くどうれいん『コーヒーにミルクを入れるような愛』読みました。

くどうさんは自分と年齢も近いし、実は地元が近いので、大好きな作家さん。くどうさんの文章は可愛らしくて、たまに鋭さやちくりとしたところがあり、くすっとしたり、きらきらしていて、とても魅力的だと思う。

以前御本人がXでリポストしていた記事を読んで、「わたしは書くことで生活しているが、赤裸々に書くつもりはない。わたしの体験や人生における大きなイベントは、消費するように書くのではなく大事にしておきたい。」というような内容が書かれていた。

くどうさんの文章は、日々の暮らしそのものなのだ。日々の一見するとなんてことない暮らしが、工藤さんの目や手を通して文章という形になったとき、それはすごく鮮やかで輝いている。今回のエッセイのタイトルや帯にも書かれていた通り、結婚や、結婚する前の同棲のことなども多く書かれており、おそらく主題のようなものなんだろう。これがまた可愛いし輝いているし眩しい。誤解を恐れずいうと、暮らしぶりはいい意味で普通で飾らないもののように感じるが、彼女が見ている世界はこんなにも美しいものなんだなぁと思う。

そしてそれはくどうさんだけではなく、わたしも、今この記事を読んでくださっているあなたも、全く知らない誰かも、みんなそうなんだ。日常が愛おしくて大切で、派手でなくても、映えなくても、人生って面白い。何よりのドラマだ。

『うたうおばけ』のときもそう思った。

本はあまり書き込みしたくない派なので、気になった言葉は粘着力が弱い(重要、そしてここでは褒めてます)付箋を貼って、振り返って楽しんでいる。だけど、もし素敵だな、いいなと思う言葉にマーカーを引いていたら、本がすごくカラフルになるだろうな。そんな本でした。

タイトルにもなったこの表現。てっきり、お相手がカフェオレが好きで、ミルクを入れるのが愛で、というようなほっこりする話かと思っていたのでまったく違っていて笑った。くどうさんも旦那さんもかわいい。くどうさんの不器用で一生懸命が愛がなんとも「らしく」て可愛くて心温まる。

ガラス張りの温泉から見える夕陽がきれい、という事実を表すのにこれ以上ない描写だと思った。そして、その感情は、老若男女問わずみんな同じで、裸でも、もしかしたら外から見えそうでも、のぼせても、混雑していても、それを見たいという思いは共通するのって、人間だなぁと思うしすごいなぁと思う。

もっと好きな文章がたくさんある。
何度も読み返したい、あたたかい本でした。