泥棒トカゲと不思議なスイカ

【あらすじ】
庭でスイカ畑を営んでいるおばあさんのところに、ある日オオトカゲが遊びに来ました。おばあさんはこのトカゲのことをとても気に入って、毎日スイカを分けてやるようになりました。
ところが、スイカの味を占めてしまったトカゲは、だんだん少量のスイカでは我慢できなくなってきます。
そしてついにある晩、オオトカゲはおばあさんのスイカ畑に泥棒に入ったのでした。欲張ったトカゲは、そこで小さめのスイカを丸のみにしようとして喉をつまらせて死んでしまいます。
翌朝、いつものように庭に出たおばあさんは、前日まで何もなかった場所に巨大なスイカを発見しました。大喜びしたのも束の間、実はそのスイカにはある秘密が隠されていて……。
(原稿用紙約5枚)

 とある村に、庭の畑でスイカを育てているおばあさんがいました。畑は六畳間くらいの広さでしたが、そのあたりでスイカを栽培している人は珍しかったので、おばあさんのスイカは地元のひとたちにけっこうな高値で売れていました。
 おばあさんは何年も前におじいさんに先立たれて、今はひとりで年金暮らしをしています。いくらか貯金はありますが、倹約しなくてはとても生活していけない状況なので、スイカの売上は大切な収入源なのでした。

 毎年春が終わりに近づくと、おばあさんはスイカの苗を畑一面に植え付けます。狭い畑なのでそんなに時間はかからないのですが、それでも中腰での作業はきつく、毎回苗植えのあとはしばらく腰の痛みが続くのでした。
 しかし、大変なのは最初だけで、あとは土が乾かない程度に水やりをしてあげれば十分です。おばあさんは、スイカの受粉の時期まで、蔓の成長を見守りながらのんびり家の掃除や料理などをして過ごしました。

 受粉も成功し、今年も夏になると、畑には大きくてまあるいスイカが二十数個以上実りました。おばあさんは、ほど良く熟したスイカから順にダンボール箱の中に詰め込んで、トラックで回収に来てくれた地元の果物屋のおじさんに受け渡します。

 その日、出荷作業を終えたおばあさんは、縁側に腰かけて、庭で獲れたばかりのスイカを食べていました。すると、スイカの匂いにつられてやって来たのか、オオトカゲが一匹、木の陰からひょっこりと顔をのぞかせました。「おやおや、珍しいお客さんだねぇ」
 おばあさんはシワシワに縮んだ口元をゆるめ、手に持っていたひとくちサイズの果肉を、足もとに落としてやりました。オオトカゲは人慣れしているのか、警戒心もなく、垂れた腹を地面に引きずりながら近寄ってきて、あっというまにそれをひと飲みにしてしまいました。
 それ以来、このちょっぴり不気味な風貌のお客さんは、毎日のようにたずねて来るようになりました。

「今日は特別暑いから、スイカがいっそう美味しく感じられるでしょう」
 いつしか、スイカを食べているオオトカゲの姿を眺めることが、おばあさんにとっての楽しみとなっていました。もはや、オオトカゲはおばあさんにとって家族も同然の存在でした。
 一方、オオトカゲの方は、おばあさんの気持ちなどつゆ知らず、すっかりスイカの味をしめてしまって、おばあさんからもらう分だけでは満足できなくなっていました。
 そこである晩、村人たちが寝静まってから、こっそりと庭に盗みに入ることにしたのです。

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