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やさしい法律講座V65「他人の財物の売買契約の効力と不動産登記の公示力と公信力と第三者対抗要件」

今回は以前のブログの続編(一部解説)である。
やさしい法律講座ⅴ64「不動産の相続登記義務化」|tsukasa_tamura (note.com)
令和6年(2024年)4月1日から「相続登記の義務化」と併せて読まれたい。

     皇紀2683年6月29日
     さいたま市桜区
     法律研究者 田村 司

他人の財物の売買契約の効力

 通常の商取引では他人の財物を販売する事例がある。
商品を仕入れて販売する契約した商品はだれの物か?
 通常は仕入れてから販売して現金化するまで期間が掛かる。期間が要するために手形(有価証券)が支払われる。そして、その商品が色々な業者を流通して最終的に消費者に届けられる。流通の途中で盗難にあったら警察に被害届を出すことになる。その時にその商品の権利者であることの証明は善意の「占有」していた事実で所有権を主張できる。
それは、流通する商品はだれの物であるかの証明は占有していることにより推定力(民法188条)が働くのである。
一番わかりやすい物として、通貨・紙幣(無記名証券)であろう。通貨は売買代金として商品と交換(売買契約)されて引渡しで占有者が交代する。そのときに所有者も代わる。このように紙幣・通貨(無記名証券)の占有者からの引渡しを受けて所有者も代わのである。
紙幣・通貨を紛失・盗難の被害の場合はどうなるのか? その通貨・紙幣が流通するので甚だ証明が難しいことになる。その時の紙幣・通貨の所有者は「占有」という外観からしか判断できないので「推定する」と規定しているのである。「推定」を覆すことが出来て所有が立証できるのである。

さて、実際に経験した事例であるが、
マンションの二重売買の事例に遭遇した。
二重売買(二重譲渡)契約は有効か?
一般的に、商取引をしている商社、業者は、在庫を持たずに、別の業者の商品(他人の権利)を売買している(契約の自由の原則)。他人の権利を自分の権利のように売買しているのである。このように、両者への契約は有効であるが、当事者でない第三者に該当する者(乙、丙)間、不動産の場合は「登記」で、動産の場合は、「引渡し」がなければ、もう一方の第三者に権利の対抗ができないのである。
甲は乙に甲の物権を売却した。(契約成立)
次に甲は丙に乙の物権を甲の物権として売却した(契約成立)。これは物権変動は生じない。
そこでこの場合は民法561条(他人の権利の売買における売主の義務)「他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」
民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
「不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗できない。」
民法178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」

今回の事例では、乙と丙のどちらかが早い登記した者が相手方に権利の主張ができる(第三者対抗要件)。
甲は契約に基づく違約金(損害賠償)乙か丙に支払うことになるであろう。

公信の原則

取引の安全を保護するために、動産については、真実と異なる外観がある場合に、そのような外観を信じて、かつそう信じることに不注意(善意無過失)て取引した者を保護し、外観通りの権利を得させようとするのがこの原則である。動産に関する即時取得の制度がこの原則の最も顕著な例であり、表見代理(109条以下)しかし、不動産の取引についてはこの原則が認められていない。だから、実際はAの所有地なのにBの所有として登記されている場合、それを信じてBから買い受けても保護されず、所有権を取得できない(ただしBに対しては代金の返還、損害賠償の請求ができる)。

蛇足であるが「占有」に関係する事例。
自分の所有する自転車であっても、他人に貸した自転車を借りた人に断りもなく黙って回収すると窃盗罪になる。このように日、「所有」より「占有」に重きを置いている。
刑法242条(他人の占有等に係る自己の財物)
「自己の財物であっても、他人が占有し、・・・他人の財物とみなす。」

参考文献・参考資料

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