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【読書メモ】『SHINJO夢をありがとう』(著:小島克典)

「細川君みたいなユーティリティープレーヤーは、給料の査定を、一つのポジションだけ守る選手より上げてくださいとお願いしたい」と球団に進言する考え

新庄監督は就任以来、選手に複数ポジションの習得を求めてきた。郡司は本職の捕手、一塁、左翼に加えて今季から三塁にも挑戦。野村も昨季は一、三塁、左翼でプレーした。「勝つために誰がどこのポジションに行くかということしか考えてない。ピッチャーも野手も」と言う。

出典:「日本ハム 新庄監督“ユーティリティープレーヤー査定”導入プラン」
(『デイリースポーツ」2024年3月12日)

阪神時代、新庄さん自身はあまり乗り気ではなかったようですが、当時の野村監督からの指示で、今でいう二刀流に挑戦されていた覚えがあります(結局はオープン戦だけだったのかな?)。だからというわけでもないのでしょうが、複数ポジションを想定してるのは面白そうだなぁ、、なんて感じながら思い出したのが『SHINJO夢をありがとう』との一冊。

21世紀最初の年、二人の日本人が海を渡り大リーグへの挑戦をはじめました。そのうちの一人、新庄剛志選手は今現在は日本ハムの監督としてご活躍されています。もう一人のイチロー選手も数年前に引退されて、今はシアトルマリナーズの会長付特別顧問との立場で楽しそうに野球普及に?つとめられているようで。

新庄さん、阪神時代にもイロイロとやんちゃな話題を振りまいていましたが、海を渡ってからは解き放たれたかのように生き生きと楽しそうにプレーしていたのが強く印象に残っています。2001年から3年間大リーグでプレーをした後、最終的には北海道に移転した日本ハムファイターズにて引退を迎えられて、今現在はその日ハムで監督をされてるのですから、巡りあわせとは面白いものです。

さて物語のスタートは2002年、大リーグ2年目のSFジャイアンツ時代から。そこからの5年間を、通訳・小島さんの視点で、素朴ながら真摯な筆致で織り込まれていきます。印象的であったのは、徹頭徹尾「人を楽しませる」プロフェッショナルであり続けた事でしょうか、、そしてこれは、今に至るまで変わらない、新庄さんの本質とも感じます。

いつでもどこにいても、人を楽しませることを優先し、それによって自分も楽しむ。その新庄さんの在り様は当時のアメリカでも話題になり、それは「SHINJOY!」というフレーズで表現されていたことからも伝わってきます。ちなみに「SHINJOY!」とのフレーズ、ニューヨークタイムスが見だしに使った造語で「SHINJO+ENJOY」からきているとのこと。

また「白い車は白く乗れ」と怒られたとのエピソードや、マイナー落ちしてからも同じ服を着ることはしなかったなどのエピソードは、普段から口にされていた「野球選手はスター、スターは憧れの存在たれ」という信念ともリンクするかと。

新庄さん、数値上の成績だけで見ると、同時代のイチローさんや松井秀喜さんに比べ、どうしても見劣りしてしまいますが、、それでも。

・日本人初の大リーグ4番スタメン
・日本人初の大リーグ満塁HR
・日本人初のワールドシリーズ出場&安打、バットが殿堂入り

といった感じで、なんとなくツボは全部押さえているような気がします。ご本人曰く「イチロー君は記録、ボクは記憶」とのことですが、言い得て妙だなぁ、、と。

ちなみにイチローさんの新庄さんについてのコメントはと言うと、「僕はヒットに出来るボールを、ヒットになる打ちかたで打っているだけ、ヒットに出来そうに無いボールを、毎回違うフォームで打っている新庄さんこそ本当の天才です。」と、こちらも上手いなぁ、、と感じました。

またメジャーでの満塁時の成績は「18打数10安打30打点」とのことで、典型的なクラッチヒッターだなぁ、、と。日ハム時代も観客の数に比例して打率が上がるなんて言われていたようですし、人を楽しませて自分の力としているってのは、真実だったんだなぁ、、と。

ちなみに新庄さんの守備力に対する評価は高く、その捕球法をアメリカのメディアは「SHINJO-HOP!」と表現したそうです。これは、捕球の際に軽やかにジャンプして優しく包み込むように捕る様子を見てとのこと。イチローさんの「The Throw」もですが、表現が多彩だなぁ、と感じました。これは「BASEBALL」が文化として根付いているからこそと思います、さすが本場の国。

プロフェッショナルとは、自分の信念(プリンシプル)を持って何かしらをつきつめていく事、と思います。その上で、どんな状況下であっても常に一定以上の結果を出すことも、求められるのではないでしょうか。シンプルですが、それだけに非常に困難とも思います。

「プロ」としての仕事に向き合っていくにはと真摯に考えさせられた一冊でもあり、こういった素顔は、今の監督業の中でも垣間見えるかなぁ、とも。

「記録より記憶に残る」なんていうと、ミスターシービーを思い出してしまいますが、、となると、イチローさんや松井さんはシンボリルドルフですかね、確かにそういう比喩も当てはまりそうで、まぁ、余談です。

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