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誰のため?校内研修の矛盾

 「もうすぐ研究授業…」

 職員室では、時折そんな声が聞こえてきます。

 
 教員である限り、ついて回る「校内研修」

 仕事をしながら、教員自身が学ぶことができる良い機会


 のはずなのですが…

 もちろん重要性や必要性を述べる声はあるのですが、同時に否定的な声も相当あるのが実情です。

 なぜ、このようなことになってしまうのでしょう?
 また、どうすればその状況は改善できるのでしょう?

 整理したいと思います。

※ここでは便宜上、「研究と修養」を「研修」とし、「校内研究」も含めた「校内研修」とします。


1.校内研修の3つの側面


 いわゆる校内研修は、主に3つの側面を背負っていることが多いです。

A:教員の力量形成
B:子どもの「学力」向上
C:学校経営の柱(の1つ)

 ※ちなみにこの3つの分類ですが、近しいものをどこかで読んだのですが、探しても見つからないため、出典ご存じの方がいたら教えて下さい。


 多くの場合は教員が主語(A)、その対象や利益享受者が子ども(B)、そうなるように学校組織として取り組む(C)、という場合が多いのではないでしょうか。
 また、この場合の「学力」は非認知能力も含めて広く捉えるため「学力」としました。

 学校組織全体(C)で教員の力量形成(A)を促した結果、子どもの「学力」向上(B)につながっていく…となれば自然で効果的ですが、そんなに上手くいくことばかりではないですよね笑

 なぜそうなってしまうのでしょうか。
 それぞれの「主語」から考えてみます。

2.それぞれの視点から見る矛盾
 

 図にまとめてみました。

 まず、A:教員の力量形成から見てみます。

 B:子どもの「学力」向上とは、比較的相性が良いかもしれません(図の①)。その時の子どもと接する中で、教員が自身に課題意識をもち、力量を高めたいと感じる場合が少なくないからです。いわゆる必要感からですね。

 しかし、その時の子どもの課題と、教員の実情…課題意識やキャリアとが一致する場合ばかりではありません。その教員が学びたいと思っていることが、その時接している子どもに合っているとは限らないからです。

本来、自己研鑽は本人の裁量で、多様で良いものですから、これが生じてしまうことは致し方ないものです。


 一方、C:学校経営との関係(図の②)では、齟齬が生まれやすいように感じます。

 学校組織で校内研修を組む際、多くは学校組織としての課題から考えます。

 しかしながら、学校組織で取組を考えると、どうしても教員ひとりひとりの問題意識や裁量は制限されてしまいます。ともすると、意見や志向が全く加味されない人まで出てきます。

 つまり、個々の問題意識と学校組織の課題とが一致しないことがしばしば生じるからです。というか、よく生じると思います。

こうなると、自己研鑽と組織的な取組は同義ではない、ということも浮き彫りになります。
 
 同じ職ではありますが、ひとりひとりキャリアも関心も性格も生い立ちも異なるので、当たり前と言えば当たり前ですね。

 きっとおそらく、校内研修について聞かれる否定的な声の多くは、この②の部分(教員と学校組織の関係)に起因すると考えられます。

 また、B:子どもの「学力」向上とC:学校経営の柱との関係(図の③)でも、注意が必要です。

 と、いうのも、子どもは校内研修に参画するわけではなく、それを見取る大人(=教員)によって左右されるからです。

 学校内で子どもの表れが近しい、かつ、組織としての方向性にもズレがない、という場合良いのですが、そうでもない場合はここもうまく噛み合わないことがあります。

 見ている子どもはそれぞれ自分の学年学級になりがちですし、教員ひとりひとりの考え方も異なります。この場合、子どもの課題や教員の考えをすり合わせていく必要があります。

 しかし…時に、いわゆる「声の大きい職員」の意見が通ることもあるでしょう。(図の②でも同様)
 そうなった場合は、特定の学年学級に偏った校内研修になりかねません。

 つまり、子どもひとりひとりや各学年学級、教員の実情と一致する訳ではない、ということが言えます。
 

 つまり、②や③といった、学校組織との関係において、ズレが生じやすいと言えます。

3.実は原因を作っている?教育基本法第9条

 
 こうなると、C:学校経営の柱が余計なものに見えてくるかもしれません笑

 しかしながら、これは悪気がある訳でもないのです。

 ここで、教育基本法第9条に着目します。

第九条 
1 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

 第1項の主語は教員で分かりやすいのですが、第2項の主語は任命権者等です。
 かみ砕いて言うと、第1項で研究と修養を義務化しているから、第2項では任命権者たちに「きちんと教員が研修できるようにすること」と、教員が努力義務を果たせるように定めているのです。

参考:第一法規HPより
https://www.daiichihoki.co.jp/store/upload/pdf/023531_pub.pdf


 つまり、教員の研修の機会を法的に確保しているわけです。

 その結果、任命権者や現場責任者は、C:学校経営の柱として校内研修を位置づけます。

 しかしながら、これにより苦しい思いをされている方がいるのも事実です。

 世の中、なかなか上手くいきませんね。


4.まず改善するには?

 
 方法はたくさんありますが、今回ご提案する改善方法としては「主語を明確にする」です。

 校内研修計画から見て、A、B、Cまんべんなく何とかしようとした結果①②③のいずれか、もしくはいくつかが課題となってしまっていることが考えられます。

 なので、どうも散らかっている…という場合、まず主語を明確にすることをオススメします。

 A:教員の力量形成に重点を置く
→校内研修の成果や課題の主語は、教員

 B:子どもの「学力」向上に重点を置く
→校内研修の成果や課題の主語は、子どもの「学力」

 C:学校経営の柱として重点を置く
→校内研修の成果や課題の主語は、組織的な取組
 

 何が主語なのか、がハッキリすれば、目的がハッキリします。
 そうすれば、ブレは少なくなってきます。

 
 しかしながら、きっとどれも捨てられない…という管理職や同僚も少なからずいるでしょう笑
 
 その場合は、校内研修の中の、それぞれの取組の主語を明確にしましょう。
 これは教員の力量形成につながるもの、それは子どもの「学力」向上を図る(測る)もの…といったように、それぞれの取組単位でも主語を明確にすれば、「何でこんなことを…」感は薄まる、意義をもって取り組むことができる…かもしれません。

 何より!せっかくやるからには!少しでもプラスになる取組になってほしい!
 
 「○○できたら楽しいですよね!~~~をして、わたしたち教員の(あるいは子どもの)●●を伸ばしていきませんか?」

と、前向きな未来を考えるのが一番なのかもしれません。


5.終わりに

 
 いかがでしたか?

 ちなみに私つけめんは、校内研修で中心授業の機会を相当いただいたり、研究主任になったりと、かなり成長させていただいたと思っています。

 ですが、手放しに推奨することばかりではありません。できるだけ多くの人にとって有益であるべきですし、何よりどんな取組であっても、やるからには前向きになれるものであってほしいからです。


 この記事が読まれた方のお役に、少しでも立てば幸いです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました☆


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