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小児と妊婦への解熱剤「アセトアミノフェンとNSAIDsについて」

新型コロナに感染する人が急増したために、医薬品の品切れが続いています。
特に解熱剤のアセトアミノフェン、それに続いて他の解熱剤も品薄になったことで話題になっているところです。
今回の流行の特徴的な症状の一つに40℃前後の高熱があるため、処方される量も多いのでしょう。
この状況が続くと本当に困りますね。
感染者数が早く減少すると良いのですが。

流行が始まってしばらくは、ほとんどの場合アセトアミノフェン(製品名は主にカロナール)が処方されていました。
しかし、製品の供給が追い付かず、メーカーの出荷調整となり、商品が入荷しなくなりました。


その為、優先的にカロナールが処方される人以外には、積極的にNSAIDs(非ステロイド性解熱鎮痛剤)と呼ばれる他の解熱剤(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)に切り替わり、現在はそれも出荷調整となっている状況です。(2022.8.10)


今回は、アセトアミノフェンが優先的に処方される人と、その理由について解説します。



【アセトアミノフェンが優先的に処方される対象】


【アセトアミノフェンが優先的に処方されるのは妊婦さん(特に妊娠28週以降)15歳未満の小児です。】



【妊婦さんにアセトアミノフェンが処方される理由】


妊娠後期28週以降の妊婦さんには、何故アセトアミノフェンでなければならないかと言うと、赤ちゃんの動脈管収縮が起きることがあるから。

動脈管というのは、まだ肺呼吸をしていないお腹の赤ちゃんの、心臓の大動脈と肺動脈を繋ぐ管のことです。これによって血液が肺を通らずに流れていきます。赤ちゃんが生まれて肺呼吸をするようになると自然に閉じてなくなります。

妊娠中に母親が解熱剤を服用すると、この動脈管が収縮して閉じてしまい、重篤な心臓疾患を引き起こしてしまうことがあります。
安全に使えるのはアセトアミノフェンだけです。

動脈管収縮を起こすのは、解熱剤を、主に28週以降の妊娠後期に服用した場合ですが、妊娠中全般を通してアセトアミノフェン以外の解熱剤は、子宮への影響、出血傾向、赤ちゃんの腎臓への影響等を考慮して処方を控えます。
ただし、すべては状況に応じてなので、処方される場合もあります。



【小児にアセトアミノフェンが処方される理由】


小児にアセトアミノフェンが処方されるのには、また別の理由があります。

ウイルス性疾患(特に水痘やインフルエンザ等)に対して、解熱目的でアスピリン等のサリチル酸系や、NSAIDs等の解熱鎮痛剤を使用すると、ライ症候群と呼ばれる肝機能障害を伴う急性脳症が誘発させることがあります。

発症のメカニズムついては、まだ良く分かっていませんが、ミトコンドリアを傷つけて機能障害を起こすのが原因とも、また主に小児に発症することから、脳の発達の状況が関係するとも言われています。

主な症状は、風邪症状などのウイルス性疾患に続いて、概ね一週間以内に起こる嘔吐、傾眠、異常行動、興奮、痙攣、昏睡等です。
大人にも起こることがありますが、軽症でほぼ後遺症なく回復するのに対し、小児の場合には度々重症化することがあり、その場合の致死率、永続的な後遺症の割合は少なくありません。
そのため、ウイルス性疾患の場合には15歳未満の小児へのアスピリン、NSAIDs等の解熱鎮痛剤の使用は原則として行いません。
(欧米では19歳以下は原則禁忌となっています。)

ただし、アスピリンなどは、他の治療目的で継続して使用することも多いので、リスクを考慮しつつ、あくまでも状況に応じて使用されています。

今は解熱剤としてアスピリンが処方されることはほとんどありませんが、ロキソプロフェンなどはよく処方されますし、解熱以外の目的でも使用させる機会も多いので、手元にある場合には注意してください。
また、15歳未満の場合でも、感染症に罹患していない場合で、頭痛や生理痛、整形外科領域の痛みや炎症で使用することは特に問題ありません。


以前に解熱剤の使い方を書いたので、こちらもご参考にしてください。



【最後に】


薬は100%安全でも、危険でもありません。
様々な状況を考慮して、リスクとベネフィットを天秤にかけ、判断し、使用することをご理解いただければと思います。



☘最後までお読みいただきありがとうございました。











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