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ニートが就職しないで生きるには? 香川移住で理想を叶えたミレニアム世代の5つの選択


東京の広告代理店を辞め、香川の実家でニート生活へ。そこから自分の理想を手に入れた田中勇次さん(27)。

ニューノーマル時代のいま、少し立ち止まって、仕事や暮らし方について多くの人が考えたことだろう。

理想の暮らしを叶えたいあなたに、田中さんのヒストリーをお届けする。

地元香川にUターンし、ニートをしながら「自分のテンションがあがる」働き方を模索。新しい移住メディア「マチなみ移住サポート」を今年2月に知人と立ち上げた。

香川の移住希望者の「住まい」「仕事」「ネットワーク」「移住後の集客支援」まで、まるごと寄り添う移住メディアだ。

「地元にもどってからは、やりたいことをとにかく行動していました。家族と過ごす時間も多くなって、仕事に追われていた東京での暮らしよりも、自分の理想的な働き方に近づいていますね」

ニートが就職しないで生きるには?田中さんが理想を掴むまでの5つの選択を見ていこう。

このインタビューは、かがわ経済レポート2021年3月25日号にも再編集してご紹介しています。

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①「逆算思考」でベンチャーに就職

「生まれ育った香川県に広く関わりたい」と、大学入学時は県庁職員を目指していた田中さん。

しかし卒業後は、東京のベンチャー企業に就職。Web広告代理店の営業として、責任のある仕事を任される存在になっていった。

―なぜ東京のベンチャーに就職を?
どうすれば一番成長できるだろうか? と、ゴールを設定して逆算していくなかで、最も成長できそうなベンチャーに行き着きました。

実際に新人時代から大手企業の案件に携わることもでき、仕事を通して自分が成長できた手応えを感じました。

ただ、日々の業務量はかなり多くて。先輩や同期が辞めた分の業務も回ってくるような状況が続いていましたね。

当時、目が笑っていないことも多かったと思います。もともと得意な分野ではないというのは分かっていながらの挑戦でしたし、自分が広告営業をやる意味を考えたりもして…。

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―3年で離職されたのは、どういった経緯が?
改めて自分の幸せや理想の働き方を考えた時に、違うキャリアを選ぶべきだと思ったからです。退職を言い出すのは怖かったですが、違和感を覚えてからの行動は早かったですね。

―そのまま東京に残ろうとは思わなかったんですね。
人生でやりたいことリストを書いて、『今死んだら絶対後悔すること』のなかで地元への想いがありました。

例えば、大切な人との時間を確保したいと思いつつ実家には長らく、年に一度しか帰省できていなくて。だから香川に戻ろうと思いました。

今では実家で家族と過ごしていて、近くに住む祖母にも週1ペースで会えています。祖母にすごく喜んでもらえているようで嬉しいです。帰省をきっかけに、家庭菜園も楽しんでいます。

そして、移住を決めた、もう一つの大きなきっかけは、フリーランスの方々との出会い。自分の理想の働き方をあらためて考える良いきっかけになりました。

②フリーランスから「理想の仕事」を学ぶ

東京のベンチャーから香川へ。キャリアを一転させた出会いとは?

田中さんが東京のベンチャー企業を退職した後、次に選んだ場所は、千葉県のコミュニティスペース「まるも」。

多種多様なフリーランスが数十名ほど属しているコミュニティで、「人生の選択肢を広げる」がコンセプトの「田舎フリーランス養成講座」(現:ワークキャリア)が開催されている。

同講座を会社員時代に受講したことで、フリーランスという生き方に触れた。

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―講座に参加してみて、いかがでしたか?
フリーランスの講師陣から、サイト制作やライティングの基礎を学びました。講座の内容はもとより、大きな収穫は講師たちとの人脈でしたね。講師は東京と地方でデュアルライフをされている方や、フリーランスエンジニアとして3ヶ月ごとに案件を渡り歩いている方など、個性的で多彩なキャリアを歩む人たち。そんな多様な働き方に触れ、自分の理想の働き方をあらためて考えるようになりました。

―田中さんの理想の働き方とは?
私が大切にしているものは、やはり『地元』への変わらない想いでした。地元に関わりながら、結果的に地元へ還元できるような働き方が理想だと、あらためて実感したんです。
昔と比べてシャッター街になってしまった地元商店街を見ると、『何かしたい!』という気持ちになります。

離職後はすぐに帰省せず、『まるも』で3ヶ月間だけスタッフとしてお世話になりました。

Uターン後、最初の2ヶ月間は実家でニートをしていました。

コミュニティスペース「まるも」
・住所:千葉県富津市金谷3870
・公式サイトURL:https://marumo.net/

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③逆算思考を手放し、直感志向を受け入れる

―どこにも所属しないニート生活を選んだワケとは?
これまでの経験から、『逆算思考』をやめて『直感思考』になろうと決めました。

なんの縛りもないニートになってみて、自分のしたいことを直感的になんでも行動してみたら自分はどうなるのか、試してみたかったんです。

それから『地域のため』という気持ちがどこか上辺っぽく感じたのもあり、いったんそのきもちを脇において行動してみようと。その結果として、何か地域のためになったらいいな、くらいの姿勢でいました。

なんでもやってみるの姿勢で、とにかく行動しながら、自分にとっての「やりがい」「楽しさ」のある働き方を探っていった。
帰省後に携わった仕事
・ゲストハウスのスタッフ
・動画編集
・サイト制作
・ライティング
・カメラマン など

その試みのひとつは、Youtubeチャンネルの開設。

ガリガリからマッチョにみごと転身した実兄を演者に、チャンネル「マッスルカレッジ」を開設。からだ作りに関する情報をわかりやすく伝えようと、田中さんは動画編集や構成など、裏方のすべてを担った。

駆け出しの動画編集者とは思えない、作り込まれた動画をアップし続けたことで、「Youtubeを見てくれた方から、動画編集のプロの人ですか? といわれることもあって…」と、照れくさそうに微笑む。

どのような演出が視聴者のきもちを掴み、飽きさせないのか? どうすればもっと良いチャンネルになるのか? そうした分析には、ベンチャーや「まるも」時代の経験が大いにいきている。

Youtubeチャンネル「マッスルカレッジ」
・URL:https://www.youtube.com/channel/UCVUguFvLJBb1Yen5I1YnM1w

④“新しいメディア”をローカルに落とし込む

田中さんがいま、とくに力をいれているのが「移住メディア」の運営。

スタッフとしてお世話になっているゲストハウスのオーナーから「一緒にやらない?」と誘われ、直感で「やってみたい!」と二人でスタートしたものだ。

―立ち上げの背景には、パンデミックの影響があったそうですね
やはり新型コロナの影響でゲストハウスを利用されるお客さんの数は減っているのは否めず、オーナーから新しい事業を始めたいという意向は伺っていました。

田中さんが働くのは、香川県高松市の伝統的な日本のアパートメントを改装したゲストハウス&バー「Traditional Apartment」(2015年にオープン)。オーナーの内田大輔さんは4つのゲストハウスを運営し、パンデミック以前はインバウンドを中心に多くのゲストが訪れていた人気のスポットだ。香川の旅が素敵な思い出となるよう、サポートも行っている。
ゲストハウス「Traditional Apartment」
・住所:香川県高松市塩上町1-3-7
・公式サイトURL:https://traditional-apt.com/

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二人がニューノーマル時代のゲストハウスのかたちを模索するなか、集まりにくいリアルな場だけではなく、Webの場にも事業を広げていったのは、ごく自然な流れだったのかもしれない。

この2月、新しい移住メディア「マチなみ移住サポート」のWebサイトを開設した。

内田さんと田中さんが「移住サポーター」として、香川県への移住希望者をまるごと支援していく取り組みだ。

―「マチなみ移住サポート」とは?
香川の企業と移住者をつなげ、移住者が定住しやすい環境作りのお手伝いをしようと立ち上げました。
内田さんが不動産資格を持っているので、部屋探しもしっかりサポートできますし、私たちのネットワークなどを通じて仕事探しもサポートします。
さらに、移住者が事業を立ち上げた際にも、私がサイト制作やWeb集客などを手伝っていきます。

―かなり手厚いサービスですね。
内田さんの広い人脈もいかしつつ、私の移住経験やできることもふまえて、移住者にしっかり寄り添えるサービスになっているかと思います。
まだ検討中ではありますが、“パッケージ商品”も考えているんですよ。

―パッケージ商品とは?
例えば、コロナ禍で仕事を失った料理人の方などに向けた、『フードトラックのレンタル』といったパッケージを構想しています。住まい、仕事、職場、情報発信、ネットワークなどをまるごと総動員して提供できる試みです。

移住者にとっては少ない資金でおもしろい仕事にチャレンジできると思いますし、地域にとっても新しい食文化との出会いがあり、どちらにも貢献できる試みになりそうです。開業後の情報発信は私がWebサイトを立ち上げることで、お手伝いしていきます。

香川県の移住メディア「マチなみ移住サポート」
・公式サイトURL:https://kagawa-iju.com/

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⑤関係づくりのフィールドワークへ

―田中さんの理想に近づく、すてきな働き方ですね。これからのビジョンは?
移住メディアを通じて、香川県を深く見ていきたいですね。香川県が、国内外にちらばるフリーランスの移住先のひとつになればいいなと思いますし、そんなおもしろい人たちといずれ一緒に楽しいことをできたら最高です。

実はほかにも、新しい仕事をはじめる可能性がありまして。地元で新しいチャレンジを試みる人たちをサポートできる機会になるかもしれません。

移住メディアで移住者をサポートし、新しい仕事で地元の人たちもサポートしていけたら。ひとつひとつの取り組みである点が、いずれ面になって、相乗効果をうみ、地元に還元されていくことが理想です。

私自身、まだまだ働き方を模索している最中。これからも直感を信じて行動しながら、地元にずっと関わっていきたいですね。

ベンチャー時代の疲れた様子はなく、いきいきした表情で取材に応じてくれた田中さん。ひとつひとつの質問に対して、自分の言葉でしっかりと応えてくれる真摯な姿勢に、「これからの香川県を温めてくれそうだな」と感じた。人や地域とていねいに関係をむすぶ田中さんのフィールドワークは、まだ始まったばかりだ。
ニートが就職しないで生きるには、興味のあることをとりあえず何でもやってみることが大切です。人や地域とていねいに関係をむすぶことから、新しい世界が広がるかもしれませんよ。
記事出典:かがわ経済レポート2021年3月25日号より。かがわ経済レポートは、1979年(昭和54年)に創刊した香川の経済情報誌です。香川の会社年鑑にあたる「WEB版香川の会社情報2021」や、かがわ経済レポートの記事をご紹介している「かがわ経済ニュース」(無料)も、ぜひチェックしてみてくださいね。

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