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古代オホーツク文化の集落: 網走市郷土博物館分館 モヨロ貝塚館


館の所在地域

 モヨロ貝塚館は、北海道オホーツク総合振興局管内の網走市に位置します。
 網走市は、能取岬南東の内湾した場所に位置し、冬季の激しい北西風を避けるのに適した地形を有します。内陸部は森林や農村地帯が広がり、市域は「網走国定公園」の一部に指定されています。オホーツク文化期を中心に、縄文・続縄文・擦文・アイヌ各文化期に渡り、人類が生活した集落の痕跡が市内各地に残されているのも特徴です。
 現在、網走市は水産業が盛んで、すり身発祥の地としても知られています。また、故高倉健さん主演の映画『網走番外地』の舞台にもなった旧網走監獄や冬季の流氷観察等、観光でも人気の地となっています。

館の沿革

 同館は、昭和40年、網走市郷土博物館の分館として開館した遺跡博物館です。モヨロ貝塚の保存事業は、大正期の米村喜男衛による調査研究に端を発します。戦後、昭和20年代に行われた大規模な発掘調査の結果、遺跡保護への機運が高まったことが当館設立のきっかけとなりました。
 館内の展示は、これまでの調査研究により明らかにされたモヨロ人の暮らしが「住居」「墓」「貝塚」のテーマ毎に紹介されており、主にモヨロ貝塚より出土した遺物が展示されている他、映像・ハンズオン展示も取り入れられています。1階の墓域展示室では、モヨロ人の墓地が露出展示されており、遺跡の様子を間近で観察することが可能となっています。

館の概要

 同館は、国指定史跡「モヨロ貝塚」を核とします。モヨロ貝塚は、約2haに及ぶオホーツク文化期の集落遺跡であり、住居跡・墓・貝塚の三部分により構成されています。「モヨロ(最寄)」の地名は、アイヌ語の「モイ(湾)・オロ(内側)」が訛ったものです。オホーツク文化は同時期の北海道の文化としても極めて独特のものですが、その存在が明らかとなったのはモヨロ貝塚の調査研究によります。我が国の考古学史にとって、極めて重要な価値を有する遺跡であるといえるでしょう。
 域内には、史跡を一周する園路が設けられており、大きな窪地と化して残されている竪穴式住居跡の間を縫う様に散策することが可能となっています。中でも、昭和35年に建設された復元住居は、オホーツク文化の末裔として知られるニブヒ族の住居を再現したもので、民族資料としても貴重な存在となっています。また、遺跡にはハルニレ・エゾイタヤ等の樹木が生い茂り、風致林の指定も受けています。

施設情報

館名: モヨロ貝塚館 (Moyoro Shell Mound Museum)
住所: 〒093-0051 北海道網走市北1条東2丁目
URL: http://moyoro.jp/
公共交通機関: 網走バス・網走観光交通 モヨロ入口停留所より徒歩約5分
        JR網走駅より徒歩約25分
※訪問の際は最新の情報をお調べの上お出かけください。

参考文献

辻󠄀 博仁「モヨロ貝塚館」(國學院大學博物館学研究室編『野外博物館事典 平成30年度中間報告』國學院大學博物館学研究室、平成31年、7頁)

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