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ハッタリをかましてバッサリと切られて

高校入学したての頃、巷ではお笑いコンビタカアンドトシの「欧米か!」というツッコミのフレーズが大流行していた。
それに便乗するかのように私は、クラス内での自己紹介で「特技はツッコミです」とこたえたところ、一瞬にして教室中を爆笑の渦に巻き込んだ記憶がある。

だがその出来事もほんの束の間であり、ピークは一瞬にして過ぎ去ってしまったのである。

結局、私の高校生デビューはいわゆる「一発屋」のレッテルを貼られ、その後はうまくノリに乗っかることができないまま、失敗に終わってしまったのであった。

ここで言い訳をするのなら、当時の私は語彙力ボキャブラリーの無さと極度の口下手を抱えており、クラスの人たちからはまるでタカ氏のような唐突にかましてくるフリに対して、まともに対応できていなかった。

むしろ今となって考えたら、あの時の私よりも彼ら彼女らの方がうまくボケやツッコミに順応できていた気がしている。
どちらが「特技はツッコミです」という双方の意見のうち、その一つを迷わず聞き入れてくれるかは人狼ごっこよろしく既に明白であった。

話がややそれてしまったが、タカアンドトシの御二方が当時放送されていた「メレンゲの気持ち」などの番組にゲスト出演した際は、大御所の洗礼を受け続けていたのか、あまりトークが弾んでいなかったことをなんとなく覚えている。

同じ頃毎週のように放送されていた「エンタの神様」や「爆笑レッドカーペット」などのお笑い番組では、ハツラツと漫才やコントを華麗にかつ見事に立ち振る舞ってみせていた彼らも、いざアドリブ力(?)を試されている別の環境に馴染むまでは、一視聴者側からみてかなり苦労をされていたと思う。

しかしその杞憂を考えることなく、今じゃ年末恒例の特番でもある「フットンダ」を中心にこれまで数々のバラエティ番組のMCを担当するなど、その凄まじい活躍ぶりを画面越しに観ていると、ふとしたことで思わず感慨深くなってしまうのであった。


ちなみに高校デビュー失敗を喫してしまった私も、ここ最近でいろんな意味でお惚けが止まらなくなっているNさんをはじめとした職場の人間、あるいは元同僚の人たちに対して「〇〇か!」などと、負けず劣らずのツッコミを入れては自分なりに毒舌をかましている。

まれにヒートアップしすぎて無意識に息が上がって疲弊してしまうこともあるが、それはそれで悪くはない。その周りの誰かひとりでもゲラゲラと笑ってくれればいいのだ。

だから高校生の私よ。「特技はツッコミです」とあの日ハッタリをかましても、バッサリ切られて、挙句にパタリとしてしまうような人間になるんじゃないぞ。

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