってどうしてそうなの?」そんな質問をイスラエル人の友人にぶつけてみました。驚くべき彼の回答とは?

「ダーウィンの進化論によると、最後まで生き残る種が何だか知ってるかい?」
出たわ。質問に、質問で返すイスラエル人。「さ、さあ…、なんでしょうね。」としか言えない私。

「最後まで生き残る種というのは、大きいものでも、強いものでも、速いものでもない。どんな環境にも適応できる“順応性のあるもの”なんだよ。」
「重要な要件には、柔軟性、適応性、順応性を持たせなくてはいけない。計画というのは、結果を導くためにあるんだ。導き出すべき結果がしっかり決まっていて、そこにたどり着けるのならば、計画そのものはそれほど重要ではない。みっちりといつまでも計画を立てている時間が無駄なんだよ。」

ムムム…。確かに…。日本の会社にいたわ。何かがちょっと変更する度に、綿密な計画表をエクセルで作り直して部下に行先を示してくれた中間管理職。彼は優しい人だったけれど、「どこにそんな時間があるんだろう、暇なら、計画が変わるたびに右往左往している私たちを、ちょっとは手伝ってほしい」と何度思ったことか…。

「それに、イスラエルでは、一歩進むと思いもかけないことが待っていたりするからね。計画の提出よりも結果の提出が重要という土壌がある。軍隊なんかが特にそうだね。日本でも最近話題になっているらしい8200部隊なんて、まさしくそれだ。目的、予算、期限、これだけ渡されてGo!だ。ゆっくり綿密な計画を立てている暇はないね。そんなことをしている間に、前提そのものが次々変わってしまうのだから、それをやる時間だけでなく、意味もない。計画は綿密で、完璧であればあるほど、順応性と時間を失うものなんだ。」

「でも、それはあまりに極端に過ぎるのじゃない?個人プレーでそれをやるなら勝手だけど、いくつかの組織が共に同じ目標に進むためには、ある程度の計画も必要でしょ。」

「それはもちろんイスラエル人だってわかっているさ。でも、そういう土壌だ、という話だよ。だから、日本人から見れば、イスラエル人は重要なことにしっかりした計画を立てない、という風に映るのだろう。
でも、逆にイスラエル人から見れば、日本人は計画にばかりこだわってどうして前に進まないのだろう、と映る時があるよ。やってみなければわからないだろう、と言いたくなることもある。」

まあ、確かに…。一理あるともいえるわね。でもこれは、綿密な計画を立てそれに寸分たがわずに物事を進めていくことを良しとする日本の社会では、受け入れられないだろうなあ…。
「そういう土壌である」…と。考え方くらいは頭の片隅に入れておくことにしよう。

最後に、イスラエルは人口の75%がユダヤ人と言われますが、アラブ人も25%近くいて、その中ではイスラム教徒が多数派です。そして、イスラエルにあるアラブ人の街は、学校も公館庁もイスラム歴で物事が進んでいます。イスラム教の祝祭日は月の満ち欠けを見ながら決められているので、「犠牲祭は水曜日か木曜日あたりになるだろう。」そんな感じが現在でもまかり通っているのです。イスラム教の祝日が近づけば、例えば、「今週の水曜日は仕事がお休みになるかもしれないし、ならないかもしれない。」
会社単位、地域単位、イスラム教国では国単位でこんな調子なのです。

これを見た日本人は言いました。「国の休日がこんな風に決まるなんて!日本人にはとてもじゃないけど真似できない“技”だわね。」
日本の通勤ラッシュをぶつかり合うことなくヒョイヒョイと通り過ぎる人々を見ていると、それはそれで「技」だと思いますが、国家の休日が直前に決まり、社会がそれについていけるのもまた「技」…。

「順応性のあるものが生き残る。」ダーウィンさんの言葉をしっかり胸に刻んでおきますね。

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