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#彼女を文学少女と呼ばないで【世の中でいちばんかなしい景色は】「かわりにあなたを呼び出したりしたら陽子さんに叱られちゃうかしら」


「でも、陽子さんが何て言うかしら」

「気になるの?」


タクシーの屋根に両手をついて
中をのぞく恰好だった詩史は首をかしげ、
ややあって、
「いいえ」と、こたえた。


「いいえ、気にならないわ」と。
それは特別な一瞬だった。




二人のあいだにまぎれもなく共犯者めいたシンパシイが走った。愛情と信頼と共感の、輝かしいほど濃く甘い一瞬だった。


ドアが閉まり、タクシーが走りだした。

透は、座席に凭れ、目をとじて、息をすった。


世界は、この上なく素晴らしい場所だった。



東京タワー/江國香織

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