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事実婚して出産したよ、のメモ


【はじめに】

事実婚とは、「法律上の婚姻をせず(婚姻届を提出せず)、社会的に夫婦と同一の生活を送っていること」を言います。

よくあるのは、同居していて住民票の続柄[つづきがら]が「夫(未届)or妻(未届)」となっているケース。
夫婦それぞれが名字を変えず、対外的に証明できる形で結婚生活を過ごすことができます。
※この記事では、単なる同棲や重婚的内縁は事実婚に含めていません。

私自身も数年前に事実婚を選び、その後出産や子育て(夫婦ともに会社員)をしながら結婚生活を送っています。

この記事では、事実婚する(事実婚状態にする)ためにやったことなどをざっくり書き残しておきたいと思います。
私の経験が事実婚にちょっと興味がある人、事実婚を検討している人の参考になれば嬉しいです。

※2021〜2022年に実施された内閣府の委託調査では、20〜30代女性の4人に1人(25.6%)が積極的に結婚したいと思わない理由として「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」と回答しています。
事実婚なら、(制度として完璧ではないですが)名字を変えずに結婚状態になれるので、ひとまず選ぶのもおすすめです。
『男女共同参画白書 令和4年版 (特-41図 積極的に結婚したいと思わない理由)』
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-41.html

※事実婚と法律婚の具体的な違いは、内閣府が作成した資料に分かりやすくまとめられています。
『いわゆる事実婚に関する制度や運用等における取扱い』(令和3年12月14日)
https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/Marriage-Family/7th/pdf/6.pdf

※「事実婚だと(子が)不幸になる」という反対意見を見かけましたが、そんなことはありません。
特定の家族像を大切にされる方には抵抗感があるかもしれませんが、そういう家庭もあるし、幸せに暮らしているんだよということを伝えておきたいです。
私個人としては、誰かの反対を理由に事実婚(結婚)を迷っているという方には、まずは2人の幸せを優先して欲しいと思っています。応援しています。


【こんなことをやったよ、のメモ】

■結婚にあたりやったこと

・相手と話し合う
夫と結婚するにあたり、私から「事実婚というやつが別姓で結婚状態になれるらしく興味がある。調べてみたい。」と持ちかけました。
その後関連書籍などを読み、健康な共働きで同居するなら事実婚のほうがよさそう(法律婚で同姓にするデメリットの方が多そう)だねということで合意し、とりあえず事実婚を選ぶことにしました。

当時、もし不都合あれば(または選択的夫婦別姓制度が認められたら)婚姻届を提出しようという話もしていたのですが、現在も事実婚を続けています。

※例外的な処理として、子が産まれたときに夫の名字にするため一時的に法律婚状態にしていました。
事実婚状態でやろうとすると裁判所に申請が必要で、時間がかかってしまうんですね。
子の諸々の手続きを先に進めたかった(後で子の名字変更手続きをしたくなかった)のでそのようにしています。

・転居
2人とも離れて暮らしていたので、まずは一緒に住むための賃貸物件を探し、 婚約者として申し込み入居しました。

・住民票の続柄変更(世帯合併)
引越し後、転居届を役所に提出するときに夫を世帯主、妻である私の続柄を「妻(未届)」にしました。
会社などに結婚の証明を求められたときは、この続柄が記載された住民票が使えます。
※もちろん妻を世帯主、夫の続柄を「夫(未届)」にすることもできます。
※自治体によっては戸籍の写しや確認書の提出を求められることがあるようですが、私の住むところでは不要でした。

普段の生活ではどちらが世帯主かを意識することはありません。
地域によっては自治体からの書類(選挙の入場券など)を送る際、世帯主宛に届くことがあるようですが、私が住んでいるところでは基本個人宛に届いています。

・会社への届出
夫婦どちらも会社規定の結婚祝い金、結婚休暇を申請できました。
(認められない可能性もありますが、社会保険法上は事実婚の配偶者も法律婚と同様に扶養できるルールになっているので、会社に決まりや前例がなくても相談できる余地はある気がします)

・親族への報告など
結婚式は面倒で挙げなかったのですが、結婚写真的なものを撮り年賀状にして親戚に送りました。

・生活費を支払うための家族カード作成
事実婚でも家族カードは作れました。
(結婚当時は楽天カードで発行できました)
生活費の銀行口座に紐づけたクレジットカードと家族カードを作成し、現在も活用しています。

■妊娠、出産、育児をするにあたりやったこと

・ブライダルチェック
将来的に子どもを持ちたい考えがちょっとでもあれば、事実婚かどうかに関わらず夫婦ともにやっておいた方が後悔が少ないと思います。
ちなみに東京都では事実婚でも検査や不妊治療の助成金が申請できます。

・本籍地の変更(分籍)
夫婦それぞれの本籍地を居住自治体の住所へ変更しました。
胎児認知の手続きが母親の本籍地じゃないとできないのと、今後戸籍謄本の写しを取得しやすくするためです。

・胎児認知
妊娠届を出したあとに役所へ申請しました。
もし出産前に父親(夫)が亡くなっても、親子関係を証明(相続)することができます。

・公正証書作成
妊娠がわかるまでは特に必要に感じなかったのですが、私が出産前後に亡くなる(意識がなくなる)可能性に備えて作成しました。あくまでお守りとして。
今回は事実婚契約書、死後事務委任契約書を作成し、費用は5万円弱かかりました。公正証書よりも簡易な手続き(私署証書)の場合はもっと安くなります。

※余談ですが、事実婚の公正証書を依頼しようと文案を作って公証役場に相談したら2件に断られ(これは悲しかった)、3件目の公証役場で対応してもらいました。
検討される場合は、大きめかつ見識の広そうな公証人のいる公証役場をおすすめします。
公証役場の規模や公証人の経歴(退職した裁判官や検察官が多い)はネット検索すれば調べられます。

・遺言書作成
私が亡くなった場合に夫へ財産が遺せるよう「自筆証書遺言書保管制度」を使い、法務局へ自分で書いた遺言を持っていきました。費用は無料です。
利用できる法務局が限られていたりとやや使い勝手が悪いですが、お安く法的に有効な遺言を残せるのでおすすめです。

・一時的に法律婚(婚姻届&出生届→離婚届&続柄変更届の提出)
子の名字を父親(夫)と同じにするために手続きしました。
事実婚の場合、裁判所へ申請するか父親の養子にするか一時的に法律婚をしないと子は母親と同じ名字になります。

ちなみに一時的に法律婚をする場合、その期間が短いと申請した続柄が正しく反映されないことがあるので注意が必要です。
私の場合、続柄を「妻(未届)」に戻した数週間後に住民票を発行したらなぜか「同居人」になっていて、役所に問い合わせ直してもらいました。
(戸籍システムの仕様上そうなるみたいです)
不安な場合は手続きする際に役所への確認をおすすめします。

また、事実婚では共同親権を持てないため父母どちらかが親権者になります。
子の親権者は私ですが、今のところ親権者じゃないと手続きできないのは子のパスポート作成くらいなので、普段は意識することがありません。

※名字と親権を母側のままにする場合、胎児認知と出生届を出しておけば父子の親子関係は成立します。親権以外の面で法的に取り扱いが変わることはありません(昔は遺産の相続分が少なかったり差別的な取り扱いがありましたが、現在は無くなっています)
戸籍まわりの手続きは自治体によって慣れていなかったり余計な時間がかかったりするため、事前に必要な書類や注意事項を聞いておくと良いかもしれません。私は胎児認知の手続きをするときに役所の戸籍課で確認しました。

・会社への届出、扶養の手続き
子の名字が異なっても親の扶養(社会保険、税)に入れることができます。
通常は父母のうち所得が高い方の扶養に入れます。

・産休、育休の取得、給付金の申請

事実婚でも、会社員であれば夫婦ともに公的な育休取得&給付金の申請ができます。
ちなみに、あくまで私(の会社の健康保険組合)の場合ですが、産後の給付金を申請する際に子と自分の名字が違ったので追加書類として出生届(病院が記載する右半分)か戸籍謄本の写しが必要でした。
親子別姓だと自分がその子を産んだことを母子手帳や住民票では証明できないということで(であれば同姓でも証明できない気がしますが…)、追加書類を揃えるのに少し時間がかかりました。
役所へ提出する書類や発行した書類は、都度写真データやコピーを残しておくことをおすすめします。

・保活、保育園入園
事実婚だからといって有利不利なく、法律婚のご家庭と同じように扱われます。

【参考図書】(2023/04/22追記)

私が読んでよかった本など書き留めておきます。
図書館でも借りることができる(他の自治体のものも取り寄せできる)ので、より興味のある方のご参考になれば。

①中井治郎『日本のふしぎな夫婦同姓 社会学者、妻の姓を選ぶ 』(PHP新書 2021年)
なぜ片方が改姓しないと結婚できないのか、夫側が改姓してどうなったか、について著者の経験も交えながらわかりやすく描かれています。おすすめです。

②阪井 裕一郎『改訂新版 事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社 2022年)
事実婚当事者の多様な具体例、インタビューを読むことができます。
インタビュー以外の章は少し難しめですが、夫婦別姓の論点について詳しくまとめられていて勉強になります。

③日本公証人連合会『新版証書の作成と文例 家事関係編改訂版』(立花書房 2017年)
公正証書を作るときの参考にしました。
家族関係の契約文書のなかに「事実婚に関する契約」や「パートナーシップ契約」を作成するときの考え方や文例が載っています。
公正証書は必須のものではありませんが、作りたいけど専門家に相談するのは迷う…という方におすすめします。


記憶に頼って書き留めた内容なので、参考程度にご覧ください。
そのほか思い出したことがあったら追記修正していきます。

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すぐに対応できないかもしれませんが、できる限り回答します。

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