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【cinema】少年の君

「少年の君」中国

去年見逃したものを高速神戸のcinema KOBEにて。ものすごく評判良くて、これは見ておかねばと。

進学校に通う高校3年生の少女チェン・ニェンは、大学進学のための全国統一入学試験を控え重苦しい日々を過ごしていた。ある日、一人の同級生が陰湿ないじめを苦に自殺し、彼女が新たないじめの標的となる。いじめっ子たちの嫌がらせが激しくなっていく中、チェン・ニェンは下校途中に集団暴行を受けている少年・シャオベイと出会う。共に孤独を抱えた彼らは次第に心を通わせていく。(Yahoo!映画より引用)

この作品のメインテーマはいじめです。中国の"高考"という大学受験に立ち向かう学生たちのまるで戦争かのような学校生活の中で、加害者たちは常に次のターゲットを探しており、主人公のチェンもその餌食となる。彼女の母親はひとり親で、娘の学費を稼ぐべく出稼ぎに出ており、紛い物の化粧品を売って詐欺師扱いされている。また、シャオベイは母親から見捨てられたストリートチルドレンで、いじめのみならず中国の抱える闇の部分も描いています。

まぁ前置きはいいとして、この映画の良いところは、甘さが一切ない恋愛物語であり、淡々と、しかし濃密にチェン・ニェンとシャオベイの関係を描ききっているところです。とにかくこの二人を演じている役者の眼差しがいい。

いじめのシーンは壮絶で、ホンマコイツら大概にせぇよって思うくらいなんですが、言い方悪いけれど、展開を面白くしている一つの要素で、早よ此奴らに天罰を…!と心の中で思いながら観ました…

こういう殺伐とした映画の中で際立つのは食事をするシーンなんですが、私がいいなと思ったシーンが二つあって、一つはチェンとシャオベイがカップ麺をすするシーン、もう一つはベテラン刑事と若手刑事が火鍋を食べるシーンです。何でもないシーンなんですが、あ、なんかいい…と思いながらそのシーンを味わった気がします。

それとチェンの母がダメ母だけど娘想いで、娘は母のことを嫌いになれないし、この映画の温かさを感じることのできる一つの要因でもあると思いました。

この映画には三人の母親の存在があり、隠れテーマなのかなと思ったりしております。チェン・ニェンの母親、いじめっ子の主犯格ウェイの母親、そして映画には一切出てこないシャオベイの母親です。

出稼ぎ生活で、そばにいない母親でも気持ちが通じ合っていれば、どんなに母親が叩かれようともチェンは折れることがない。一方で、わりと裕福でお嬢様育ちのウェイとその母親は、一つ屋根の下で暮らしていようとも全く気持ちが噛み合っていない。付き合う友達を値踏みするよう娘に教える母親に、罪悪感はないし、娘がいじめの加害者であることも自分とは関係ないとさえ思っているかのよう。そして、姿は一度も見ることのなかったシャオベイの母親。彼の中ではかなり大きな存在で、捨てられた認識があっても彼からすると、自分自身が孤独であることのある種の理由になっていて、彼が強くあろうとする心の拠りどころのようなものなのではと。チェンとシャオベイがそれぞれの感じている孤独感に共通項があるとしたら、母親の存在が少なからず影響しているのかなと思いました。難しく考えすぎかね…。

それにしても見れてよかったです。去年見てたら間違いなくベスト10入れてたと思う。今年もしかしたら入れるかも?
配信も始まっていると思うので、よければご覧下さい。私は中国の高考のことを知るのにも良い機会となりました。日本のセンター試験とは似ているようで、受験者数からしてレベルが違いすぎる…

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