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今年読んだ本三選 一選目

今年読んだ本三選-その①-


気づけば2023年も残すところあとわずかとなりました。今年は出版社で書評のお仕事をさせて頂いたりと仕事上でも読書する機会が多かったのですが、個人的に読んで爆裂に良かった!の三選を残しておこうかな、と。
※ひとつにつき一記事であげます。宜しくお願いします。


私が好む本

基本的に私は、ババアが書いた文章がとても好みです(言い方w)
若い人間には描けない生きて重ねた知恵と経験がある事、その他は子供を持たなかった生もあれど、多くは子供を育ててきてご苦労も持ち、何よりも人を育てるというコーチング要素もお持ちなので大変勉強になる、と言ったところ。
同じ女性でありながら何かを守りながら生き抜く・掴み取る等は、読んでいてどの冒険の書や自己啓発本よりもタメになり、温かいので、大好きです。

昨年の暮れ、2022年の12月6日に刊行された牧はる子さんの『シュークリームとひじき』 こちらを今年個人的に読んだ書籍の一冊に推薦したい!!


『シュークリームとひじき』について

この本をお書きになった牧はる子さんですが、なんと御年88歳!
あの「洋菓子のヒロタ」の次女として生を受けられてから、右も左もわからぬまま、パリで「フランス・ヒロタ」をご経営。その傍らで、ご自身のお店である総菜屋の「おかめ」もパリに開店。経営を御引退なさってからはパリの日本俳句会を背負う「紫木蘭」の主宰でもあります。

何がすごいってね。子供を儲けてそんなに月日もたたないうちに、右も左もわからないような場所に行けと言われていってしまうところがすごい!!何かを足手まといだと感じない、むしろ逆になんでも強みであるとして捉えられるその強さ。

右も左もわからないような場所、一人で行くにも躊躇して然るべきな場面ですよ。そこにぱーんと行ってしまえる、なんとかなるし、やる以上は成す!の逞しさに、読んでいると、あぁ!私もきちんとすべき!!と謝りたくなります。

この世に生まれついてから経営を引退するまでの全てがこの一冊に綴られており、時には心を鬼にせねばならなかった時もあっただろうに、赦しと応援のある一冊で、読んでいて、本当に本当に拍手したくなりました!

女性にしかわからない部分が多いのでは……そんな事はありません!
ある面からみると経営するという事の神髄を説いており、ある面からみると人を育てる部分があり、ある面からみると知らない街で模索する旅行と冒険の書でもあり、ある面からみると……と多方向をカバーしているこの一冊、読んで頂いて損はないです。

先代が経営においてどのように考えていたか、自分が家族の中でどのように愛されてきたか、自分の従業員や子供をどのように愛したか、が美しい感性で描かれており、さぞ嬉しい瞬間だっただろうな、や、とても寂しかっただろうな、とやたらと人の感情を揺さぶってくるという!恐ろしい婆さんだな!と、読んでいてワクワクしっぱなしで御座いました。

読みどころ

本の中でお孫さんに向けた一説があります。これがこの本の伝えたい一番の事だろうと思ったので引用しておきますね。


「おばあちゃんは大学で歴史を専攻したので、あなたたちが勉強したようなビジネスやらマネジメント、マーケティングやら経営学といった分野とは、まったく縁なく過ごしましたよ。
 私は大学を出たあと結婚して、あなたのお母さんを産み、育てた。そうして専業主婦になって何年もたっていたから、突然、フランスに来て会社を経営する立場に立たされることになった。『棚おろし』も『決算』という言葉もなにも知らなかったズブの素人だったけれど、人生の多くの時間を経営という事業に費やして今にいたっているのよ。成功談もあれば、失敗談もあるの。
 だから、いま実世界に一歩踏み出したあなたたちに、祖母の私が一番身近な反面教師として自分の経験を語るのもそれなりの面白みがあるのでは、と思うのよ。
 別に『教訓』とか『ノウハウ』なんて偉そうな話をするつもりはないので、正座して聞かなくていいわよ。そう、仕事で悩んだりしたとき、お菓子でもほおばりながら『おばあちゃんもアホやなぁ』と読んで笑って、そして元気になってくれればそれで結構よ』

牧はる子『シュークリームとひじき』より

その後の章では

もし、運命の女神が両方のチャンスを与えてくれたなら、どちらが大事か、なんて考えなくていい、迷わずよき経営者、よき母親になりなさい。カクカク四角くても、ふっくら美味しいカステラのようにね。あなた達も大好きでしょう!

と力強く結ばれている章があります。こうだから出来ない、ああだから先延ばしにしている、なんて出来ない言い訳を考えている暇があったらやるべきだ!と心を奮い立たせてくれる、元気になれる一冊でもありました。

先代が経営について大切なのは"三惚れ"と述べられており、以下の三つに惚れ込むことができれば、商売人は成功する
『自分の仕事』『店の立地(構えている街)』『自分の女房』

と仰った部分等は、商売について・経営について、考え直すべき場所に立たされている人には響くのではないかしら……だって商売って、自分以外の人がいて初めて成り立つものでもあるし、それには小さな感謝や、身の回りを大切に扱う事から始まるから。。現代人は忙しさのあまり、その忙しさを他人責任論にしがちな部分がありますね。そんな簡単に物事が運ぶなら誰も店は潰さないし苦労しねぇよ!と考えがちですが、多くは自分自身の運び方にもあります。。商売を営む上で、絶対に忘れてはならない事もあります。

それは
「お金に足が生えているわけではなく、経済は人が回すもの」
という事です。いつも人の好いAさんの店と、性根悪のBさんの店、同じものを同じ価格で売っていたとしたら、どちらで買いたいですか?
当然、Aさんでしょう。そういう事ですw

自分の経営がうまくいかない時にも是非、立ち返って読んでみて頂きたい!
必ず役に立ちます!

その他、この本の読みどころは、どこを開いても、どこからでも読めるオムニバス形式になっているのですが、桃の章では「えー!」と驚く方も登場します。学生時代のストッキングと靴下の話や、謎の病に侵された話なども大変読み応えがあります。

おわりに

以上、2023年に読んだこの本!三選の一冊にランクイン!!
とても面白く愛のある一冊だったので、是非とも、おススメ致します♡
元気のない時、何しても無駄なんじゃないかと思える時、そんな時は牧さんの一言が励みになります。2024年は明るく迎えたい、そんなあなたへ。

シュークリームとひじき/牧はる子

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