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妻のじまん -マサイ族の視力と、健康すぎる歯の不思議- #016

「私の自慢は視力と歯並び」と妻(*)はいう。

視力検査の際、「上っ、左っ、右っ、左っ!」と、高速で回答するよう心がけているという話を、妻から健康診断のたびに聞かされる。意味がよくわからないが、とにかくなんだか嬉しそうだ。

たしかに、妻の視力はすごい。

朝一緒にウォーキングに行くと、遠くのカルガモの親子をすぐに発見するし、かなり距離があっても何羽いるかを数えたりしている。草むらの中に紛れていても、見つけられるのである。マサイ族は視力がすごいとどこかで聞いたことがあるが、妻もものすごい。「視力検査は2.0までしか測れないからね」と、どこか誇らしげだ。

もう一つすごいのが、街中の猫を見つける能力である。道や路地にいる猫だけでなく、「あそこの、2階の窓にいる」と、遠くの家の窓の隅にいる猫も、即座に見つける。

妻は見つけた猫に勝手に名前をつけるのだが、そのネーミングセンスは、かなり安易である。

「はんぺんちゃん(白いから)」
「バットマンちゃん(顔の模様がバットマンみたいだから)」
「さんちゃん、かいちゃん(あるマンションの3階の出窓にいる2匹の猫。どちらがどちらかは、わからない)」

しかしジャクリーヌとか、五右衛門の介、などの凝った(?)名前をつけても覚えられないし大変だから、これでいいのかもしれない。

妻は非常に歯並びがいい上に、虫歯になりにくい。そこまで熱心に歯を磨いているようには見えないし、甘いものもわりと食べている、私は結構頑張って磨いているつもりでも、虫歯になる。ふたりとも同じ歯科衛生士さんに検診をお願いしているが、生まれついたものや、幼少期の口内環境も関係しているみたいだ。妻は笑顔で、ニカっと歯を見せつけてくる。不公平だ。

生まれつき、と言えば、思い出すことがある。

以前街中で、外国人の親子を見た。妻は唐突に「私、金髪で青い目の子を産みたい」と言い出した。「いや、さすがにそれは、遺伝子的に無理では」という私に、妻は言った。

「つなまよ、遺伝子変えてくれる?」

ブロンドで青い目の天使のような子は、助産師の資格を持つ妻に、遺伝子を変えろと言わせるのである。

*「妻とサスペンス」

2023年10月12日執筆、2023年10月18日投稿


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