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クリスマス、おめでとう

もう亡くなった
わたしのおじいちゃんおばあちゃんには、
3人の娘がいた。

そのうちのひとりが
わたしの母だ。


毎年
クリスマスになると、
おじいちゃんおばあちゃんは
3人の娘たちとその家族を集めて
クリスマス会を開いた。

おじいちゃんおばあちゃんや
いとこに会えて
ご馳走やケーキが振る舞われる
クリスマス会は、
小さな頃から
わたしの楽しみだった。


おじいちゃんおばあちゃんは
クリスチャンだったので、
クリスマス会は
まず
賛美歌を歌うことで始まる。

そのあとで
おじいちゃんが聖書を読む。


人口調査のために
里帰りをしようとしていた途中で
マリアが赤ちゃんを産んで
飼い葉桶に寝かせた

という箇所なのだが、
聖書は非常に淡々としていて、
クリスマスのキラキラ感も
おめでたそうな感じも
何もない。

その淡々とした箇所を
メガネをかけたおじいちゃんが
静かに淡々と
読む。

そして
おじいちゃんが
聖書を読み終えたら、
みんなで主の祈りを唱える。
アーメン
って言ったあとに、
おじいちゃんが
静かに
「クリスマス、おめでとう」
と宣言し、
みんなでおめでとうおめでとうと言い合う。

そのあと
みんなで食事をし、
プレゼントのやりとりなどが行われた。

小さな頃は、
クリスマスって一大イベントなのに
聖書はこんなにテンション低くて
静かにおめでとうって言ったりして、
なんか地味だなーー
なんて思っていたが、
今になってみると
この
おじいちゃんが静かに聖書を読む声こそが
わたしにとってのクリスマス
なのかもしれないと思う。


そうして今年も
わたしの母を含む3人の娘たちが
親戚一同を集めて
クリスマス会を開いた。

おじいちゃんおばあちゃんの
ひ孫たちまで含め、
総勢20数人が集まった。

みんなで賛美歌を歌い、
クリスチャンである叔母が聖書を読み、
みんなで主の祈りを唱えて
そして
静かに
「クリスマス、おめでとう」
と言い合う。

おじいちゃんおばあちゃんの姿はないが、
ふたりが
すみっこで静かに見守っているような
そんな気配を感じる。

生い立ちで非常に苦労したおじいちゃんが、
人生を通じて
家族のつながりを大事にしてきた、
その気持ちが
伝わってくる。

大好きなおじいちゃんおばあちゃん、
今年もみんな元気に集まったよ。
クリスマス、おめでとう。


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