政治講座ⅴ1566「世界を債務の輪で繋ぐ呪縛の戦略(新植民地政策)の野望の『一帯一路』」
中国統一をした秦の始皇帝は15年の短命で終わった理由を現代の中国に準えて対比して、その相似性を以前に解説した。
「一帯一路」は元の時代の世界征服の野望を思い出す。
紆余曲折を経て滅亡するのであるが、日本には蒙古襲来としての2度の元寇がある。武力侵略は日本の武家集団と神風により蒙古を跳ねのけたのである。それは鎌倉幕府の北条執権のときである。源頼朝により滅ぼされるまでの平泉は第二の京都と言われるほど繁栄した文化圏であった。それが蒙古襲来により日本は恐怖に堕ちいたのであるが、岩手・青森の方言として方言として残っている。「あ!もうこくる!」これが悪たれをつく子供をあやす言葉である。蒙古襲来をお化けや幽霊よりも恐ろしい化身として表現していたのである。鎌倉幕府への恨みを込めた当時の民衆の反感であったろうと吾輩は独自解釈している。
翻って、「一帯一路」は現代版の中国の経済基盤に基づく世界戦略と新植民地政策と言える。中国の過剰生産物、つまり「鉄」の消費地をインフラ整備の美名のもとに、融資を餌に発展途上国を中心に事業展開しているのである。事業の採算性を度外視に事業を進める中国の「一帯一路」は、「債務の罠」と揶揄されている。しかも、技術・機材・人材・労働者などすべて中国人などで賄われて、現地には、何の潤いをもたらさないなどで現地に残った物は収益性の無いインフラ投資と多額の返済不能の債務だけである。すべて、中国の利益となっているのである。過剰債務の担保として取り上げて、その国の資源を獲得することや軍事拠点として活用している。これが「一帯一路」の正体である。世界を債務の輪で繋ぐ呪縛の戦略である。我ながら名文句であると自画自賛している。これが「中国の夢」の正体である。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2683年12月29日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
イタリア「一帯一路」離脱も、中国の主眼はすでにグローバルサウスに置かれている
一帯一路離脱の舞台裏
先進7か国(G7)のなかで唯一、「一帯一路」に参加していたイタリアが、正式に離脱を通告した。一帯一路は、習近平国家主席が2013年に提唱した、巨大な経済圏を建設する構想である。この結果、グローバルサウスと呼ばれる発展途上国や新興国との関係を強化する中国の動きに注目が集まっている。
イタリアが一帯一路への参加を決定したのは2019年3月のことだった。これは、欧州連合(EU)に懐疑的だったジュゼッペ・コンテ首相(当時)が、中国の巨額投資を足がかりに財政難を解消する狙いがあった。
これにより、自由港として知られる北東部トリエステ港の鉄道インフラと、貨物取扱量で国内有数の港である北西部ジェノバ港の整備に中国企業が参加することになった。中国はこれを「陸のシルクロード」と「海のシルクロード」を結ぶ重要な拠点と位置づけ、欧州諸国との貿易拡大を意図した。
イタリアと中国の突然の接近は、EUに警戒心を引き起こし、西側諸国との関係に影響を与えた。特に、中国との経済関係における透明性の欠如や技術流出のリスクが懸念された。さらに、米国はイタリアへの防衛分野の機密情報の提供を停止することを示唆し、国際関係における不均衡と懸念が増大した。さらに、中国の港湾整備計画が将来軍事目的に利用されるのではないかという可能性も危惧された。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で経済協力の成果は限定的だった。特に象徴的だったのは、一帯一路の目玉として計画されていたジェノバ港の拡張工事だ。大型コンテナ船に対応するための工事が始まったが、EUのコロナ復興基金が財源となっており、中国企業は参加しておらず、投資もしていない。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、中国からイタリアへの直接海外投資は、2019年の6億5000万ドルから2022年には9110万ドルに減少した。イタリア政府の統計によると、対中貿易は輸入で2019年の317億ユーロから2022年の575億ユーロに増加したが、輸出は130億ユーロから164億ユーロとわずかな伸びにとどまった。
離脱の影響と意義
こうしたなか、2022年10月に就任したジョルジャ・メローニ首相は、経済効果の乏しい一帯一路の見直しを検討し、中国の李強首相との会談で離脱の意向を非公式に伝えた。コンテ政権に代わって誕生したメローニ政権は、コンテ政権が中国企業の投資を導入することで財政難を解決するという目的を実現できなかったと非難している。
しかし、この決定についてはさまざまな意見が存在する。ジェノバ港への投資は実現しなかったものの、中国からの投資はまだ続いており、決断を下すのは時期尚早だという意見もある。コンテ政権の一帯一路参加の中心人物とされるミケーレ・ジェラーチ前イタリア経済開発省政務次官は、
「離脱にはメリットがない」
と今回の決定を批判している。離脱に対する認識も、欧州諸国と中国の間で大きく異なっている。多くの西側諸国は、イタリアの離脱を一帯一路の行き詰まりと見ている。一方、中国はそれほど重要視していない。
中国国内の報道によると、イタリア政府は一帯一路に参加しつつも、一部の中国企業に対して投資阻害行為があったとされている。
例えば、2023年6月、メローネ政権はイタリアのタイヤメーカー・ピレリに介入し、筆頭株主である中国国有の大手化学企業・中国中化集団が最高経営責任者(CEO)の指名権を得るのを阻止したと報じられた。こうした行為は、中国側の対伊投資意欲を減退させ、両国間の経済協力にも影響を及ぼしている。
日本に必要な戦略的バランス
もうひとつの側面は、イタリアだけでなく欧州そのものが
「有望な市場とは見られていない」
ことだ。現在、中国の主眼は欧州ではなく、グローバルサウスに置かれている。10月に北京で開催された第3回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムには、151か国と41の国際機関が参加した。
中国は発展途上国の経済発展とともに自らの影響力を拡大している。ウクライナ危機における対露制裁への非同調も含め、グローバルサウスにおける存在感は増しており、西側諸国の動向が世界情勢を左右する時代は終わりを告げようとしている。
日本は、こうした国際情勢の変化にどう対応するか重要な選択を迫られている。
西側諸国の一員であることのメリットは少なくなってきた。グローバルサウスとの関係強化は、日本の国際戦略に新たなチャンスをもたらすと期待される。これらの国々は急速な経済成長を遂げており、新興市場としての可能性を秘めている。
日本のこれまでの実績があれば、開発援助や経済協力を通じてこれらの国々との関係を強化し、地域の安定と繁栄に共同で貢献することができる。また、環境技術やインフラ整備での協力を深めることで、新たなビジネスチャンスを創出することもできる。
日本は国際社会における「自らの立場」を再考し、戦略的バランスを保ちつつ、積極的な国際貢献を続けるべきである。
中国の超大国化を支える構想から見える、ロシアと中国の「決定的な違い」 「一帯一路」とは何か
篠田 英朗 によるストーリー • 11 時間
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一帯一路とは何か、ロシアと中国の決定的な違い
中国が追求する世界戦略は、現在のところ「一帯一路」の概念によって説明されることが多い。
一帯一路とは、中国を起点として、アジア〜中東〜アフリカ東岸〜ヨーロッパを、陸路の「一帯」とし、海路も「一路」で結び、経済協力関係を構築するという戦略である。経済政策、インフラ、投資・貿易、金融、人的交流の5分野で、交易の拡大や経済の活性化を図ることを目指している。「一帯一路」構想は、ユーラシア大陸を貫く(中国勢力圏の)複数の帯を放射線上に伸ばすだけでなく、大陸沿岸部にも中国から伸びる海上交通路を確立することを目指している。
南下政策の伝統的なパターンを踏襲するロシアの影響力の拡張に対して、一帯一路は、ユーラシア大陸の外周部分を帯状に伝って、中国の影響力を高めていこうとする点で、異なるベクトルを持っている。ロシアのように、大洋を求めて南下しているのではない。
中国は、資源の安定的な確保や市場へのアクセスを狙って、リムランドにそって影響力を広げていこうとしている。そこで一帯一路は、シー・パワー連合の封じ込め政策と、点上においてではなく、平行線を描きながら、対峙していくことになる。
中国の「両生類」を支える一帯一路
中国は至るところで圧倒的な存在感を見せるが、それはたとえば北朝鮮をめぐる問題などにおいても顕著である。超大国・中国が後ろ盾として存在している限り、単純な米国優位のままの事態の解決も容易ではない。
類似した構造は、ミャンマーにおけるクーデターの後に成立した軍事政権にもあてはまる。事実上の中国の後ろ盾があるからこそ、シー・パワー連合の欧米諸国を中心とする諸国からの圧力にも耐えて、存続していくことができる。
なお中国は、さらにアフガニスタンや中央アジア諸国、さらにはアフリカ諸国に関しても、財政貢献や政治調停への参画に関心を持っている。特に大量の援助を投入してきたアフリカにおける影響力は、かつてないほどに大きい。そこには一帯一路に象徴される視点にしたがって、自国の影響力を広げていこうとする圏域的な発想も見られる。
結局のところ、一帯一路とは、大陸系地政学の視点に立って言えば、中国という超大国の生存圏/勢力圏/広域圏を拡大させるにあたって政策的な指針となる考え方のことである。超大国となった中国は、極めて当然かつ不可避的に、国力に応じた自らの生存圏/勢力圏/広域圏の拡大を追求していく。
英米系地政学にしたがえば、シー・パワー連合は、この中国の圏域的な発想にしたがった事実上の拡張政策を、封じ込めるための努力を払っていくことになる。
ただしそれはロシアのような典型的なランド・パワーに対する封じ込めとはまた別に、「両生類」の超大国の拡張政策に対する封じ込め政策として追求されることになるだろう。つまり一帯一路という陸と海の双方で、リムランドにそって拡張していく中国の生存圏/勢力圏/広域圏の拡張政策に対する封じ込め政策として、追求されることになるだろう。
今後は中国の人口や経済成長の伸びは鈍化していくと予測されている。しかし急速な発展で超大国の一つとみなされるようになった中国が持つ影響力の拡大は、まだ相当な潜在力を秘めている。その一帯一路の戦略が、アジア太平洋の戦略と、紛争多発ベルト地帯にまたがる形で摩擦を生み出していく傾向は、今後さらに増えていくだろう。
参考文献・参考資料
イタリア「一帯一路」離脱も、中国の主眼はすでにグローバルサウスに置かれている (msn.com)
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