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『服部半蔵 家康を天下人にした男(上)』(小前亮・著/遠田志帆・絵)

 大河ドラマ「どうする家康の放送により“徳川家康の時代”に注目が集まり、関わる人々、地域などが話題になっています。

 「徳川十六神将」と呼ばれる、徳川家康に仕えて大きな功績を立てた16人の武将がいます。
 その中の一人、ドラマでは山田孝之さんが演じる「服部半蔵(服部正成)」を描いた『服部半蔵 家康を天下人にした男(上)』(小峰書店・刊)が、図書館の児童書コーナーにありました。

 十六神将「服部正成」は、伊賀忍者の棟梁「服部半蔵」であり、大河ドラマでも“忍び”として活躍しています。その“忍び”が、家康の傍で“武将”として働いていく姿を、子供に向けて描いています。

 「天下人になれ。おれがてつだってやる」 人質として生き、何ごとにも自信がもてない気弱な家康の前に突如あらわれたのは、「武士になることを夢見る」強気な忍者、服部半蔵。この日から、天下取りを目指す二人の長く険しい戦いの日々がはじまる。
 乱世を生き抜き、戦国時代を終わらせた二人の激闘を描く物語。

 小学校高学年からの児童向けの図書で、漢字にはルビ(ふりがな)が付き、戸惑わずに読み進められるようになっています。言葉や表現も“やさしく”なっていますが、“のようす”を表す言葉は、使われています。姉川で直柄直隆が大太刀をふるう場面で、次のような表現がありました。

 この猛将(もうしょう)のまわりには、死体が山と積まれ、血が流れて川となった。まさに屍山血河(しざんけつが)という表現(ひょうげん)そのものだ。


 徳川家康は、江戸時代を築いた「天下人」で頼もしい印象を持ちますが、本書の“何ごとにも自信がもてない気弱な家康”は、大河ドラマの家康像と同様、これが実像か、これで大丈夫かと不安になります。

 その“気弱な家康”が、成長し、天下人を目指していく姿が、「服部半蔵の目」から、企みや評定、戦が描かれています。

「こいつらはおまえに帰ってきてほしいんだ。自分たちの岡崎城に。あの城に松平家の当主を迎えるのが念願だっただろ。今こそ絶好の機会じゃないか。おまえを支えてくれた家臣たちの願い、かなえてやれよ」

 桶狭間の戦いの後、岡崎城に入ることになる場面です。半蔵がこのように言いつのったら…。


 本書は、服部半蔵と家康との出会いから、三方ヶ原の戦いまでが描かれ、その後は下巻に続きます。
 児童向けの図書ですが、大河ドラマを観ている方が楽しめる内容です。


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  ◇遠田志帆 (@techicoo)(Twitter)


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