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映画『BLUE/ブルー』あきらめられない大好きなもの

ボクシングを題材にした映画が好きです。もう選手として先がない主人公、日本タイトルを狙う才能ある後輩、ボクシングに喜びを見つけたフリーター。もがきながらも夢を追いかけて行く姿が描かれています。

監督・脚本・殺陣指導、𠮷田恵輔。2021年製作。日本映画。

ボクサーの瓜田(松山ケンイチ)は誰よりもボクシングを愛していますが、どれだけ努力を重ねても試合に勝てずにいます。

一方、瓜田の誘いでボクシングを始めた後輩の小川(東出昌大)は才能とセンスに恵まれ、日本チャンピオン目前です。

瓜田がボクシングを始めるきっかけとなった初恋の女性・千佳(木村文乃)も、今では小川の婚約者。

強さも、恋も、瓜田の望んだものは全て小川が手に入れてしまいます。

それでも瓜田はひたむきに努力し続けて...(映画.com参照)

30年間ボクシングを続けている𠮷田恵輔監督自身が、すべてのボクシングシーンの殺陣表やビデオコンテも作って撮影に臨んだとのことです。

ボクシングシーンは泥臭く、登場人物は生活感にあふれています。作りごとめいた華やかさは一切ありません。

2勝10敗で全く勝てずに、選手兼トレーナーとしてジムにいる瓜田。

松山ケンイチ演じる瓜田の「悟りの境地感」がすごかったです。

下働きをしながらも、試合に勝ちたいという気持ちは強く、悔しさも忘れていません。一生懸命努力もしている。

でも勝てない。

生意気な若い後輩がギラギラと野心を放つ中、もう若くない自分の立ち位置をわきまえて人を冷静に見ている。

瓜田は決して卑屈にならず、トレーナーとして後輩の小川にも的確な助言をしています。

自分が試合で負けた時も平気な顔をしていますが、本当は誰よりも悔しいはず。悔しいと叫ぶには、経験を積みすぎていて抑えてしまう。

執着を表に出さない、穏やかな表情が切ない。

瓜田を「強い人」だと言い、彼を尊敬している小川。

日本タイトルを狙う小川は、ボクシングによる脳のダメージに悩まされています。

物忘れがひどく、頭痛に悩み、ろれつが回らなくなっていく様子は、このスポーツの肉体に対する負の側面を容赦なく表現していました。

東出昌大の研ぎ澄まされた肉体が役者としての本気度を感じさせてくれます。

ろれつが回らない様子や、運転するトラックをぶつけてしまい謝罪する姿が痛々しい。もうすぐ手が届くチャンピオンの座。彼はけっしてボクシングを手放しません。

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柄本時生演じる樽崎は女の子にモテる為にボクシングジムに入会しました。

彼は「恰好だけそれらしくできればいい」と望んでいたのですが、勧められたプロテストに合格します。

認知症の祖母と二人で暮らしている樽崎は、初めて認められたボクシングの世界にのめり込んでいきます。

瓜田は努力だけでは勝てないことを知っています。

ボクシングの勝敗はその場で明らかになる残酷なもの。


ジムを去り市場で働く瓜田が

何気なくシャドーボクシングを始めるシーン。

松山ケンイチの姿に、あきらめられない人達が重なりました。


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夢に執着するすべての人へ。




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