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【読書メモ】『知の逆転』(著:ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソン / 編:吉成真由美)

敵が百万あろうとも、自らよって立つプリンシプルを曲げたりひよったりしない

出典:『知の逆転』

ここ最近、いわゆる知識階級(知識人)に属する方々(学者、研究者)の色合が分かれてきているなぁ、と思うことが増えてきました。政治信条の違いはあまり気にしませんが、「結論ありきで根拠を示さない」のを知識人の枠組みには入れられないよなぁ、等々、伊藤先生の「学士までなら材料集めて整理すればよいけど、修士以上は疑問を持って検証しないと」との言い回しを拝聴しながら思い出したのが『知の逆転』との一冊。

余談ですが、最近は「曲学阿世の徒」なんて言い回しはしなくなってるんですかね。少し前に論点ずらしの手法を駆使しながら「X(旧:Twitter)」上での傍論の一つに過ぎないコミュニティノートに、妙に粘着してるどこぞの教授センセとかもいたな、、アレはストローマン論法とも言われる手法の亜種になるのでしょうか、まぁ、プリンシプルを自ら捨て去って日和ってる典型だよなぁ、、閑話休題。

さて話を戻して『知の逆転』、初めて読んだのは2013年頃と思います。当時あちこちで話題になっていて手に取ったのですが、読み終えるのを残念に感じるくらいに一気読みしたのを覚えています。冒頭の一言にただ、シビれました。そしてこれを文字通りに実践しているのが次の6名の「知の巨人」


六人に共通するのは、「限りなく真実をもとめて」というような姿勢。

出典:『知の逆転』

【ジャレド・ダイアモンド氏(進化生物学、人類生態学など)】

真の問題は人口増加ではなく消費の増加なのです。

「人生の意味」というものを問うことに、私自身は全く何の意味も見出せません。

教育はそれぞれの国の事情にそって決まってくる

出典:『知の逆転』

【ノーム・チョムスキー氏(言語学者)】

垂れ流しの情報があってもそれは情報がないのと変わりません。何を探すべきか知っている必要がある。

自分から知りたいと思うように励ますのが教育

自分で発見する喜びというのは、指示に従った場合よりも、はるかにエキサイティングで価値の高いもの

出典:『知の逆転』

【オリバー・サックス氏(脳神経科医)】

音楽は、昔それを聴いていたときの感情や情景の記憶を呼び覚ます

没頭している「平和な時間」こそが科学や芸術の基盤となる

人間の脳は素晴らしい適応力を備えているので、五歳の子供は彼の祖父ができなかったことを、やすやすとやってのけます。ひるがえって、子供は祖父が持っていた文学的な高み、感情的な深みにはとうてい到達しえないでしょう。

出典:『知の逆転』

【マービン・ミンスキー氏(人工知能学)】

もっと現実的な問題解決型のロボットを作ろうとしないのか、全く理解に苦しみます。

新しいアイディアがあった場合、既存のデータベースでは対応できません

ネット上でも影響を受けるわけで、知的で優れた人たちから影響を受けることもある一方、危険なグループの仲間にはまってしまうことだってある
何にせよ世界や物事を二つに分けようとする試みは、大きな間違いです。

出典:『知の逆転』

【トム・レイトン氏(数学者)】

教育はオンライン化を避けられない

実際にその場所に行って直接体験することのメリットは、ずっと残ると思います。

たしかに本は消えつつあります。プラスとマイナスの両面があると思います。プラス面としては、最新情報をより早くより深く得られるということ。ただし、制御や編集がなされていないため、間違った情報も一緒くたにされているということがマイナス面としてあります。

出典:『知の逆転』

【ジェームズ・ワトソン氏(分子生物学者)】

従来博士号というのは教師になるために取り、取得者は「考える人」である

年長の者が、若い世代の成長を心にかけて、良いアドバイスをするというシステムがとても大事です。

自分のアイディアというものを他の人と議論して批判してもらうことが大切
本来、人はみなそれぞれ異なっているのに、同じだとみなさなければいけなくなっている。

公の場で言っていいことと、私的な場で言っていいことには、違いがあるということでしょう。残念なのは、私的な会話まで、スターリン統治下のソ連の如く、政治的に正しいことを言うよう圧力がかかるようになってきている

情報がありすぎるから誰かが編集する必要がある

シカゴ大学の教育から得た最も大事なことは、事実に基づいてものを考える能力です

出典:『知の逆転』

彼らに相対するは、吉成真由美氏(サイエンスライター、ハーバード修士)、「この人たちに会うまでは」との想いに突き動かされて、真摯に対談され、興味深い回答を名だたる「知の巨人」達から引き出しています。

六人に共通するのは、「限りなく真実をもとめて」というような姿勢

出典:『知の逆転』

この言葉の示すように、真実を求めて実践を繰り返し、社会も決して切り離すことなく「知の活動」を重ねています。そして、そこから紡ぎだされる「言葉」は一つ一つが輝いています。その中でも、個人的に一番印象に残ったのは、次のチョムスキー氏の言葉。

自分から知りたいと思うように励ますのが教育だ

出典:『知の逆転』

平等な結果だけをただ与えるのではない、学ぶ人が自分自身で結果に行きつくように支援する、それが「教育」、教え育むことなのだとあらためて、、教師は伴走者の一人でよく、主役はあくまで「学び問いかけていく人」なのだろうなぁ、と。

そしてまた、塩野さん曰くの「回答を与えるなんて露ほども考えていない」を思い出してみたりも。

久々にざっと粗読しましたが、やはり「生涯学習」は自分にとっての重要なファクターだなぁ、とあらためて。

あと、それぞれの「知の巨人」達の推薦図書もなかなかに興味深く、アイザック・アシモフやH・G・ウェルズ、ロバート・ハインライン、『シャーロック・ホームズ』、『テンペスト』、『種の起源』、『ペロポネソス戦争史』 etc… そしてまた、チョムスキーさんの自分で探す楽しみを奪ってはいけないのも、なるほどなぁ、と得心しながら。

さて、とりあえず本棚には並べて置く予定ですが、息子が手に取ることがあるかどうか、、なんて思いながら。


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