第1154回 城のある街に憧れて

1、読書記録236

今回ご紹介するのは

『史跡仙台城跡整備基本計画』

今後仙台城をどのように整備していくか、を公表するもので、

市の公式サイトで見ることができます。

2、宮城の象徴

まずはなぜ仙台城を守っていくのか。

それはもちろん価値があるから。

本計画では「仙台城跡の本質的価値」として以下の5つが具体的に挙げられています。

1 良好に残る城郭全体の基本的形状と各遺構
 もちろん明治以降に様々な形で土地利用されて改変を受けていますが、市街化した平城よりは「良好に残っている」と言えそうです。

2 時代の移り変わりを示す城郭構造
 伊達政宗が築いた本丸は切り立った崖の上にあり山城的性格を有していますが、二代忠宗以下軍事よりも統治を重視するようになると二の丸が持つ平城的性格が現れてくるようになるようです。

3 本丸北壁石垣の変遷と城内の石垣にみる変化
  石材の加工方法や積み方、構築年代の差、視覚的な演出、修復の履歴など石垣を調べることでわかることは非常に多いのです。

4 政宗らしさをうかがわせる特色ある遺構と遺物
  特に個性的な藩祖伊達政宗だからこそ、なのか出土遺物にも珍品が見られ、ヨーロッパ産ガラス器や金箔瓦が例として挙げられています。また造酒屋敷といって、上方から呼び寄せた酒造りの職人を城内に住まわせたのは独特です。

5 杜の都仙台の象徴
  現代でも緑が多く、自然公園としての位置付けもできます。史跡の中に天然記念物を含む城郭は珍しいのではないでしょうか。

これらの価値を高めるためにできることとして

広域関連資産の周知や

周辺の歴史資産

回遊するためのモデルコースづくり

モデルコース

が挙げられています。

整備の方向性として「政宗ビュー」という表現が。

あまり聞き慣れない言葉ですが、

歴史的な背景を踏まえた本丸跡から市街地への眺望と、自然環境と調和した城郭らしさを持つ市街地からの景観

を指しているようです。

中間報告後の市民からの意見、パブリックコメントでも整備した後の姿が政宗の時期の仙台城のものだという誤解を招く可能性がある、との指摘がされていました。

わかりやすさを追求して正確さが損なわれるよくあるパターンです。

そして話題の大手門の復元計画。

最近文化庁は「復元」という表現には敏感で、

現状で国の基準を満たし、復元の対象となり得るのは大手門、大手門脇櫓、大手門北側土塀の一部、巽門とのこと。

ただ、大手門エリアではこれまで本格的な発掘調査を実施しておらず、大手門の創建時期や建て替えの有無、正確な位置などを解明する必要があるとのこと。

令和3年から基礎調査を開始し、発掘調査計画を作成する、ということですから気の長い話です。

さらに大手門の復元については建築費だけではなく、維持費や交通への影響などがパブコメでも指摘されていました。

復元できるものは非常に限られているし、どれも容易ではないのです。

今後の整備に当たっては地区の特性に応じてA~Fの6つの整備ゾーンを設けています。

そのうち「A水系整備ゾーン」に対してコメントが多く寄せられていました。

 仙台城の水源である「御清水」が未整備であることに対し、市が園路や案内サインの設置を計画するものの、水源の環境保持のため整備すべきではないとの意見がみられました。また水質調査等市民団体の活動にも触れるべき、などという意見も。

全ての人が満足するものなんてあり得ませんが、どちらも一理あるので難しいところ。

市営地下鉄の駅、青葉山公園センターに簡易的なガイダンス機能を含んだ施設を作る計画も。

NPO法人仙台城ガイドボランティア会の活動拠点にもするとのことですし、民間活動団体が交流できるホールが設置される予定ですので、賑わいが生まれそうですね。

3、後悔先に立たず

いかがだったでしょうか。

仙台市民・宮城県民のみならず多くの人々が関心を寄せる「仙台城が今後どうなっていくのか」が明示されたことは大きなことかと思います。

令和18年(2036)は伊達政宗没後400年にあたるということで、そこを目標としているようです。

個人的気になったのは「関連歴史資産」として我が街にある瑞巌寺も挙げられているのですが、内部の障壁画が「仙台藩お抱え絵師によって書かれた」と端的に書かれていますが、ちょっと不正確ですし、

国指定名勝「松島」という表現も正しくは国指定”特別”名勝です。

パブリックコメント募集期間にそこだけでも指摘すればよかったかとちょっと後悔。

何事も時期を逸してはいけませんね。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


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