第423回 順調に『日本刀』レビューは続きます

1、日本刀レビュー第3回

週刊『日本刀』第3号

前回のレビューはこちら

2、要注意「正宗」と「政宗」

巻頭の等身大【日本刀ファイル】は池田正宗。

正宗は相州(現在の神奈川県)での作刀を大成させた人物で

自らの作品が高く評価されるのはもちろん、多くの弟子を育て

各地の刀匠に多くの影響を与えた人物でもありました。

掲載の池田正宗は鳥取藩池田家に伝来されたことからその名で呼ばれ、

元々は伊達政宗が所有していたとも伝えられます。

池田家から二代将軍秀忠に献上され、その後は尾張徳川家に伝わっって

現在は徳川博物館蔵となっています。

政宗と正宗といえばこちらのエピソードが真っ先に思い浮かびますね

これはきっと別号で伊達政宗が取り上げられる時に、と温存しているのでしょうか。

今号の【刀剣人物伝】は宮本武蔵。

取り上げられるのは初期からの佩刀で、21歳の時に京都の吉岡一門との試合で使われたとされる金重(熊本県島田美術館所蔵)。

ちなみに金重は正宗の高弟。

あとは晩年に自ら製作していた鍔や目ぬきといった刀装具の話。

【日本刀匠伝】は虎徹。

江戸時代の刀匠で抜群の切れ味で評判となり、常陸額田藩の稲葉政休に召抱えられました。

戦の無い時代に実用重視の刀匠を積極的に雇い入れた正休は

当初からそのつもりだったのかは今となってはわかりませんが

虎徹が作刀した脇差をもって大老堀田正俊を刺殺するという事件を起こします。

皮肉にも事件がさらに虎徹の評判を高めてしまうという結果に。

そして幕末になって実戦の需要が高まると勝海舟や木戸孝允など著名な人物の多くが愛用したと伝えられます。中でも新選組の近藤勇の愛刀だったことはよく知られています。

その流れで【日本刀ストーリー】では新選組と刀というテーマで紹介されています。

先述の近藤が所持していた虎徹は現存しておりませんが、会津藩から拝領した刀が郷土の日野市井上源三郎資料館などに残されています。

一方、土方歳三は和泉守兼定を愛用していたとされています。こちらはまた別号で詳細が掲載されるのか情報は抑え気味ですが、生家跡の資料館に所蔵されているようです。

実はこれは11代兼定という会津藩お抱えの刀工「会津兼定」ですので、池田屋事件などで使われたのは室町時代の2代兼定、通称「之定」かもしれません。

そう、池田屋事件で活躍したことへの褒美として会津藩から隊士7名に下賜された刀のうち永倉新八が所持したものと伝えられる刀については少し詳しい解説があります。個人蔵なので実物を見ることができる機会は少ないでしょうから貴重な記事かもしれません。

【美とテクノロジー】のコーナーでは焼き入れの瞬間刀がどう変形しているかが詳しく解説されています。

まず焼き入れの前に土置といって刃先には薄く、棟側には厚く土を塗るそうです。それによって熱の伝わり方が異なり、切っ先の硬さと全体の粘り強さを両立させるような構造を狙うとのこと。

また画像で図示されているのは焼き入れをした刀が

水につけられた瞬間一瞬内反りを起こし、一旦まっすぐに戻ったあと

本来の日本刀の反りができるという一連の流れ。

職人の経験によって生み出される芸術品を科学的に説明するというコンセプトは作品を理解する上では大変有益な知識になりそうです。

3、刀をめぐる旅はまだ始まったばかり

今回も満足のいく内容でした。

やはり刀は戦国武将から新選組、さらには戦前の著名人までエピソードに事欠かないコンテンツですね。

ただやっぱり100号もたせるためにあえて抑制して記事を書いているんだろうな、

と思わせる部分もあり、ちょっともどかしい気持ちもありますが

次号への期待ということで好意的に解釈していきましょう。

次回のレビューもぜひお楽しみに!

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綱渡鳥@目指せ学芸員2.0

中世考古学が専門の行政内研究者。夢は晴耕雨読。歴史文化の価値が高まる社会の実現を目指す。仕事ポートフォリオ:自治体学芸員として【松島町歴史文化基本構想】考古学者として 【2018「中世」『宮城考古学』20】

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