以前掲載したブログでも取り上げたが今般同様の事例が報道記事に掲載されたので再度取り上げる。民法の教材には良い事案の報道記事です。

やさしい法律講座ⅴ5　副題　物の占有と所有｜tsukasa_tamura｜note

やさしい法律講座ⅴ37　副題　他人の占有物等に係る自己の財物（刑242条）の保護法益｜tsukasa_tamura｜note

　　　　　　　　　　皇紀2682年6月11日
　　　　　　　　　　さいたま市桜区
　　　　　　　　　　政治・法律・金融研究者　田村　司

はじめに

ごみ集積所に出されたごみを持ち帰った場合は罪に問われるのでしょうか？
窃盗罪に問われる可能性もあります。

民法239条（無主物の帰属）か

「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。２所有者のない不動産は国庫に帰属する。」

無主物とは所有者のいないものをいう。さらに、ごみ集積所に捨ててあるごみは「所有者のない動産」に当たるため、所有の意思を持って占有（持ち帰る）することで「所有権を取得する」ということになる。。

つまり、上記の第 239 条第１項では捨ててあるごみ（所有権放棄）には所有権がなく、別の人が持ち帰ったとしても窃盗罪には問われないということになります。
「ご自由にお持ち帰り下さい」の表示があれば、確定的です。

ただ、問題は資源ごみを自治体の財源にしている場合である。

「持ち去り禁止」は無断で持ち去ると「窃盗罪」に問われる可能性がある。

東京都世田谷区では「世田谷区清掃・リサイクル条例」を定め、区内の数十業者でつくる組合の加盟業者以外のものが古紙を無断で持ち去ることを禁止しています。対象となるのは区が定める集積所で、20万円以下の罰金が科される。自治体によっては住民が回収日に出した古紙やアルミ缶などを売却して財源に充てている。

ほかに「持ち去り禁止」と書いてあるものを無断で持ち去ると「窃盗罪」に問われる可能性がある。

夫のぼろバックを妻がごみ収集に出した事例がある。
しかし、そのバックの中に現金数百万円が入っていあ。その場合は「ごみ」とはみなされない。つまり、バッグ内の紙幣は捨てる意思がなかった（中に入れているのを忘れて捨ててしまった）と解釈される。それのバッグの中の紙幣は「遺失物」として扱われる。遺失物法では遺失物を拾った人はすぐに警察に届け出る義務がある。届け出を怠ると「遺失物横領」に問われる可能性がある。

要約するとこのような行為（ネコババ）は遺失物横領の罪に問われる可能性がある。

口頭注意１１９６回受けたがやめない例も…アルミ缶持ち去り頻発、高値で換金狙いか

読売新聞 2022/06/09 08:15

　家庭ごみの集積所から、アルミニウムの空き缶が換金目的で持ち去られるケースが頻発している。中国の減産やウクライナ情勢の影響でアルミ価格が高騰しているからだ。持ち去られると自治体は収入減となり、見回りなどで警戒を強めるが、対策は決定打に欠ける。（林尭志）

■荷台に囲い

　５月２３日夜、福岡市の住宅街にあるマンションのごみ集積所に１台の軽トラックが横付けした。運転席から降りた男は、集積所から空き缶の入ったごみ袋を持ち出し、高い板で囲った荷台に投げ入れた。

　「今、何をしていましたか」。市の委託を受けた警備員が男に声をかけた。「ガラスを捨てに来た」とはぐらかす男に一部始終を見ていたことを伝えた。「近頃仕事がなくて……」。男は持ち去りを認めたが、そのまま走り去った。

　アルミ缶など資源ごみは、自治体が再生事業者に売却し、歳入に繰り入れる。福岡市では２０２０年度にアルミだけで約５９００万円の売却益があった。

　だが、この数年で集積所からアルミ缶が持ち去られたとみられるケースが急増した。福岡市で持ち去りを目撃するなどした市民からの苦情は２１年度に１００件と、前年度の約２・６倍に増えた。那覇市では２１年度、持ち去り行為に対して行った指導件数が、過去最多の８６２件に上った。

■「価格倍増」

　背景にあるのがアルミを巡る世界情勢の変化だ。

　アルミ缶リサイクル協会（東京）によると、有数のアルミ生産国の中国が近年、二酸化炭素削減の必要から、電力消費の多いアルミ精錬を抑制。供給への不安から取引価格が押し上げられた。そこに、ウクライナ侵攻でロシアからのアルミ輸入を控える動きが重なり、高騰に拍車をかけた。ロンドン金属取引所（ＬＭＥ）の３か月先物価格は昨年１月、１トンあたり２０００ドル前後だったが、今年３月７日に３９６６ドル（当時の為替レートで約４５万円）と、史上最高値を更新。その後、いったん落ち着いた後も侵攻開始直前と同等の高値水準にある。

　軽く丈夫なアルミの需要は高い。さらに飲料缶には高純度のアルミが用いられるため、再生アルミの原料に重宝される。福岡県で金属の買い取りをする業者は「缶で１キロ１７０円と、１年で２倍に上がった。持ち込む個人も増えた」と話す。

■条例で対応

　集積所に出されたごみは一般に、所有者のない「無主物」だ。持ち去りを防ぐには、自治体が条例で指定業者以外が収集するのを禁じる必要がある。

　福岡市は１４年に施行した改正条例で、悪質な持ち去り行為者に５万円以下の過料を科すが、適用例はない。短時間で持ち去られる上、トラックの荷台を板で囲って積み荷を見づらくするなど巧妙化しているためだ。

　他の自治体でも持ち去り防止は喫緊の課題だ。熊本市は警戒に当たる警察ＯＢを２１年度から２倍の８人に増員。持ち去りを繰り返す人物の氏名をホームページで公開するなど厳しい姿勢で臨む。

　ある中国籍の男は口頭注意を１１９６回、警告文書の交付を２回、禁止命令書の交付を３回受けても持ち去りをやめなかったという。市は０８～２１年度に、この男を含む特に悪質な１０件を市条例違反の疑いで刑事告発し、いずれも県警に摘発された。

　ただ、多くの集積所に目を光らせるには限界がある。警備員を突き飛ばし、車を急発進させて逃げる者もいて、警戒には危険も伴う。また、買い手がいる限り、持ち去りをなくすのは難しい。九州地方の買い取り業者は取材に「売り主の身分証は確認するが、持ち去りの缶かどうかまで確かめようがない」と答えた。

■ホームレスの収入源、規制に二の足も

　アルミ缶の換金はホームレスら生活困窮者の収入源でもあった。そのため、条例で持ち去りを規制することに消極的な自治体もある。

　大阪市は、２０１７年施行の改正条例で古紙や衣類の持ち去りを禁止したが、空き缶や瓶は対象外だ。厚生労働省によると、市内のホームレスは９２３人（今年１月現在）と全国最多。市の担当者は「空き缶収集を自立の手段とする人は少なくない。福祉の観点から、規制は慎重にならざるを得ない」と説明する。

　川崎市も同様に規制を見合わせてきたが、近年は車で大量に持ち去るケースもあり、４月に持ち去りを禁じる改正条例が施行された。一方、ごみ集積所の管理者の承諾を得て持ち出す場合は対象外とするなど、ホームレスらへの配慮も残した。

　ホームレス問題に詳しい日本福祉大の山田壮志郎教授（社会福祉学）は「行政は、やむなく空き缶収集をする事情も理解し、それに代わる仕事の確保など対策を考えるべきだ」と話す。

My  Opinion.

「白河の清きに魚もすみかねて　もとの濁りの田沼こひしき」という狂歌がある。社会には色々な環境で生計を立てている人がいる。

吾輩も幼少のころ小遣い欲しさで道端の空き缶を拾い集めて金属収集業者に持っていき小銭と替えていた。生活困窮者には唯一の収入源であることがある。次の壱圓紙幣が吾輩が炎天下を汗を流しながら道端の空き缶を拾い集めて得た貴重な労働の対価である。これを見ると懐かしさで涙腺が緩む。

最近の報道ニュースを見ていると、あくどい窃盗事件が多く発生しているように感じる。「資源ごみ」回収が生活の糧であるならば、その者の収入を奪うことになり、別な犯罪を誘発している可能性も捨てきれない。文字通り「水清ければ魚棲まず」となるのである。

参考文献・参考資料

口頭注意１１９６回受けたがやめない例も…アルミ缶持ち去り頻発、高値で換金狙いか (msn.com)

やさしい法律講座ⅴ37　副題　他人の占有物等に係る自己の財物（刑242条）の保護法益｜tsukasa_tamura｜note

やさしい法律講座ⅴ5　副題　物の占有と所有｜tsukasa_tamura｜note