『半沢直樹』や『下町ロケット』シリーズ作品はあるけれど、『民王』の続編が出るとは思っていませんでした。他の池井戸作品と比べると荒唐無稽で、ハチャメチャ感が半端ないお話なので…。

『民王』は政治をテーマにしていて、前作では総理大臣の武藤泰山と大学生の息子の翔が入れ替わって大変なことになっていましたが、新作『民王 シベリアの陰謀』はどうなんだろうと。今回も大変には大変でしたね。

謎のウィルスにてんやわんや

武藤内閣の目玉といえる女性の閣僚が謎のウイルスに感染したところから、物語はスタートします。なんか現実世界とリンクする所が怖いです。ただ、現実とはウイルスの種類は違うみたいですが。父がパニックになっている間に、息子の翔も感染してしまいました。翔ちゃんは無事に大学を卒業して就職したての新社会人です。

泰山はなんとかウイルス拡大を防ごうと必死になりますが、なかなかうまくいきません。翔ちゃんもウイルスの原因を必死で突き止めようとします。いずこもパンデミックですよ。しかし現実よりも泰山がまともに見えるのは気のせいですかね？

民衆は陰謀論を信じる

政治とともにテーマになっているのが「陰謀論」です。現実社会でも色々な説が流れていてそれを信じる人がいるみたいですが…。総理大臣である泰山は、何とかしようと手を打とうとします。陰謀論を信じている国民の政治不信を招く結果に。

展開が日本というよりは、海外のあれこれに近い感じで。それでも泰山は手立てを考えようとするし、国民と対話しようと必死になります。自分の支持率云々よりもパンデミックを防ぎたいという思いだけが、文中から伝わってきます。

なぜ、市中にウイルスが蔓延したのか、その理由が分かった時は背筋が凍りつくような恐怖も感じられました。

政治家の家族の物語

『民王』は、総理大臣武藤泰山と息子の翔を中心に描いた物語です。翔は社会人になっても相変わらずですが…。泰山って入れ替わらないと普通だなと。

今回存在感があったのが泰山の妻で翔の母親の綾。前作ではあまり印象に残ってないんですけど。いい味だしていました。

池井戸作品ってあまり出番はありませんが、半沢の花ちゃんとか奥さんの存在が大きいような気がします。

政治やパンデミックをテーマにしつつ、家族の物語を読みました。まぁ、ふざけすぎという気もしないわけではないけれど。