風向き

やはり、春には何かが変わる。

自分は変わろうなんてしなくても、周りは何の構いもなく変わる。風向きが変われば帆の向きを変えなければ、進行方向が変わってしまう。

帆の向きを変えてまで、行きたい先があるのかな。
僕には目的地なんて、あったのかな。

旅立ったその日には、確か、どこかに向かっていたはず。少なくとも家の扉を出る決心をするだけの、魅力のある「目的地A」を目指していたはずだ。
目的地、とは、そもそもたどり着くことを前提に用いられる言葉だ。だけど、道の途中で、「目的」と「地」が一致しないことに気が付くこともしばしば。気が付いて、考えている間に、地Aを見失い、Bを定めて、でも風が強まって、気が散って、心が折れて、誘惑されて、だまされて、もう「目的」も「地」もそれぞればらばらに、すっかり失って、早幾年。

英語で目的地、と検索するとDestinationと帰ってくる。単語の中に、Destiny・宿命 が含まれている。

重っっった。

でも、こいつは都合がいい、とも思う。たどり着いたその場所は宿命の地だ。 目的地ではない。目的は自分で定める、宿命は自分ではどうすることもできない。 たどり着いた場所は、自分ではどうすることもできず、そこにただ、たどり着いた場所だ。

風向きが変われば、行き先が変わり、たどり着く場所も変わり、でもそこは、Destinetionだ。 目的地、ではないだろうけど。

この春は少し風が強い。
今向かっている場所に合わせて帆を操るより、風に任せた方がスピードも上がる。 そっちに行ってみよう。

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