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2023年、注目のアジアブランド7選!Forbesが選んだアジア系デザイナーのプレタポルテ〜未来のファッション業界に物申す若手デザイナー達〜

今回はアジアルーツのReady-to-wear系ブランド7つに注目します。

経済誌Forbesの「30 Under 30 Asia(2023年版)」に選ばれたアジア系プレタポルテ専門のファッションデザイナーは7人。
その中の3人はインド系のデザイナー(!)で、エスニックな伝統技術ををモダンに昇華させたインド発のファッションブランドは近年の注目株です。

審査員の好みも多少はあるでしょうが、デザインだけでなく、「ビジネスモデル」の観点からも評価された彼らのスタイルにはファッションの未来のヒントが隠れているはず。

オートクチュール系デザイナー5人にフィーチャーした第一弾はこちら。


本記事のライター アシダニア徳満有香(ドイツ在住ファッションライター)

【インド】継承が危ぶまれるインドの伝統的職人技を付加価値にしたカジュアルウェアデザイナーHarsh Agarwalの『HARAGO』

『Harago』の創設者Harsh Agarwalは、実はニューヨークの国連本部でインターンシップをした経歴も持つ秀才。

アイテム自体は至ってシンプルで、シャツとパンツがメインだが、全てのアイテムが約1週間から10日間の時間をかけて、インドの伝統技術を持つ職人が刺繍を施すなどして作られている。

世界的セレブのハリー・スタイルズ等にも愛用され、注目を集めた。
世界的ファッション通販サイト『SSENSE』など世界中に取引先を持つ。

【インド】モダンアートの哲学を感じられるラグジュアリーストリートブランド、Dhruv Khuranaによる『Almost Gods』

2018年にDhruv Khuranaが設立したラグジュアリーなストリートウェアブランドは世界的セレブの注目を集めて大ブレイクした。

元々は、アメリカ、ボストンのタフツ大学で国際政治学と経済学を専攻していたが、美術館で多くの時間を過ごし、抽象芸術やコンセプチュアルアートの虜になっていることに気づいたことがファッションの道に進むきっかけになった。

アートともっと深く関わりたいという想いから、スニーカーの転売を学生時代にスタートすると、ファッションの魅力にハマり、大学卒業後にブランドを設立している。

【インド】緻密なリサーチによるクリエイションでインドの工芸技に敬意を示すKartik Kumraの『Karu Research』

デザイナーKumraが、ペンシルベニア大学で経済学を専攻していた学部2年生の時に設立したブランドで、インドの伝統工芸に基づいたデザインが人気のブランド。

特筆すべきなのは、ファッションデザイナーの超難関登竜門である、LVMHプライズのファイナリストにも選ばれたことだ。

毎シーズン、インドの伝統技術への深いリサーチを行い、テーマを決めて生み出された衣服の多くは、インドの職人による手仕事がなされ、「不完全の美」が際立つユニークな作品になっている。

【ベトナム】挑発的でロマンティックで究極にフェミニン。ボディポジティブの一歩先を行くDuy Tranによる『Fanci club』

最近トレンドの、フラワーコサージュとアイススケートの衣装のようなラッフル。このトレンドの火付け役となったのが『Fanci club』だ。これまで、なんとなく「フラワーコサージュ=おばさま感」の法則が成立していて、嫌煙されがちだったレトロで古めかしいモチーフをフレッシュな一大トレンドに仕立て上げたTranは、故クリスチャン・ディオールに大きく影響を受けているらしい。

『Fanci club』が支持される理由の1つが、圧倒的なボディポジティブ。「社会に存在するボディシェイミングやルッキズムを打ち崩し、ありのままのボディラインの美しさを讃える」という、パワフルな哲学が込められた、タブーとされがちな大胆に肌を露出させるデザインが強みだ。サイズもXXS〜XXLまで幅広く、さらに購入者の体型にピッタリ合わせて作るセミオーダーメイドも可能だ。

今までもセクシーなデザインはあったが、その多くは男性の目線を意識したものであり『Fanci club』が提供するセクシーさとは全くの別物だ。女性がありのままの体型に心地よさと美しさを感じさせるセクシーさを発明した点で、非常に革新的。Tranもまた、大学を退学して2018年にブランドをスタートさせた独学のファッションデザイナーだというのが驚きだ。

【香港】中国最大のファッションプライズを受賞しメガヒット!『Ponder.er』のKa Lam Po

世界屈指の名門ファッション大学、セントラルセントマーチンでファッションを学んだ後、Derek Chengと共にスタートしたブランド、『Ponder.er』。

現代のメンズウェアを再構築し、シアーニットや、身体に沿うデザインなど、レディースウェア特有の要素を加えた、ジェンダーフリュイドな作品が特徴。

中国最大のファッションコンテスト『The YU Prize』で、2022年、中国大手のアパレルブランド『Li-Ning』とのパートナーシップによるグランドアワードを受賞している。

【フィリピン】まだまだマイナーなアイランドカルチャーをメインストリームへ。『Toqa』のIsabel Sicat

アメリカのブラウン大学・ロードアイランドデザイン学校で2重学位を取得後、アレキサンダー・ワンなどのニューヨークのファッションハウスでインターンシップを経験したSicat。現在のファッション業界に、アイランドカルチャーが極端に少ないことに気づき、ブランド『Toqa』をAiala Rickardと共同で設立。

デッドストックの生地をメインで使用し、ゼロウェストの服作りを心がけるなど、サステナビリティに注力しながら、どこかトロピカルな島国ファッションスタイルを提案している。

【中国】重力に抵抗する服?!『Bad Binch Tong Tong』のTerrence Zhou

ニューヨークのパーソンズ美術大学でファッションを専攻する前は、数学とエンジニアリングを専攻していたZhou。

彫刻的な作品が人気を集め、数々のファッション雑誌の表紙を飾っている。

連載予告《全4回》

今回は、アジア拠点のデイリーウェアがメインの7人のデザイナーを取り上げました。
前回に続き、「独学ファッションデザイナーの増加」「インテリエリート層のファッション業界への転身」という、最近の傾向が現れていたのに加え、「ジェンダーレスの常識化」「ニューラグジュアリー(脱ラグジュアリーとも。グローバルスタンダードとなっている西洋文化ルーツの今までの“ラグジュアリー“に反する、唯一無二で真似ができない土地固有の文化などの希少性をラグジュアリーだと感じる新しい“ラグジュアリー“の概念)」という傾向も現れていましたね。

第3弾では、ヨーロッパ拠点のReady-to-wear専門のデザイナーを5人ご紹介します。
ぜひお楽しみに!!

【第1弾】オートクチュールからハイエンドファッションまで
〜芸術品としてのドレスや特別な日のためのフォーマルウェア〜

【第2弾】アジアのデイリーウェアデザイナー達 ※本記事
〜すぐに購入できるReady-to-wearがメインの中価格帯アジアブランド〜

【第3弾】ヨーロッパのデイリーウェアデザイナー達
〜すぐに購入できるReady-to-wearがメインの中価格帯ヨーロッパブランド/エミリー・イン・パリスの服も?!〜

【第4弾】スタイルを完成させるアクセサリーからランジェリーまで
〜ジュエリーブランドやアップサイクルのバッグにフォーカスしたブランド〜


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