第393回 博物館探訪 第3弾 東北歴史博物館 ①

1、クローン文化財とはなんぞや

宮城県多賀城市にある東北歴史博物館。

現在開催中の

東京藝術大学スーパークローン文化財展「最先端技術でよみがえるシルクロード-法隆寺・敦煌莫高窟・バーミヤン-」

を見学してきました。

最先端の技術で模写を超えた再現

ということがテーマのようです。

ちなみに写真家の作品以外は撮影可能でした。

2、シルクロードを一回り

まず最初は法隆寺金堂。

1949年(昭和24年)に 壁画を修復中に失火で焼損してしまったことはよく知られています。

これをデジタルスキャンして型をとった釈迦三尊像とともに再現します。

壁画はあらゆる写真データから復元したものの上に、質感と色彩を伝統的技法で再現したものだそうです。

三尊像は3Dプリントした原型を元に、富山県高岡市の伝統工芸である銅の鋳造技術で再現したとのこと。

さらにすごいのは今回の展示が「五感」を使って味わうというテーマが設定されていること。

この展示室では古い寺院の香りをあえて放出している装置があったようです。

次に高句麗古墳群。

中国東北部から北朝鮮にかけて分布する、この古墳は日本のキトラ古墳と似た壁画が見られます。

各地に残る模写や写真から、実際には入ることができない石室内を体感することができます。

続いて再現されていたのはキジル石窟の航海者窟。

当時は亀茲国、現在は中国の新疆ウイグル自治区クチャにある遺跡で、20世紀初頭にドイツの探検隊が剥ぎ取って持って行ってしまいました。

その結果、戦火で消失するという惨事に。

当時の記録から復元した姿は貴重なものであると言えます。

そして、個人的に最も心揺さぶられたのは

敦煌莫高窟。

五胡十六国時代から元代の1000年もの間、掘り続けられた600を超える洞窟の中には膨大な仏教美術が残されています。

大部分は劣化を防ぐために非公開となっているとのこと。

こちらも壁土にわざわざ現代の敦煌の土を使っているほどの徹底ぶりです。

あまりに造形が真に迫っていて時を忘れて眺めることができます。

ラストはバーミヤンの石窟。

並河万里という写真家の作品とともに紹介され、

復元された天井壁画の向こうに現地の風景が映し出されています。

最先端技術✖️伝統的修復の到達点がよくわかる内容でした。

3、文字では到底伝えきれない

いかがだったでしょうか。

シルクロードというテーマは日本人の旅情を掻き立てるものですが

技術の高さを体験してもらう、というのは正直お客を選ぶテーマかと思っていました。

実際訪れてみると最初に触れた「五感」というテーマでは香りだけでなく、映像資料から流れてくる読経も相まって面白い手法だとは思いました。

また、油彩画や水墨画のクローンについても紹介され、

なぜか浮世絵にも香りがつけられていました。

一見(だけでなく嗅ぐと聞くも)の価値ありと胸を張って言える内容でした。

東北歴史博物館では6月23日まで開催しているので、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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