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夏休み、息子たちとの自由研究の思い出

夕方、日が沈む頃にランニングに出かけた。夏の午後6時は昼の熱気がまだまだ残り、数分走っただけで背中を汗が流れる。桜の木陰はセミたちの大合唱が途切れることなく迎えてくれる。セミたちの声を聞きながら、そういえば、夏休みに子ども達とセミの脱け殻集めをしたことを思い出した。

子どもたちの夏休みの宿題には、毎年頭を悩ませた。特に工作とか読書感想文とか自由研究など、創作の宿題が難関だ。親があまり口を出してはいけないと子どもが何か思いつくのを待っている間に、もう数日で始業式、なんてこともよくあった。

長男が5年生ぐらいの時だろうか、夏休みに入ってすぐに、ラジオ体操で集まった近くの公園でセミの脱け殻を見つけた。桜の木の周りを見ると二つ、三つと次々脱け殻は見つかった。「毎日集めたら、何か夏休みの宿題にできるんじゃない?」と軽い気持ちで脱け殻集めが始まった。

脱け殻集めはラジオ体操の公園と家の庭だけと場所を決めて、毎日ジップロックに入れて日付を書いた。たいした考えもないままだったが、日を追うごとに脱け殻の数だけはたくさんになっていった。

続けている間に思わぬ発見があった。夏休みに入った頃には土がついたニイニイゼミの小さな脱け殻をいくつか見つけることができたが、夏休みの後半になると、見つからなくなって、代わりに細身のツクツクボウシの脱け殻が見つかるようになった。調べてみるとたしかにニイニイゼミは7月、ツクツクボウシは旧盆を過ぎた頃と書いてある。当たり前だけれど、調べた通りだったことに親子で感動してしまった。夏休みが終わる頃には、セミの脱け殻集めをまとめた自由研究が出来上がった。

私は自分自身が数学や物理が苦手だったけれど、子供たちには科学が好きになってもらいたいと思っていた。自然や身の回りで起きる何らかの事象について不思議に思ったり、謎を解明したいと思うことって、とても豊かなことだと思った。だから、それからも毎年自由研究には取り組んだ。

「川の汚れ調べ」では近隣の川の水をペットボトルに採取して来てコーヒーフィルターで汚れの程度を比べてみた。「よく飛ぶ紙飛行機を作りたい」と、いろいろな形の紙飛行機を作って飛距離を計ったりした。

自由研究をしたことで、子ども達に科学的な何かが育ったかというと、そんなことはなさそうだ。しかし、息子たちに付き合って暑い夏を自然の中で過ごした日々はなんとも愛しい記憶だ。



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